逆転の発想で実現! 東京計器がコロナ禍で挑んだ業務切り出しと体制づくり

2021年3月に法定雇用率の引き上げもあり、障がい者雇用に取り組みたいけど、コロナウイルスの影響でなかなか進められないとお悩みではないでしょうか?

そんな企業様のお悩みを解決するべく、株式会社スタートライン(以下、スタートライン)は、障がい者雇用に課題を感じている企業様を対象にウェビナーEXPO2020~障がい者雇用withコロナ~を開催いたしました。

ウェビナーEXPO2020~障がい者雇用withコロナ~とは?

ウェビナーEXPO2020は、全6日間、各日1テーマの全6テーマで構成されています。

障がい者雇用に関する主要テーマ毎に、スタートラインの提供する「障がい者向けサテライトオフィスサービス(以下、サテライトオフィス)」を利用している企業の障がい者雇用担当者をお迎えし、各社の取り組み事例を紹介しています。

障がい者向けサテライトオフィスサービスとは?

第4回目は、東京都大田区に本社を置く精密機器メーカーの東京計器株式会社 人事総務部 人事部 人事課長 後藤和久氏ご登壇のもと『逆転の発想で実現!東京計器がコロナ禍で挑んだ業務切り出しと体制づくり』テーマでお話がありました。

東京計器株式会社 人事総務部 人事部 人事課長 後藤和久氏

障がい者雇用に取り組む企業の人事担当者の中には

・コロナウイルスの影響で障がい者雇用が進まない
・在宅勤務になり障がい者雇用の業務切り出しがうまくできない
・障がい者への指導方法がわからない

などの悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

障がい者雇用を取り組むうえで、ぜひ参考にしてください。

目次


コロナウイルスの影響で予定していた障がい者の業務切り出しが・・・

■障がい者雇用のご状況を教えて下さい。

弊社では2020年6月に人事部で3名の入社が決定しました。
弊社では精神障がい者の雇用は初の試みだったので、精神障がい者雇用のノウハウ習得のためスタートラインさんのサテライトオフィスを利用することに決定しました。

また、当時は人事業務や各部門から業務を切り出す予定だったのですが、そこにコロナ禍が重なってしまいました。

■もともとはどのような業務を切り出す予定だったのでしょうか?

当社では目標管理の制度を導入しています。各自が部門の方針に従い、それを部の方針・課の方針に落とし込むことで自分の目標を決定しています。

最終的に個人が設定した目標を人事部に提出するという方法で目標管理をしているのですが、上長の捺印の関係で提出物が紙であることから、人事部ではデータをうまく活用できていないという実態がありました。

そこでパソコンスキルをお持ちの障がい者を雇用し、紙ベースのデータ入力の業務をしてもらおうと考えていました。過去数年分の1,000名以上の紙ベースのデータがあったため、膨大な量でした。そのデータ量を考えると、障がい者の仕事がすぐになくなることはないだろうと思いました。

しかし、1つの業務のみでは単調な作業となりモチベーションを維持するのが難しいのでは考え、まずは紙ベースのデータ入力業務を軸に各部門から新たな業務を見つけていく方針になりました

■当時の状況はいかがでしたか?

障がい者に担当してもらう業務切り出しに取り組もうと思っていた最中に弊社にもコロナウイルスの影響がありました。

しかし、ロクイチ(6/1)報告は待ってくれないため、進めていくしかないと考えたんです。

また、当社でも在宅勤務が推奨されましたが、三密回避のために会議はできないと判断され、新たな業務を出してもらうための管理部門会議の開催が中止になりました。

当社の場合は、部門ごとに管理をしている部署(管理部門)があり、その管理部門に情報共有をおこなうことで、情報が社内の隅々にまで伝播される仕組みになっています。

そのため、障がい者雇用の業務切り出しについても、管理部門に相談して今後の業務を捻出しようと進めていたところでした。

ところが在宅勤務になり、通常できる業務もできなくなるという事態が発生しました。

また、各部門共に慣れない在宅勤務の影響もあり、業務が遅れがちになってしまいました。

予定通り進まなくなった業務切り出しを課長に直接打診

■予定していた業務切り出しができなくなったことにはどのように対応されたのですか?

紙ベースの業務の多くが、在宅勤務時に自宅への持ち出しができない問題がありました。

その結果、重要だけど緊急度が高くない紙ベースの業務が後回しにされてしまうという弊害が起きてしまったのです。

そんなとき、経理で証憑の確認など紙ベースの業務が滞っているという話があり、証憑の確認であれば障がいがあるメンバーにもお願いできるのではないかと考え、課長に直接打診しました。

その結果、経理の業務を中心に紙ベースの業務を障がいがあるメンバーにお願いすることになりました。

当時サテライトオフィスで働いていた3名の障がいがあるメンバーは、入社して間もない頃だったので、ネット環境や社内環境もよくわからないという状況でした。そのため、まずは紙ベースの業務を担当してもらった形です。

■障がいがあるメンバーへの業務指導はどのようにされたのでしょうか?

