障がい者雇用は多くの企業が悩む課題の1つです。
障がい者雇用の法定雇用率を達成するために、各企業がさまざまな対策をしています。しかし、業種などによっては、障がい者を採用したくても、就業場所がないことや、お任せする業務に限りがある企業が多いのも現実です。
そういった企業の悩みを解決するサービスが、株式会社スタートライン(以下、スタートライン)が提供する「障がい者向けサテライトオフィスサービス(以下、サテライトオフィス)」です。
今回は、実際にスタートラインのサテライトオフィスを利用しており、美容室・エステ・婚礼・衣裳の4部門を軸に、美容・婚礼事業を展開している遠藤波津子グループ本社 執行役員 本社統括、平野智之氏にオンラインインタビューをしました。
障がい者雇用に取り組む企業の人事担当者様の中には
- 障がい者との接し方がわからない
- 障がい者に担ってもらう業務がない
- 障がい者雇用に取り組みたいけど就業場所がない
というお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
この記事では、「障がい者雇用の課題やサテライトオフィスを導入するきっかけ」、「導入してから職域開拓の進め方がどう変化したか」という事例を交えて紹介します。
企業の人事担当者の皆様は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 障がい者が就業できる場所が限られていた
- サテライトオフィスの導入が、社内の職域開拓の支えになった
- 今後はサテライトオフィスのみならず、現場でのサポート業務体制も整えていきたい
- 新型コロナウイルスの影響による働き方の変化
- まとめ:障がい者雇用を積極的に進め、障がい者にも活躍してほしい
障がい者が就業できる場所が限られていた
■サテライトオフィス導入前の障がい者雇用は順調でしたか?
当社はサービス業である美容室を主な業務としていますので、障がい者が実際に就業する場所がかなり限られていました。
そのため障がい者雇用の実績はほとんどありませんでした。
当時、障がい者雇用として就業していた従業員は2〜3名いました。
その方達は、実は障害者手帳を持っていたという方や、働き始めてから障害者手帳を取得した方なので、法定雇用率のために新たに障がい者を採用した経験はなかったです。
そのため法定雇用率は達成できておらず、障がい者雇用の課題は多くあったように思います。
■障がい者雇用に積極的に取り組むようになった理由や背景はありますか?
以前から法定雇用率に達していないことで、労基署の方から指導を受けたり、納付金を納付していました。
しかし、平成30年の障害者雇用促進法の改正(法定雇用率の算定基礎の対象に、新たに精神障害者を追加 【施行期日 平成30年4月1日】)が影響し、企業の社会的責任を果たす意味でも、法定雇用率を確実に達成しなければならないと思いました。
それからは、積極的に障がい者雇用に取り組むようになりました。
そのタイミングで、スタートラインさんから営業がありました。
スタートラインさんから、こまめに連絡をいただき、サテライトオフィスをはじめいろいろなお話をしていただきました。
サテライトオフィスの導入が、社内の職域開拓の支えになった
■当時は本社での雇用なども選択肢のひとつとしてあったと思いますが、なぜサテライトオフィスという選択をされたのでしょうか?
障がい者雇用に関してのノウハウがなかったので、実際に本社で雇用しても、どんな業務をしてもらったらいいかわからないという状態でした。
スタートラインさんのサテライトオフィスでは、採用から、採用後の就業サポートまでしてくれるということを知り、そのスキームに惹かれたことが、サテライトオフィスを導入しようと思った最大の決め手ですね。
■サテライトオフィスを導入する際の課題として、職域開拓がありますが、当時は障がい者に担っていただく業務はありましたか?
当時そのような業務はないと思い込んでいました。
サテライトオフィスを導入するにあたって、スタートラインさんの方から弊社に来ていただいて、職域開拓の方法などをご指導いただきました。
障がい者雇用に関してノウハウがなかったので、大変心強かったです。
そのサポートを受けながら各部署に何か業務がないか聞いたりして職域開拓を進めました。
サテライトオフィスで働く障がい者にお願いした主な業務は、レンタル衣裳の予約伝票を入力してもらう業務と各店舗の1日の営業活動を伝票に入力してもらう業務の一部です。他には勤怠管理システムのチェックなども担ってもらっています。
最初はサテライトオフィスで働く障がい者に業務をお願いしても、しっかりやってもらえるかどうか不安でした。
たとえば、伝票の整理やデータの入力などをお任せするにしても、情報の取り扱いには細心の注意を払わないといけないですしね。
あとは、そんなに多くお願いする仕事を想定していなかったので、サテライトオフィスを導入しても業務量が足りるのか不安もありました。
また、サテライトオフィスの導入と同じタイミングで、養護学校から1名障がい者の紹介を受けました。縁あって、その方を本社で雇用したのですが、サテライトオフィスで働く障がい者の業務切り出しに加えて、その方への業務切り出しのサポートもしてもらいました。
その方には本社の総務や経理のサポートをする業務をしてもらっています。加えて、当社には、衣装のメンテナンス業務があり、その業務の一部を障がい者に担っていただけないかも考えました。
今では、その業務も担ってもらっています。
■職域開拓を進める中、色々な課題があったと思いますが、その課題を解決するために取り組んだことはありますか?
