大阪府との契約や補助金、指定管理業務などに関わる企業の中には、「ハートフル条例」という言葉をきっかけに、障害者雇用について調べ始めたという人事担当者も少なくありません。
ハートフル条例は、大阪府が障害者雇用の促進を目的として制定した条例です。
しかし、
- 自社が対象企業なのか分からない
- 何を対応すればよいのか分からない
- 法定雇用率との違いが分からない
- 障害者雇用をどう進めればよいのか分からない
こんな風に悩む企業も多いのではないでしょうか。
ハートフル条例の対象企業となった場合、障害者雇用状況の報告や雇入れ計画の作成など、実務的な対応が必要になることがあります。
この記事では、ハートフル条例の概要から対象企業、未達時のリスク、法定雇用率制度との違い、障害者雇用の進め方まで、人事担当者向けに分かりやすく解説します。
ハートフル条例とは?
ハートフル条例とは、大阪府が制定した障害者雇用の促進と就労支援を目的とした条例です。
正式名称は「大阪府障害者等の雇用の促進等と就労の支援に関する条例」です。
大阪府では、障害のある人が能力や適性に応じて働き、自立した生活を送れる地域社会の実現を目指しており、その取り組みの一つとしてハートフル条例を定めています。
この条例では、特に大阪府と契約関係にある企業や補助金の交付を受ける企業などに対し、障害者雇用への積極的な取り組みを求めています。
>参考リンク:大阪府障害者等の雇用の促進等と就労の支援に関する条例/大阪府(おおさかふ)
ハートフル条例と障害者雇用率制度の違い
ハートフル条例を理解するうえで、あわせて知っておきたいのが「障害者雇用率制度」です。
障害者雇用率制度は、国の「障害者雇用促進法」に基づく制度で、一定規模以上の企業に対して障害者雇用を義務付けています。
一方、ハートフル条例は大阪府独自の制度であり、大阪府と契約関係にある企業や補助金の交付を受ける企業などに対し、障害者雇用状況の報告や雇入れ計画の提出を求めることで、障害者雇用の促進を図っています。

つまり、
- 障害者雇用率制度=国の制度
- ハートフル条例=大阪府の制度
という違いがあります。
ハートフル条例を順守しないとどうなる?
ハートフル条例を順守しないと、企業名の公表や大阪府との契約・補助事業に関する制限措置を受けるリスクがあります。企業活動に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
順守しなかった場合|企業活動へ影響する2つの可能性
対象企業が障害者雇用状況の報告や雇入れ計画の提出などの義務を怠った場合、行政指導や企業名の公表、契約・補助金等に関する制限措置の対象となる可能性があります。
行政指導
必要な報告や計画提出が行われていない場合、大阪府から指導や勧告を受ける場合があります。
企業名の公表
報告義務や計画提出義務に従わない場合、企業名などが公表される可能性があります。
企業名の公表は、
- 求職者からの企業イメージの低下
- 取引先からの信用低下
- コーポレートイメージへの影響
につながる可能性があります。
条例に基づく公表の対象となった場合、次のような措置が講じられる可能性があります。
- 一定期間、大阪府との契約の相手方になれない場合がある
- 一定期間、大阪府の補助事業の対象者になれない場合がある
- 一定期間、指定管理者になれない場合がある
これらの措置は、企業の事業活動や公共案件への参画機会に影響を及ぼす可能性があります。特に大阪府との取引や連携がある企業にとっては、無視できないリスクといえるでしょう。
自社はハートフル条例の対象か
人事担当者が最も気になるのは、「自社は対象なのか」という点ではないでしょうか。
まず押さえておきたいのは、「大阪府内の企業だから対象」というわけではないことです。
ハートフル条例は、大阪府と一定の関係がある事業主を対象とした制度です。
チェック項目
以下に当てはまる場合は、対象となる可能性があります。
① 大阪府と契約している企業
大阪府から業務委託を受けている企業や、物品・サービスを提供している企業が該当します。例えば、システム開発・保守、コンサルティング、施設管理、清掃、警備、物品納入などの契約を大阪府と締結している場合は対象となる可能性があります。
例:
- 大阪府から業務委託を受注している
- 大阪府へ物品を納入している
- 大阪府のシステム開発や保守を受託している
など。
② 大阪府の補助金・助成金を受けている企業
大阪府の補助金について、交付決定を受けた事業主が対象です。
