「障害者社員のモチベーションが上がらず、業務がうまく進まない…」
障害者雇用において企業のご担当者からよくいただく相談です。
人の“意識”を変えることは難しい…でも、人の“行動”を変えるマネジメント方法があります。 この記事では、行動分析学をベースにした人の“行動”を変えるマネジメント方法の事例をご紹介いたします。
【行動分析学とは】
行動分析学は、心理学者スキナー(1904-1990)が提唱した学問です。
従来の心理学では、行動を起こす理由を“その人自身”に求めていますが、行動分析学では、人の行動(心の動きも含む)は“本人と周囲の環境との相互作用”によって生じると考えました。
例えばわかりやすく簡単に言うと、
◆お手伝いをする ➡ 「ありがとう!」と言われる
これからもお手伝いは増えそうですね。
一方で、
◆お手伝いをする ➡ 「ちゃんとできてないじゃない!」と言われる
この場合、お手伝いをすることは減りそうですね。
①ある行動をした直後に
②(褒められるなど)良いことがあると
③その行動が増える
このパターンを「強化」と言います。
①ある行動をした直後に
②(叱られるなど)悪いことがあると
③その行動が減る
このパターンを「弱化」と言います。
【行動分析学をベースにした事例】
≪とある企業の人事部にて≫
障害者を4名雇用し、データ入力作業を行っています。
障害者チームを取りまとめている管理者はいますが、他の業務も兼任しており、常にこのチームを見ていることはできません。
ある時、4名のうち1名(Aさん)が他の3人に比べて顕著に処理件数が少ないことが問題になっていました。同僚の情報によると、Aさんは作業中に何度も手が止まり、インターネットを閲覧したり、時には居眠りをしているということがわかりました。
管理者がAさんに注意をしたところ、Aさんはひどく落ち込み、自分はこの会社にいる意味がないと周囲に漏らしていたそうです。その後もAさんの処理件数は低迷したまま…
このような状況の場合、どのように対応したらよいでしょうか?
≪Aさんについての状況確認≫
Aさんについて改めて関係者に詳細確認しました。
◆背景
・特別支援学校を卒業後、初めての就労
・自己肯定感が低く、自分を責める傾向がある
・眠気が発生するような服薬はない
◆チーム内
・チームメンバーとのコミュニケーションはほとんどない
・業務中、周囲の人はAさんに関わっていない
◆業務報告
・その日の業務結果は、業務終了時に管理者へメール報告
・管理者からのフィードバックは週1回程度
≪行動分析学による分析≫
これらの情報を軸に、行動分析学をベースに分析しました。
◆就業時間中に居眠りをする ➡ 周りの人が何も言わない
◆インターネットを閲覧する ➡ 周りの人が何も言わない
Aさんの不適切な行動に対して、周りが何も干渉しないので、
結果的にAさんの行動は「強化」され、習慣化していると考えました。
≪改善案の提案≫
そこで、不適切な行動を減らし、適切な行動を増やすための施策として、以下の提案を管理者に行いました。
- 処理件数を1時間ごとに報告してもらう
- 報告の際、処理件数が増えている場合は、承認するような言葉がけを行う
- 処理件数が減っている場合は、その理由を聞き、改善策の言葉がけを行う
≪結果≫
上記①~③の対応を1週間続けたところ、Aさんの処理件数は従来の1.5倍になりました。
次週には、報告の間隔を2時間おきにして、徐々に報告する頻度を減らし、半年後の現在では、1日1回の報告で、処理件数はなんと対策前の2倍となっています。
◆就業時間中に居眠りをする ➡ 周りの人が何も言わない
というパターンを
◆管理者に報告する ➡ 褒められる
というパターンに変える事により、Aさんの適切な行動が「強化」され、不適切な行動(居眠りやインターネットの閲覧)が減りました。
仕事を通じて自信を持ち始めたAさんは、表情も明るくなり、
他のチームの人とも積極的にコミュニケーションを取るようになったそうです。
【まとめ】
仕事のやる気がうまく出ない、うまく進まない、ということは誰にでもあると思います。
そんな時、周囲の関わり方次第で「人」「チーム」「企業」の可能性は大きく変わると思います。
可能性を閉ざさず広げるために、属人的なその場限りの対応ではなく、正しい理論と技術、対応方法が必要だと考えます。
その先に、多様な人材が活躍できる組織が生まれ「人と企業の可能性」を「可能」に変えられる。
スタートラインはそう信じて、日々、障害者と企業を支援しています。
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