職業開拓の面では、スタートラインさんのサポートのおかげもあり、これが課題だと強く感じたことはありません。
挙げるとするならば、サテライトオフィス導入に際して雇用した障がい者の1人が、開始早々に不調を起こしてしまい、退職してしまったことが最初の困難でした。
当社としても、その障がい者の不調の改善に向けて面談を行うなどしていましたが、最終的に自主退職という形になってしまいました。サテライトオフィス導入直後のことだったので、早々に壁に当たったなという思いでした。
その後、新たに採用活動をして1名雇用しましたが、その方も体調を崩されて長期間休職されていました。
現在その方は、行政の支援員やスタートラインのスタッフさんのサポートがあったおかげで復職されています。
■サテライトオフィスを運営する上での課題はありますか?
もう少し仕事のボリュームがあればいいかなと思いますが、現在新型コロナウイルスの感染拡大の影響で業務量が減っています。
また、サテライトオフィスの人員も増やそうと思っていましたが、それも新型コロナウイルスの影響もあって実現できていません。
もう一つ課題としては、サテライトオフィスに関して社内の認知度はまだまだ低いので改善していくべきだと思っています。
今後はサテライトオフィスのみならず、現場でのサポート業務体制も整えていきたい
■サテライトオフィスの利用で気づいたことや変化があると思いますが、例えばどのようなものがありますか?
サテライトオフィスを導入していなければ、現在の人数の障がい者を雇用することはできなかったと思います。スタートラインさんのサポートがあったからこそだと思っています。
サポートをしてもらったことで、私たちも障がい者雇用に関するノウハウを多少なりとも知ることはできました。
とはいえ自分たちだけで実行できるかと言われれば、まだまだ難しいと思います。
現在、スタートラインさんのスタッフに定期面談や、さまざまなケアをしてもらっていますが、これはスキルも必要ですし、時間や手間もかかることなので、なかなかスタートラインさんのサポートなしで実現するのは困難と思います。
■サテライトオフィスの導入で得られたノウハウをもとに、現在本社で働いている障がい者へのサポートに役立てたエピソードはありますか?
現在、総務・人事で働いている方に対しては、障がい者の接し方などの蓄積されたノウハウをもとに、面談などをしてケアをしています。
■今後の障がい者雇用について、どのようにしていきたいですか?
我々は各所で美容院の店舗を展開しており、そのバックヤードの部分で活躍していただく場面が増えたらいいなと思っています。
現場に近いところで、伝票の入力や、現場のサポート業務をやっていただける体制づくりができるのが理想です。
これは、サテライトオフィスのスタッフ・本社のスタッフ問わず、実現したいですね。
新型コロナウイルスの影響による働き方の変化
■今回、新型コロナウイルスの影響によって世間の働き方も大きく変わっていますが、貴社では新型コロナウイルスの影響による障がい者雇用への考え方の変化はありますか?
将来のために考えておいたほうがいいと思うのが、リモートワークについてですね。
サテライトオフィスのスタッフに対して、リモートワーク下でのメンタルケアや面談をどのように実施していくかを考えていく必要がありますね。
現在、本社で働く人に対しては、本人の都合によって時差出勤をしてもらっています。
また、部門によりますが、週に1〜2日ほど、在宅でできるような業務については在宅でしてもらっています。今すぐにというわけにはいかないですが、リモートワークについては考えておくべきだなと思います。
まとめ:障がい者雇用を積極的に進め、障がい者にも活躍してほしい
ノウハウがない中でスタートラインさんに手伝ってもらいながら進めた障がい者雇用は、障がい者とのコミュニケーション方法や業務量の確保など、まだまだ課題はありますが今後も積極的に進めたいと考えています。
コロナウイルスの影響もあり、思うように進められていませんが、今後も障がい者にも活躍してほしいです。
弊社は美容室がメイン事業なので、障がい者が働ける場所が限られてしまうという課題がありました。
しかし、スタートラインさんのサテライトオフィスを利用したことにより、その課題を解決し、なんとか障がい者雇用を始めることができました。
今後もスタートラインさんと協力しあって障がい者雇用の課題をクリアし、より多くの人材が輝ける企業になれるよう、邁進していきたいと考えています。