【三菱地所プロパティマネジメント導入事例】障害がある社員一人ひとりに向き合う職業能力の開発と向上の軌跡

(写真左より水野氏、篠原氏、佐瀬氏、塚本氏、富士氏)
全国主要都市のオフィスビル、商業施設の運営管理に携わり、多様なニーズに対応し、ビルの価値の最大化を実現している三菱地所プロパティマネジメント株式会社
スタートラインの障害者雇用支援サービスサポート付きサテライトオフィスINCLU(以下、INCLU)や研修サービスを活用し実現した「障害者雇用における職業能力の開発と向上の軌跡」をインタビューしました。(取材日:2023月2月)

▼インタビューを受けてくださった方
三菱地所プロパティマネジメント株式会社 総務部 総務ユニット長 塚本 豊氏
三菱地所プロパティマネジメント株式会社 総務部 参事 富士 賢氏
三菱地所プロパティマネジメント株式会社 総務部 主務 佐瀬 啓恵氏
三菱地所プロパティマネジメント株式会社 人事企画部 人事企画ユニット長 水野 英樹氏
三菱地所プロパティマネジメント株式会社 人事企画部 主査 篠原 祐子氏

従業員数業種
1,451名(2023年4月1日)不動産(管理)

みんなが幸せに働くためには、お互いを理解することが重要

―――新型コロナウイルス発生以後、大きく社会や働き方も変化しましたが、御社の障害者雇用の状況はいかがでしょうか?

塚本氏

数年前から働き方改革の一環で、事務業務を総務部に集約し、効率化させる動きや、2022年4月の本社リニューアルによる事務業務再編などがあり、障害者雇用の社員が担当する業務、活躍の場が拡大しました。

―――新型コロナウイルス発生直後は在宅勤務も導入されていましたが、今のご状況はいかがでしょうか?

塚本氏

基本的には出社業務がメインですが、それぞれ得手不得手があるので、担当する業務に合わせて働き方は相談しながら決めています。

―――活躍の場が拡大し、働き方も柔軟に対応されているのは理想のカタチですね。

富士氏

活躍の場を拡大していくために、社内における業務を統括する業務企画部と連携しながら、能力発揮できる業務の切り出しを積極的に検討しています。

―――採用の面に関してはいかがでしょうか?

塚本氏

業務の幅が増えても、働く上で大切なことは変わらないと思っているので、採用も順調に進めることができました。

―――働く上で大切なのは、どのようなことでしょうか?

塚本氏

障害者雇用においては「安定して働けること」「周りに協力する姿勢、協調性があること」そして「スキルも含めた業務適性」です。

それらのポイントをご本人の経験や特性から確認するようにしています。

富士氏

応募いただく方の多くは障害者の就労のための支援機関を利用し、ご自身の「できること」「できないこと」を整理されている方が多いため、その点を正直に話せるかどうかも大切なポイントだと考えています。

―――ご自身のことを正直に伝えられるかどうかは、大切な点ですね。

塚本氏

INCLUも活用しながら障害者雇用の実績も増えてきたので、当社の業務や社風に合うかどうかを見極めるノウハウは構築できてきました。

また、複数の面接官で判断することも重要な要素の一つかもしれません。

不採用にすることもありますが、それは当社とは合わなかっただけで、きっと他にご活躍できる場所があると思います。お互い理解し、双方に合った場所で働くこと、みんなが幸せに働くためにはそれが重要だと考えています。

社員一人ひとりと向き合った結果チャレンジしたジョブローテーション

―――障害者雇用でジョブローテーションにチャレンジされていると聞きました。

富士氏

業務拡大が進む中で、障害者雇用で働く社員の将来について考えました。

そしてまずは、改めて社員を知ることが大切だと思い、ヒアリングを実施しました。

―――将来も含めた一人ひとりの働き方に、改めて向き合われたんですね。

富士氏

そうですね。そのヒアリングを通じて、他の業務にも興味があることやもっとスキルを身につけたいという社員も多く、会社として応えたいと考えました。

「この業務やってみたい」と自発的に発信してくれることは、会社として非常に嬉しいことですね。

―――障害者雇用における「職業能力の開発と向上」に関するステキな取り組みですね。

富士氏

仮に新しい業務が「難しい」となった場合は、元の業務に戻ってもらおうと思って、ジョブローテーションを実施することにしました。

―――具体的にはどのように進めていったのでしょうか?

富士氏

各々の業務の引継ぎ自体をご本人たちに任せてみました。

ローテーションする半年前にこの話を対象の社員に告知し、半年間かけて相手の状況を考えながら、引継ぎを完了するように指示しました。

―――なぜ、ご本人同士で引継ぎを実施することにしたのでしょうか?

