各種の保険給付に加えて、疾病予防や健康の保持増進など、各部門の事業を通じてパナソニックグループ従業員(被保険者)とその家族(被扶養者)、そして地域社会に貢献しているパナソニック健康保険組合。障害者が健康で安心して長く働ける新しいフィールドの創出へ向けて、屋内農園型障害者雇用支援サービス IBUKI(以下、IBUKI)活用事例を伺いました。(取材日:2023月4月)
▼インタビューを受けてくださった方
パナソニック健康保険組合 健保本部 人事総務部 人事課 課長 青景 俊明氏
パナソニック健康保険組合 健保本部 人事総務部 人事課 人事係 甲田 敦子氏
従業員数 | 業種 |
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約1,300名(2023年4月現在) | 公法人 |
IBUKI導入前の悩み |
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・職員の大半が医療職(専門職)であり、障害者に担ってもらう業務の創出が課題 ・障害特性を理解して適切な業務・フォロー体制を整備することに難しさを感じていた ・雇用している障害者の高齢化も進展する中で、新たな雇用スキームの検討が必要 |
IBUKI導入後の効果 |
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・障害者が健康で安心して長く働ける可能性のある新しいフィールドを創出できた ・専門的なサポートを受ける中で障害者雇用のノウハウが習得できている ・収穫物活用(ハーブティー)によるモチベーション・エンゲージメント向上に繋げたい |
障害者が働くフィールドを創出したIBUKI
―――IBUKI導入前の障害者雇用の課題を教えてください。
障害のある社員の方々は一人ひとり障害特性も異なるため、各職場での相互理解やフォロー体制についてのサポートも個々の状況に合わせて行う必要があり、難しさを感じていました。勤続の長い方も大勢おられますが、時には定着がうまくいかないケースもありました。
―――各部署へのフォロー体制がうまくいかなかったんですね。具体的にはどのような事象が起こっていたのでしょうか?
面接などを通して事前に配慮すべきポイントを確認していても、実際の業務になると、どのように接するべきかわからず戸惑ってしまう場面があるなど、コミュニケーション・フォローの難しさを感じることもありました。そうした中でストレスや不安につながり、休職や退職される方もおられました。
―――障害のある社員にはどのような業務を担ってもらっていたのでしょうか?
当健康保険組合は、パナソニックグループの従業員・ご家族・OBへの健康づくり、疾病予防などのほか、地域住民に対する病院、介護老人保健施設等の運営を幅広く行っています。
そのため、従業員の約8割が医療職、約2割が事務職となっており、障害のある社員の方も医師や看護師、看護補助者、事務職など幅広い職種で雇用していますが、近年は事務職の割合が少しずつ増えています。
引き続き医療職の方も採用したいと考えており、ハローワークなどで求人を出していましたが、国家資格所持が必須ということもあって思うような母集団形成が出来ていない状況でした。
そのような中、雇用している障害のある社員の中で定年を迎える方も増加することから、これまでの各現場での業務の創出だけではなく、並行して障害者雇用の新たな方法を見出さなければならない状況でした。
―――IBUKI選定理由は何だったのでしょうか?
きっかけは、パナソニックグループの他の事業場も利用していたことで、農園事業のお話をお伺いする機会があったことです。実際に農園を見学させてもらった際に、業務内容がわかりやすく、ノウハウも含めたサポート体制がしっかり整っていることに魅力を感じました。
―――IBUKIの印象はどうでしたか?
企業の業界・事業特性に関わらず利用できることと、成果物を活用できる点が良いと思いました。その成果物を製作する役割を障害のある社員が担っており、雇用創出やモチベーションにつながっており、素晴らしい取り組みだと感じました。
屋内で清潔感もあって就労環境も整備されていることから、障害のある社員が安心して長く働けるフィールドとして良いのではないか思いました。唯一のネックは、農園の場所が少し(約1時間程度)離れている部分でしょうか。
成果物がモチベーションや組織全体のエンゲージメント向上へ
―――IBUKI導入後のご状況はどうですか?
障害のある社員をマネジメントする管理者が重要だと考えていましたが、うまく採用が進まず不在の期間もありました。その間は障害のある社員の方に苦労をかけてしまうこともありましたが、スタートラインのスタッフからのフォローをいただくなどして対応し、最終的にはとても良い方が採用できました。
運営に関しては、日々、様々なことがありますが、皆さんやりがいを持って働かれています。
私も月に1回は必ず、必要に応じて複数回、面談や困りごと解消のため訪問していますが、急なトラブルなどには、スタートラインのスタッフが管理者と連携して手厚くサポートしてくれるので非常に心強いです。
―――IBUKI導入後の成果物について教えてください。
成果物はハーブティーです。個包装にして、各部署に配布したり、来客時にお客様に出したりしています。
―――今後どのような成果物の活用を考えていますか?
(医療機関ということもあり)もう少しコロナウィルスの状況が落ち着けば、様々なブレンドの味のハーブティーを社員食堂に置いて、自由に手に取ってもらえる仕組みを考えています。メンバーの紹介文や写真など添えられたら良いと思っています。
また、ハーブティーのブレンド人気投票や、希望する効能や香りなど、社内の声が反映できるようにアンケートを実施し、障害のある社員のモチベーションにつなげていきたいと考えています。
最終的には、障害者雇用の啓発活動を通じて、組織全体のエンゲージメント向上にもつなげていきたいです。
人の役に立ちたい想いで健康福祉や地域社会にも貢献
―――今後の展望を教えてください。
働いている障害のある社員の定年後再雇用や配置転換の仕組みなど、さらに充実した社内制度を構築できれば良いと考えています。
配置転換とは、例えば農園で勤務している障害のある社員の方の普段の業務状況から、事務業務に適性がないかを見極めて担当業務を変更したり、といった形です。
ここ数年で、「人」に業務のやり方や働き方などを合わせる「人」主軸の採用も実施しています。これまでは業務を限定して求人を行う形をとっていましたが、例えば「●●業務全般」と記載して募集を行い、面談の中でやりたいこと・難しいこと、得意なこと・不得意なことなどを確認しながら、「ここまで任せることができるのではないか・任せてはどうか」という視点で最終的な業務を決定していく形式です。
当健康保険組合ならではの障害者雇用が実現できるように、各部署に協力を依頼するだけではなくサポートを適切に行いつつ、各支援・関係機関から様々な連携・情報収集をしながら取り組んでいきたいと考えています。
―――最後に読者にメッセージがあればお願いします。
「健康を高め生命に奉仕する」ことを使命にしている組織であるため、障害や多様性に関する理解があり、人と社会に貢献したいという想いが強い職員が多いのが、当組織の特徴であり強みだと考えています。
今後もそうした組織の強みを引き出して伸ばしながら、使命実現のために取り組んでいきたいと思います。