設備投資や事業拡大、DX推進、人材育成などを目的として大阪府の補助金・助成金の交付決定を受けている場合は、条例の対象となる可能性があります。実際に補助金が交付されているかどうかだけでなく、交付決定の有無も確認しましょう。
例:
- 設備投資補助金
- DX推進補助金
- 事業拡大支援補助金
など、大阪府から交付決定を受けている場合。
③ 大阪府の公の施設の指定管理業務を行っている企業
大阪府が所有する施設について、指定管理者として指定を受けた事業主が対象です。
指定管理者とは、自治体(大阪府や市町村)が所有する公共施設の運営・管理を、民間企業やNPO法人などに任せる制度で指定された事業者のことです。
例:
- 府立施設
- 文化施設
- スポーツ施設
- 研修施設
などの運営管理を受託している企業。
④ 一定規模以上の従業員を雇用している企業
現在の基準では、常用労働者37.5人以上の民間企業が対象です。
ただし、令和8年度の一部報告では経過措置として、40人以上基準が適用されています。現在の制度上は法定雇用率2.7%に対応して37.5人以上が目安です。

参照元:大阪府障害者等の雇用の促進等と就労の支援に関する条例/大阪府(おおさかふ)ホームページ
人事担当者が最初に確認すべき2つのこと
① 法定雇用率を達成しているか
対象事業主に該当する場合は、現在の障害者雇用状況を確認する必要があります。
法定雇用率未達成の場合は、ハートフル条例に基づき雇入れ計画の提出や進捗報告が必要になる場合があります。
確認ポイント
- 常用労働者数
- 法定雇用障害者数
- 実際の障害者雇用人数
- 不足人数
- ハローワークへ提出した障害者雇用状況報告書の内容
例
- 常用労働者:100名
- 法定雇用率:2.7%
- 必要雇用人数:2.7名
- 実雇用人数:2名
この場合、法定雇用率未達成となるため、対応が必要になります。
>参考資料:お役立ちツール『障害者法定雇用カウントおよび納付金算出シート』

② 受け入れ体制が整っているか
障害者雇用では、採用人数を確保することだけでなく、長く安心して働ける環境を整備することが重要です。採用前の段階から、配属先や業務内容、サポート体制を具体的に検討しておきましょう。
配属部署
まずは、受入れが可能な部署を選定します。
部署を検討する際は、単に空きポジションがあるかどうかではなく、障害特性に応じた業務の切り出しやサポートが行える環境かを確認することが重要です。
業務の切り出しが可能か
障害者雇用を成功させるためには、事前の業務設計が欠かせません。「できること」を基準に業務を整理し、無理なく活躍できる環境を整えましょう。
また、
- 配属先の上司やメンバーの理解が得られているか
- 業務量や勤務環境が本人の特性に合っているか
- 安全面やコミュニケーション面で配慮が必要か
上記も事前に確認したほうがいいです。
特定の部署に限定せず、バックオフィスや事務部門、マーケティング部門なども含めて幅広く検討することが大切です。
業務内容
業務は「できないこと」ではなく、「できること」を基準に設計します。
業務例:
- データ入力
- 書類のチェック
- ファイリング
- Webサイト更新作業
- 画像加工・SNS運用補助
- 郵便物対応
- 備品管理
など、定型業務やマニュアル化しやすい業務を整理しておくとスムーズです。
また、
- 業務手順書の整備
- 作業時間の見積もり
- 業務量の調整方法
上記も事前に決めておくと定着率向上につながります。
受け入れ先の障害者雇用担当者
障害者雇用では、業務に関する質問や職場での悩みを気軽に相談できる担当者を決めておくことが重要です。担当者は、業務を教えるだけでなく、職場への定着を支援する役割も担います。
主な対応例
- 日常的な相談窓口になる
- 業務の進め方や困りごとの相談に対応する
- 上司や周囲の社員との連携をサポートする
- 定期的に声掛けや面談を実施する
担当者が決まっていないと、本人が悩みや不安を一人で抱え込みやすくなり、早期離職につながる可能性があります。そのため、採用前の段階から支援役となる担当者を明確にしておくことが大切です。
定期面談の実施(月1回など)
障害者雇用では、採用後のフォロー体制を整えることが重要です。定期的に面談を行い、業務や体調に関する不安がないかを確認しましょう。
主な対応例
- 業務量や体調の確認
- 勤務状況のフォロー
- 就労支援機関との連携
- 産業医や保健師との連携
- 合理的配慮に関する相談窓口の設置
特に入社後3~6か月は離職リスクが高いため、こまめなフォローが求められます。
ハートフル条例の対象企業は何をすればよい?