富士氏

業務の詳細は、ご本人同士の方が理解しやすいのではないかと考えたこと。そして、お互いに自分の伝えたいことを相手に伝える良い機会にもなると考えたからです。

―――引継ぎのご状況はいかがでしょうか?

富士氏

ご本人同士で引継ぎ内容や日程も決めて、必要であればご自身でマニュアルも準備するなど、前向きに動いていただきました。

私も定期的に進捗具合を確認するようにしました。

―――実際に、ジョブローテーションを実施してみたご状況はいかがでしょうか?

富士氏

例えば、午前は新しい業務、午後はこれまでやっていた業務など、場所や業務に柔軟性を持たせて業務に対応してもらっています。

初めての業務では、イレギュラーな対応などに戸惑うこともありますが、都度、管理者やスタートラインの支援を受けながら対応しています。

―――ジョブローテーションを実施されてどのような点が良かったのでしょうか?

佐瀬氏

相手に伝わるようにコミュニケーションの工夫が生まれたこと。チーム全体の絆ができて、以前に増して和やかな雰囲気になったこと。また、お互いにミスをフォローするなど、助け合う気持ちと行動が出来ていること。そして、そんな環境から生まれる働く上での安心感など、たくさんの良い影響が出始めています。

―――それは素晴らしい効果が出ていますね。

佐瀬氏

まだ実施して半年なのでうまくいっていない場面もありますが、スタートラインの専門的な定着に関する支援も受けながら、日々、みんなで試行錯誤している状況です。

インタビューの様子
インタビューの様子

一歩一歩共に歩み、人間力が育ち、幸せにつながっていく障害者雇用へ

―――今後の障害者雇用については、どのようにお考えでしょうか?

篠原氏

法定雇用率の引き上げなどを考えると、雇用率を達成するという社会的責任を果たしていくために、全社的な協力体制が必要なので、その体制構築を推進していきたいと思っています。

体制構築のためには障害者雇用に関する基礎的なリテラシーを全社的に向上させる必要があると考え、スタートラインの障害者雇用の研修を実施しました。

水野氏

一方で、法定雇用率達成にばかり目線が行き過ぎて、働く社員に合った業務が用意できていないことや特性に合わない業務をお願いすることは避けなければならないことだと思います。

そのため、働く社員の特性と業務や環境がマッチしていること、そんな場所を会社として提供し、能力発揮してもらうことが重要だと考えています。

そして、障害の有無で区別せずに、ご本人の能力や適性に合わせた雇用の仕方が出来るように取り組んでいきたいと思っています。

―――障害者雇用の知識やノウハウは重要ですね。

富士氏

気づかないだけで自分の周りにも障害者はいるかもしれないですし、一緒に働く可能性もある。そのため、全社員に「障害者と働いていること」を自分事として捉えてほしいと思っています。

その環境整備の一環で、まずは障害者が在籍している部署を対象にスタートラインの研修を昨年実施しましたが、今後は全社的に実施して頂きたいと考えています。

―――ありがとうございます。引き続きご支援させて頂きます。

富士氏

会社として理解を深め、働く場所や業務を拡大し、そこで障害者の「できないこと」が「苦手なこと」になり、「苦手なこと」が「できること」になる。

一つずつ「できること」を増やしていってほしいと思いますし、それが会社としてやるべきことだと考えています。

―――まさに一人ひとりと向き合いながら取り組む職業能力の開発と向上ですね。

塚本氏

障害の有無に関わらず、当社の社員として一人ひとりに向き合うこと。自分たちも会社で育ててもらってきたので、それを実施しています。

佐瀬氏

今回チャレンジしたジョブローテーションの取り組みも、まだこれから改善すべき点はありますが、みんなで一歩一歩乗り越えようと進んでいます。

そんな成功体験を通じて、人間力が育ち、自信になり、結果的に幸せにつながっていくと思っています。

富士氏

障害者雇用の成功には、働く側の意識も非常に大切だと思っています。

「働く」とは自分のできることで会社に貢献すること。それは障害の有無に関わらず、働く上で大切なことだと思っています。その大前提をふまえて、より能力発揮できる環境や業務を会社として提供したいと考えています。

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この記事を書いた人

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株式会社スタートライン 吉田

企業の障害者雇用支援や障害者の就職・転職支援、特例子会社人事、障害者雇用の業務開発・マネジメント・農福連携などを経験。現在はスタートラインにて、障害者雇用のコンテンツ制作やセミナー講師などに従事。これまで300社、3000名以上の障害者雇用に携わる。