2019年4月設立。最新の「特例子会社」立上げ成功事例を限定公開! ~大手医療系企業 H.U.グループホールディングス~

2019年4月に特例子会社を立ち上げたばかり、 H.U.グループホールディングス の事例

前回は特例子会社について解説をさせていただきました。

 外部リンクで開く 《2019年版》5分でわかる特例子会社の基礎

実際、特例子会社の設立を検討されていらっしゃる企業も多数ありますが、会社の設立は出来るが、障がい者を受け入れるために

・採用ルートの選定
・人材を見極める方法
・採用後のサポート方法


…等、悩みは尽きないことかと思います。

特例子会社を立ち上げるにあたり、見学を受け入れてくれる企業はありますが、
今、まさに特例子会社の立上げフェーズの話を聞ける機会は、まずありません。

大手医療系企業の H.U.グループホールディングス株式会社(以下、 H.U.グループホールディングス )では、株式会社スタートライン(以下、スタートライン)が運営する『障がい者向けサテライトオフィス』を利用して特例子会社設立を行いました。

『本社雇用』『在宅雇用』など障がい者雇用の選択肢が様々にある中、
H.U.グループホールディングスが特例子会社の設立を選んだ理由とは? また今後の障がい者雇用の計画や、特例子会社の展望とは?
そんな部分をお話いただいたセミナーが開催されました。
今回はそのポイントを、まとめてお届けします。

目次

1:特例子会社設立につながった障がい者向けサテライトオフィス選定の背景

H.U.グループホールディングスは、臨床検査薬事業を行う株式会社エスアールエルや、ヘルスケア事業を行う日本ステリ株式会社(以下、日本ステリ)をはじめとする持株会社です。
2018年、グループの障がい者雇用状況を確認したところ、各子会社の障がい者雇用人数に不足があることがわかりました。その当時、子会社9社で、併せて約40名の不足でした。
法令順守、社会的責任の観点から、障がい者雇用の促進や雇用率達成を目指していく中、どのような方法が良いかの検討をグループで進めていきました。

そこでグループ内の日本ステリが2013年からスタートラインの運営する『障がい者向けサテライトオフィス』の利用をしていることが注目されました。

 外部リンクで開く 障がい者向けサテライトオフィスとは?

導入検討時、日本ステリは『障がい者向けサテライトオフィス』の利用以外にも【本社での雇用】【農園型サービス】を検討していました。

日本ステリは手術業務支援や滅菌などを行う、医療サービス業です。
そのため、職場は医療現場になります。当時は、医療現場で障がい者に活躍してもらうノウハウ不足が懸念となり、検討を重ねましたが、医療現場での雇用は断念しました。

本社でのコーポレート管理業務を担っていただくことも検討しました。
しかし、障がい者と一緒に働いた経験がほとんどないため、仕事のアサインの仕方や、業務量の確保に苦労する部分があり、本社での雇用はなかなか進みませんでした。

農園型サービスは、「障がい者には、本社の利益により貢献する業務を担っていただきたい」という会社の意向と異なると判断し、検討から外しました。

まとめると、

・本社での雇用は管理面から難しい
・本社の利益により貢献する仲間として働いていただきたい

日本ステリでは上記2点の理由から『障がい者向けサテライトオフィス』の利用を決定しました。
この利用が特例子会社設立のきっかけとなりました。

2:障がい者向けサテライトオフィスを利用した特例子会社の立ち上げ

日本ステリが利用している『障がい者向けサテライトオフィス』では、障がい者4名と、健常者の管理者1名の計5名が働いています。

2013年から約5年利用してきた中で、他者と自身の仕事量の違いにより、衝突するなど、マネジメントの難しさに直面することもありました。
社会経験や性別の違いなども理由の一つですが、 主な理由は、働く障がい者が、身体障がい者から精神障がい者に変わっていったことです。

サテライトオフィスに常駐している管理者は、業務量の振り分けなどは行えますが、メンタルサポートに関するプロフェッショナルではありません。
サテライトオフィスには、スタートラインのブースがあり、そこにサポートスタッフが常駐しています。いわゆる保健室のような形で設置してあるので、何か問題が発生した時に、対応することが出来ます。

サポートの例として、挨拶する際に、従業員の身だしなみチェックを行ったり、週に1回の面談を実施しています。従業員の方がネガティブ思考になった時にはその行動をどのようにとらえ、変化を促すかというサポートを行っています。
もちろん、プライベートな悩みもあります。そういったときは支援機関との連携を図っていき、解決を目指していきます。

サテライトオフィスでは、メンタルサポートだけでなく、そこで行う業務の切り出しも行います。
日本ステリでは各部署にヒアリングを行っていき、業務の切り出しや選別を行っていきました。

・やりたいと思っているが、通常業務を行いながらでは難しい業務
(例:経理部で管理している約10年分の紙面書類のデータ化等)
・社員が業務時間外(残業)で行っている業務
(例:新卒説明会のアンケート集計、内定者のアンケート集計、社員証作成等)
・アルバイトやパート、派遣社員が行っている事務仕事