まずは私自身が業務を習得しました。私自身が経理から業務を教えてもらい、すべて理解した上で、障がいがあるメンバー一人ひとりに業務を教えて、個人の理解度をチェックしながら、取り組んでいきましたね。

当初は主に目標管理シートの入力業務のみだったので、新しい業務を用意できたことにより、障がいがあるメンバーのやりがいやモチベーションにもつながったと考えています。

さらにその作業自体をメンバーの中で、マニュアルを作成して取り組んでもらったので、非常に効率よく業務を進められました。

簡単なマニュアルは渡してはいたのですが、メンバーでミスがないように写真を貼ったりして主体的に取り組んでもらえましたね。

■切り出しに成功した経理業務が、その後は月例業務になったと聞いていますが、どのような流れだったのでしょうか?

業務を一通り終え、経理からフィードバックをもらうときに、素晴らしいと評価してもらいました。というのも成果物を提出するときに、イレギュラーな内容をまとめたイレギュラーシートを成果物とは別で提出したのも良かったのだと思います。

これにより経理から信頼と高い評価をもらうことができました。

その後、定期的に業務を依頼したいという話になり、今では月例業務になっています。

在宅勤務の拡大により自宅に持ち出せない書類の処理が滞ったコロナ禍だからこそ生まれる業務があると学びましたね。

逆転の発想!障がいがあるメンバーの得意から職域拡大

■チーム構築のためにどのような工夫をされたのですか?

スタートラインのスタッフ:チーム構築のためにまず自己紹介をおこなってもらいました。入社してから障がいがあるメンバー同士のコミュニケーションを見ていると、気を使っているものの、どう気を使えばいいのかわかっていない状況があったのです。

自己紹介では自身の障がいを含めた紹介をおこなってもらい、他にもこういうことをされると困る、自分にはこれができないなど、自分のことを理解してもらえるように行ってもらいました。
結果、障がいがあるメンバー同士で気の使い方が上手になりました。

また、障がいがあるメンバーは3名いますが、業務自体は同じなので自分たちがしている作業の「不明点」「進め方」を他のメンバーにも共有してもらうようにしました。これはメンバーによって、業務が滞ってしまうポイントが同じ、もしくは違う場合があったからです。

共有を行なうことで、障がいがあるメンバー同士のコミュニケーションも増えるので、個人ではなく組織として業務を行なうという強みも生まれました。

また、障がいがあるメンバーの特性や個性を理解することで、それぞれの適性を把握することもできました。それぞれの適性に応じて、得意な業務を任せて効率を上げて取り組んでもらうことに成功しましたね。

■どのように職域拡大していったのですか?

社内報を利用しました。

障がいがあるメンバーの得意分野が見え始めたため、それをまとめて見える化できるものがあればさらに各部署からの理解度も深まるのではと考えました。

そこで、社内報をメンバーに作成してもらいました。

■社内報をどのように活用されたのでしょうか?

もともと業務の切り出しが課題に挙がっていたところで、まずは障がいがあるメンバーがどんなことができるのかということをアピールしようと考えました。

ちょうどそのタイミングで管理部門の会議が復活したので、その中で社内報とメンバーが作成したマニュアルを提出し、業務切り出しへのアピールをおこないましたね。

実際にどんなことができて、どれくらいの成果を出せているのかをアピールすることが重要だと思ったからです。

その結果「そういったことができるなら今後も業務をお願いしたい」という返事をもらい、2部門から業務の打診がありました

具体的には検査機器の依頼書のPDF化と舶用機器のサービスレポートのデータ入力です。もともと派遣社員を雇用して依頼しようと考えていたので、新たな人件費をかけることなく取り組むことができました

■現在の業務状況はいかがでしょうか?

どんどん新しい仕事が入ってきている状況で、障がいのあるメンバーも「自分たちが会社に貢献できている」「会社に必要とされている」というやりがいを感じてもらえていると思います

遅刻・早退・欠勤もなく勤務しているので、本当にありがたく感じていますし、助かっています。

まとめ:コロナ禍だからこそ生まれる業務がある

精神障がい者の雇用は初の試みでした。
はじめはもちろん不安もありましたし、そのような中でコロナ禍が重なってしまったので、業務を切り出せるか不明確な状況にもなりました。

しかし、スタートラインのスタッフ、障がいのあるメンバー同士の協力もあり、コロナ禍だからこそ業務の切り出しができたのではないかと考えています

今後も不安定な社会情勢かもしれませんが、障がい者雇用に限らず、働き方というのは臨機応変に変化していく必要があるのではないでしょうか。


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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。