対象企業には以下の4つの順守が求められます。
障害者雇用状況の報告
対象企業は、自社の障害者雇用状況を大阪府へ報告する必要があります。障害者の雇用人数や法定雇用率の達成状況を確認し、現状を把握するための重要な手続きです。
雇入れ計画の作成・提出
法定雇用障害者数を下回る企業は、障害者雇入れ計画を作成・提出する必要があります。採用目標や採用時期、受け入れ体制などを整理し、計画的に障害者雇用を進めていきます。
進捗状況の報告
雇入れ計画を提出した後は、その計画がどの程度進んでいるかを報告します。採用活動や採用実績などを確認しながら、計画どおりに取り組みが進んでいるかを管理します。
達成状況の報告
計画期間終了後には、雇入れ計画の達成状況を報告します。目標を達成できたかどうかだけでなく、未達の場合はその理由や今後の対応について説明が求められることがあります。
人事担当者は、単に書類を提出するだけではなく、採用計画の立案から受け入れ体制の整備、定着支援までを見据えて対応することが重要です。
大阪における障害者雇用の現状
大阪府では、障害者雇用の促進に向けてさまざまな取り組みが実施されています。
障害者雇用は全体として増加傾向にある一方で、企業規模によって達成状況には差があります。
大阪労働局が公表した令和7年(2025年)6月1日時点の集計によると、大阪府内の民間企業で雇用されている障害者数は 64,514人 となり、前年から 2,476人(4.0%)増加 しました。これにより、障害者雇用者数は 22年連続で過去最高を更新 しています。
また、大阪府内企業の実雇用率は 2.45% と前年の2.44%から上昇し、全国平均の 2.41% を上回りました。
一方で、法定雇用率(2.5%)を達成した企業の割合は 41.4% にとどまり、全国平均の 46.0% を下回っています。特に中小企業では、人材確保や受け入れ体制の構築が課題となっており、企業規模によって達成状況に差が見られます。
企業規模別に見ると、従業員1,000人以上の企業では実雇用率が 2.66% と法定雇用率を上回る一方、40~100人未満の企業では 2.00% にとどまっており、中小企業における障害者雇用のさらなる推進が求められています。
2026年7月に民間企業の法定雇用率が 2.7% へ引き上げられました。多くの企業にとって障害者雇用の計画的な管理と適切な人員配置がこれまで以上に重要となります。
参照元: 厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」、大阪労働局「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」

特に中小企業では、
- 採用ノウハウ不足
- 人事担当者の兼任
- 定着支援の難しさ
などが課題となっており、法定雇用率の達成に苦戦している企業も少なくありません。
障害者雇用が進まない理由
多くの企業が以下の課題を抱えています。
採用方法が分からない
適切な採用チャネルや選考方法が分からず、採用活動が進まないケースがあります。
業務設計ができない
既存業務の切り出しや再設計が難しく、「任せる仕事がない」という状況に陥ることがあります。
現場の理解が得られない
受け入れ準備が不足すると、十分なフォローやサポートができません。
定着が難しい
業務や環境とのミスマッチにより、早期離職につながるケースもあります。

障害者雇用は何から始めればよい?基本ステップを解説
ハートフル条例への対応をきっかけに、初めて障害者雇用に取り組む企業も少なくありません。
しかし、障害者雇用は採用だけでなく、受け入れ体制や継続的な運用まで含めて考える必要があります。
障害者雇用の基本的な流れ
1. 雇用率の現状確認
まずは現在の障害者雇用人数や不足人数を把握します。
また、法定雇用率の達成状況だけでなく、将来的な従業員数の増減や組織拡大も踏まえて、中長期的な採用計画を検討することが重要です。
2. 業務の切り出し
障害者が担う業務を整理し、担当可能な仕事を設計します。
例えば、
- データ入力
- 書類整理
- 備品管理
- 経理補助
などが代表例です。
業務を切り出す際は、単純作業だけに限定せず、本人の経験やスキルを活かせる業務がないかも検討しましょう。ミスマッチを防ぎ、長期的な活躍につながります。
3. 採用計画の設計
- 雇用形態
- 勤務時間
- 配属部署
- 採用手法
などを設計します。
加えて、求める人物像や必要な配慮事項を整理し、求人票や面接で適切に伝えられるよう準備することも重要です。
