「障がい者雇用」は、多くの企業が抱える課題の一つです。
法定雇用率を達成するために、障がい者を積極的に雇用しようと取り組んでいる企業は多くあります。一方、以下のような悩みがあり、なかなか雇用に至っていない企業もあります。
主に挙げられるの理由は次の3つです。
- 障がい者に対してどう対応すべきかわからない
- 業務の切り出しが難しい
- 人材の見極めが難しい
これらの悩みを解決するのは、株式会社スタートライン(以下、スタートライン)が展開する「屋内農園型障がい者雇用支援サービスIBUKI(以下、IBUKI)」です。
そこで今回はIBUKIを導入されているスポーツウェアを中心にスポーツ用品の製造・販売を行っている株式会社ゴールドウイン 人事部、鈴木香菜様から、IBUKIを実際に導入してみての感想や、導入前に比べて障がい者雇用に対する取り組みはどのように変わったかを伺ってきました。障がい者雇用を担当する人事の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
障がい者のケアまで手が回らなかった
― IBUKI導入前の障がい者雇用はどのような状況でしたか?
ハローワークからの紹介で、数名の障がい者に働いていただいていました。就労場所としては、本社や直営店での勤務です。
本社では資料作成などの事務作業を行い、店舗ではバックヤードでの商品整理や伝票整理をお願いしていました。
しかし、働いていくうちに、
- なぜ私だけが店頭に出られないのか
- なぜ同じ作業ばかりしなければならないのか
このような不安から、今までできていた仕事が、ある日突然できなくなるなどの問題がありました。
管理者も、障がい者への対応は素人なので、メンタルケアをするのが難しかったです。また、業務の拡大によって、社内の仕事が増えました。管理者は、本来の仕事で手一杯になってしまって、障がい者への支援にまで手が回らないという状況でした。
炎天下にさらされることなく安全!
―IBUKIを導入するきっかけは何だったのでしょうか?
上層部から人事部にスタートラインさんの情報が下りてきたというのがきっかけですね。事業が拡大して会社全体の雇用人数が増えていくにつれ、障がい者の雇用人数も増やさなければならない状況だったのです。
そのため、人事部として「将来を見据えて障がい者雇用に取り組もう」と考えていました。IBUKIのような障がい者雇用支援サービスを導入するにあたって「社内で何とかできないものか」という意見もありました。
しかし、このままでは、管理者の苦労が増える他、仕事の切り出しにも限界があるということで、導入を決めました。
-数ある障がい者雇用支援サービスの中から、なぜIBUKIを選んでいただいたのでしょうか?
農園型で障がい者雇用支援をしているところは多くあり、お話をいただいていました。しかし、炎天下での作業がつづく中、障がい者が元気に働き続けることができるのかイメージがわきませんでした。また以下のような疑問もありました。
- 一つの農園に複数の会社で採用されている人が集まって作業するということは、管理者の指揮命令など法的に問題ないのか?
- 弊社から従業員を異動すべきなのか?
そのため、なかなか導入に踏み切れませんでした。そのタイミングでスタートラインさんを知りました。ホームページを見てIBUKIを検討したところ、以下のとおり疑問点が解決されました。
- 法的に問題ないことがわかった。また、各ブースにわかれているため、安心して管理者が指揮命令をしているイメージができた
- 管理者(地域にお住まいのシニアの方など)を新規で採用(パート・アルバイト)し、常駐していただくため、異動は不要
さらに、屋内型で障がい者が働いている環境がイメージできたため、問い合わせました。
本人の障がい特性を把握することが大切
-IBUKI導入後はどのように障がい者雇用していますか?
採用では、就労経験のない方、もしくは就労経験が浅い方を中心に採用しました。全員が業務を1から学ぶことで、チームとして同じレベルで成長していけるという利点があります。
求人や面接のセッティングなどの採用活動は、スタートラインさんがサポートしてくれたので、非常に助かっています。おかげさまで現在では、知的障がい・精神障がいのある方を中心に7名(うち重度の方3名)の障がい者を雇用しています。
障がい者にルールを理解してもらい、管理者の負担を減らす取り組みもおこなっています。たとえば、「マニュアルを守りましょう」「時間を守りましょう」などの『楽しく働くためのルール』を設定し、常に見えるところに掲げました。
障がい者のみなさんとともに円滑な仕事をするためには、私たちが、障がい者の家族関係や生活の背景、障がい特性などを把握することが重要です。そのため、障がい者の家族とは連携をとり、必要であれば支援員の方にも依頼して、障がい者のバックアップをしています。
また、かねてより課題であった、モチベーションを保つため、農園で採れたハーブなどが活用されていることを情報共有する重要性も感じています。
- IBUKI導入後の障がい者雇用に関して、何かトラブルはありましたか?
障がい者本人の性格や趣味趣向がトラブルを招くこともあります。自分の性格や趣味から予期せぬ行動を起こしてしまい、遅刻したことがあったのです。そのため「遅刻をしないように行動をある程度制限しよう」と考えました。
しかし、いきなり制限しようとしても中々うまくいかないので、ある条件を設定して、その条件が達成できなければ制限するというように伝えました。
たとえば、ある時「お昼休憩で外食がしたい」と言われたケースです。「時間までに戻ってこなかったらどうしよう」「周辺は交通量も多い幹線道路があり事故に遭ったらどうしよう」というリスクが考えられたため、外食を容認したくありませんでした。
そこで、いきなり禁止するのではなく「時間までに戻って来られなかったら禁止にする」という条件で最初は外食を容認しました。本人の性格を考慮すると、いずれ遅刻してしまうだろうという思いがあったので、結果的に行動を制限することには成功しましたね。
障がい者が働きやすい環境づくりが必要!
-今後の障がい者雇用についての展望を教えてください
民間企業の法定雇用率は、現在2.2%ですが、2023年には2.5%になると言われています。直営店の数を増やせば、もちろんその分だけ人を増やさなければいけません。大型店舗1店舗増やせば、大体15人は雇用人数が増えます。
もちろん全体の雇用数が増えれば、障がい者の雇用数も増やさないと、法定雇用率を割ってしまう可能性があります。現在のペースで業務の拡大をしていくとするなら、5年かけて、障がい者雇用数を20名増やさなければならないのではないかという計算になりました。
ただし、それを達成するには、IBUKIファームの区画を増やすことや、仕事を切り出していくことに、注力する必要があります。仕事の切り出しは、スタートラインさんのコンサルティングサービスを利用することも考えています。
障がい者の中には、ざわついた空間では精神を安定させられないという方もいます。そのため、障がい者には、静かで落ち着いた環境で就労していただきたいです。現在では、障がい者にとって働きやすい環境を整えていくために、サテライトオフィスを利用することも考えています。