(例:住民税決定通知書の発送準備、中途入社社員の書類データ化や作成等)

業務を細分化していき、任せる仕事を徐々に増やしていくことは、健常者も障がい者も同じです。仕事に慣れた段階で次の仕事を任せていく、ということをより丁寧にサテライトオフィスでは行っていました。
これは特例子会社の業務を切り出していく時も、同じように行ったことです。

上記のような、サテライトオフィスの利用経験から、特例子会社を設立するにあたっても、 サポート面や業務切り出しなどは本社で行っていくことが難しいと判断し、まずは体制をしっかりと構築していくことが適切ではないかと考えました。
そこで、日本ステリの利用していた相模原のサテライトオフィスを、みらかHDの事務業務委託を行う特例子会社として、活用することとしました。

3:特例子会社で活躍する障がい者人材の採用方法~長期就労人材の見極めとは?~

障がい者雇用数の不適切計上問題もあり、障がい者採用がより難しくなりつつあります。

 外部リンクで開く 合格率9%!初の障がい者限定国家公務員試験~結果から見る障がい者雇用のこれから~

採用方法としては、ハローワークや人材紹介会社の利用、支援学校からの紹介等あります。
どの採用ルートであっても【就業準備が出来ているのか】【自己受容が出来ているのか】は重要です。

そうはいっても面接で「就業準備は出来ていますか?」と尋ねることは難しいですし、どのようなことを行っていれば就業準備が整っているのかと判断してよいのでしょうか。

就労移行支援機関からの採用ですと、支援機関に通う中でビジネスにおいてのパソコン操作の訓練はもちろんですが、支援機関へ決められた時間に、決められた回数を通うことで生活リズムを整える訓練も同時に行っています。
スタートラインではそういった支援機関と連携をしながら、採用活動をすすめています。

今回、 H.U.グループホールディングスの特例子会社を立ち上げるにあたり、支援機関からの採用の他に、スタートラインでは神奈川県より『障がい者職業訓練事業』(障害者委託訓練「トライ!」)を委託していたため、その訓練を受けていただいて企業就労の準備が出来た方に向け、 H.U.グループホールディングスの求人の紹介を行いました。

 外部リンクで開く 障害者委託訓練「トライ!」(神奈川県ホームページ 参照)

障がい者を雇用する際には、事前のアセスメントが重要です。
就業準備が出来ている状態とは、業務のスキルチェックや、セルフケアの方法が確立されているかなどが挙げられます。
こういった部分はペーパーテストや、健常者採用と同じ面接ではなかなか判断の難しい部分があります。

訓練を受けていただいた方以外での人材紹介では、採用時にそのようなことに注意してきました。
この事前アセスメントの項目や、スタートラインと面接の同席を行っていくことにより、今後の採用での知見も得られます。

長く活躍していただくためには、【採用時からのしっかりとしたアセスメントを行って見極めていく】ことと【入社/入職後の継続したサポート体制】をセットとして考えていくことが、活用する人材の採用のポイントです。

4: H.U.グループホールディングスが目指す特例子会社の目標~社会的貢献と責任を担う企業としての展望~

2021年にはあきる野市へ特例子会社分室の設置も決まっています。分室ではビル清掃や検査官の準備など、子会社から業務を切り出して運営をしていく予定です。
しかし現在の特例子会社は、直接利益を生まない、コストセンターの位置づけになっています。
これを転換し、最終的には外部からの仕事を受託し、直接利益を生む会社にすることが目標です。

これら、特例子会社(=障がい者雇用を促進し、安定させるために、事業主が特別に配慮した会社)のことを社内に積極的に発信し、 H.U.グループホールディングスはコンプライアンスやCSRにしっかりと取り組んでいる企業なのだと、社員が誇りを持ちモチベーションとしてもらいたいと考えています。

現状では、スタートラインの支援を受けて、障がい者雇用に対して伴走している形ではありますが、あきる野市の分室ではスタートラインからの支援が不要な運営を目指しています。

将来的には相模原の特例子会社でのサポートノウハウを蓄積し、グループ全体でしっかりと障がい者雇用へ取り組んでいきたいと考えています。

まとめ

障がい者が低賃金で雇用されている。そういった社会問題も深刻にあります。
精神障がい者の中には、長時間労働や精神的重圧により、精神疾患を患ってしまった方もいらっしゃいます。そういった元々のポテンシャルのある方が活躍できないのは、会社としてだけではなく、社会としてしっかり取り組んでいくべき課題なのではないでしょうか。
企業としての責任をしっかりと果たしていき、よりよい社会を作っていく一助となればと、お話してくださいました。

本日は『障がい者向けサテライトオフィス』を活用した、特例子会社の立ち上げ成功事例をご紹介しました。

いきなり理想の姿をめざすのではなく、スモールステップで進んでいくことが障がい者も健常者も笑顔で活躍出来る“障がい者雇用”実現につながるのではないでしょうか。


この記事を書いた人

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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。