4. 定着支援体制の構築
採用後も、
- 定期面談
- 業務調整
- 現場との連携
- 支援機関との連携
を行いながら定着を支援します。
特に入社直後は不安や課題が生じやすいため、早めのフォローと継続的なコミュニケーションを心がけることが、安定した就業につながります。
障害者が休職や早期離職する主な4つの共通点
障害者雇用では、採用活動そのものよりも、採用後の定着や職場運営が成功のポイントとなります。実際に障害者が休職や早期離職する企業には、いくつかの共通した課題があります。
1.採用人数だけを目標にしている
法定雇用率の達成だけを目的に採用を進めると、本人の適性や業務内容とのマッチングが十分に行われない場合があります。
その結果、
- 想定していた業務を任せられない
- 本人の能力を十分に活かせない
- 早期離職につながる
といった問題が発生しやすくなります。
2.現場の準備ができていない
人事部門だけで採用を進め、受け入れ部署への説明や調整が不十分なケースも少なくありません。
現場の理解が不足していると、
- 業務の切り出しができない
- サポート方法がわからない
- 特定の担当者に負担が集中する
といった状況になりやすくなります。
3.定着支援が不十分
採用後のフォロー体制が整っていない企業では、業務上や人間関係の課題が見過ごされやすくなります。
特に入社直後は、
- 業務への不安
- コミュニケーションの悩み
- 体調管理の問題
などが発生しやすいため、定期面談や相談体制の整備が欠かせません。
4.継続的な運用を想定していない
障害者雇用を一度の採用施策として考えてしまうと、担当者異動や組織変更の際にノウハウが失われることがあります。
その結果、
- 支援体制が継続できない
- 業務の引き継ぎができない
- 離職後に採用を繰り返す
といった悪循環に陥るケースもあります。
障害者雇用の課題解決に役立つ支援サービスとは
ここまで、障害者が休職や早期離職に至る主な要因として、採用時のミスマッチや受け入れ体制の不足、定着支援の不十分さなどを紹介しました。
しかし、障害者雇用における課題はそれだけではありません。採用計画の立案、業務の切り出し、現場理解の促進、法定雇用率への対応など、企業によって抱える課題はさまざまです。こうした課題を自社だけで解決するのが難しい場合、障害者雇用支援サービスを活用することも有効な選択肢の一つです。
障害者雇用支援サービスとは
障害者雇用支援サービスとは、企業の障害者雇用を採用前から定着まで支援するサービスです。
主な支援内容として、
- 業務切り出し支援
- 採用計画の立案
- 採用活動支援
- 定着支援
- 現場向け研修
などがあります。
こんな企業におすすめ
- 初めて障害者雇用に取り組む企業
- 採用・定着に課題がある企業
- 法定雇用率が未達の企業
- 社内リソースが不足している企業
障害者雇用支援サービスを活用するメリット
採用精度の向上
企業と求職者のマッチング精度を高めやすくなります。
業務の切り出し
業務の棚卸しや切り出しを専門的な視点で支援してもらえます。
定着率の改善
採用後のフォロー体制を構築しやすくなります。
人事担当者/組織全体へのノウハウ提供・蓄積
障害者雇用に関する制度理解や採用活動、定着支援のノウハウを得ることで、社内に知見を蓄積しやすくなります。
まとめ
ハートフル条例は、大阪府と関係のある企業に対して障害者雇用の促進を求める制度です。
人事担当者としては、
- 自社が対象企業か確認する
- 法定雇用率の達成状況を把握する
- 必要な報告や計画提出を行う
- 障害者雇用の体制整備を進める
ことが重要です。
障害者雇用は単なる法令対応ではなく、企業の持続的な成長や組織づくりにもつながる取り組みです。
- 自社が対象企業か分からない
- 必要な採用人数を把握したい
- 障害者雇用の進め方に悩んでいる
このような場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
また、参考として大阪の企業様の障害者雇用の取り組み事例もあわせてご覧ください。
【パナソニックEWエンジニアリング導入事例】
【スターフライヤー導入事例】
2009年設立、370社、2,500名以上の障害者雇用支援実績のあるスタートラインまでお気軽にお問い合わせください。
障害者雇用の業務切り出しだけでなく、業務切り出しから採用、定着までワンストップでの支援や、様々な課題に対して、ソリューションの提供が可能です。
