【三菱地所設計導入事例】障害者雇用を通じた職業能力開発と向上で多様な人材が活躍する組織へ

130年以上の歴史を経て、建築設計から都市計画、企画・コンサルティング、リノベーションなど、国内外の多岐にわたる活動を通じて社会に貢献する三菱地所設計障害者雇用支援サービスサポート付きサテライトオフィスINCLU(以下、INCLU)を通じた職業能力開発と向上で多様な人材が活躍する組織の取り組みについてインタビューしました。(取材日:2023年3月)

▼インタビューを受けてくださった方
株式会社三菱地所設計 人事企画部 ユニットリーダー 佐々木 理恵 氏
株式会社三菱地所設計 人事企画部 林 利江子 氏

従業員数業種
788名建設・工事


INCLU導入前の悩み
・障害者雇用の業務切り出し、採用や定着など自社内での対応が困難な状況だった
INCLU導入後の効果
・障害者雇用の採用から定着までノウハウ習得ができている
・さらなる業務整理と効率化を目指してINCLUを運用している
・障害者の職業能力開発と向上及び多様な人材が活躍する組織の実現に向けて試行中

業務切り出しや採用、定着まで一貫した専門的支援が導入の決め手に

―――INCLU導入前の障害者雇用の状況について教えてください。

※INCLU導入検討時の担当者(以下、担当者)

担当者

障害者雇用にはもちろん取り組んでいましたが、法定雇用率は充足できておらず、人事担当にも障害者の定着のためのノウハウがなく、私たちだけでは障害者雇用全般の対応が難しい状況でした。

―――当時はどのような方を雇用されていたのですか?

担当者

障害者の人材紹介サービスを利用しましたが、基本的に入社までのサービスのため、定着面の課題解決にはつながりませんでした。その他に、農園型雇用も見学しましたが、会社の方針もあり丸の内に拠点を構えられているINCLUを導入することに決定しました。

―――どのような会社の方針ですか?

担当者

まずは、フォロー体制も含めて本社との距離が近いこと。そして三菱グループとして「丸の内で共に働こう」という考えも大きかったです。また、業務切り出しや採用コンサルティング、そして定着支援まで一貫して専門家のサポートがある点も魅力的でした。

障害者雇用を通じて社内業務が整理され効率化と負担軽減に貢献

―――業務切り出しはどのように進行しましたか?

林氏

スタートラインの業務切り出しコンサルティングの方にも入ってもらいながら10部署前後にヒアリングを実施し、まずは3部署から業務を切り出しました。

―――業務切り出しは順調でしたか?

林氏

私自身、人事企画部に異動する前は業務切り出しの依頼を受ける立場だったのですが「切り出せる業務はありません」と断ったこともありました。

その時の依頼を受ける側としての経験や、各部署の業務理解がある程度あることを生かし、ポイントを抑えつつ地道に各部署に掛け合って業務を切り出すことができました。

安定した業務量を確保できなかった初期に、技術管理部から、「設計図面管理、データ化業務をお願いできないか。本社内での作業もありますが、丁寧に指導します」という声掛けもあり、共に働いていく体制が、他部署の協力もあり整い始めました。

―――業務を切り出した後の各部署の反応はいかがですか?

林氏

はじめは業務切り出しに不安を感じていた部署や担当者も、今ではINCLUのメンバーに本当に感謝しています。いつかしようと思っている緊急ではないが重要な業務を切り出すことで、業務効率と精神的負担の軽減につながっています。まさに、障害者雇用を通じて社内業務が整理されていくイメージですね。

―――業務の進め方は各部署と直接やり取りされているのですか?

林氏

そうですね。切り出した部署の担当と障害がある社員が直接メールなどでやり取りして業務を進めています。各部署の担当も丁寧に対応するよう心掛けてくれているようです。

―――どのようなことを意識しながらマネジメントされているのですか?

林氏

それぞれできること、できないことの違いがあるので、他人のことは気にせず自分のペースで、早さよりも丁寧さを大切に、といつも言っています。

安心して働ける環境で能力を発揮できているからか、チーム全体的に業務対応が非常に早いです。

―――そうなのですね。それは良いことですね。

林氏

そうですね。良いことなのですが、懸念点もあります。

―――どのような懸念があるのですか?

林氏

スピードばかりを意識したり、他人と比較する場合がやはりあります。仕事は早さよりもミスなく丁寧に仕上げることによって周囲の信頼が得られると考えているので、それを伝えるようにしています。

―――そのような接し方は、どのように習得されたのですか?

林氏

スタートラインのチーム構築コンサルティングの時が大きいですね。マネジメントとしての接し方や伝え方、その他に休憩取得の指示やその大切さなど、本当にたくさん勉強させてもらいました。

障害者雇用を通じた職業能力開発と向上で多様な人材が活躍する組織へ

―――現在の状況について教えてください。

林氏

開設当初は出来るだけINCLUに顔を出して、まずは信頼関係を構築することを意識していましたが、現在は本社勤務にもチャレンジしてもらえる環境を作り能力発揮の機会を設けるようなステップに移行しています。

佐々木氏

将来的には、各部署に障害がある社員が配属され、その部署内で仕事ができている状態を目指しています。そのために、今INCLUで働いている社員も、週に数日、本社に来て仕事をする取り組みを始めました。

―――それは環境の変化を伴うチャレンジですね。

佐々木氏

障害者雇用の雇用率達成はもちろん、多様性を認め合う組織、多様な人材が活躍する組織を目指しています。多様な人材が一緒に働くことでコミュニケーションが生まれ、お互いを知ることでそれぞれの可能性が広がることもあると思います。そのように多様な人が活躍できる組織を作っていきたいと考えています。

―――そのためにINCLUも有効活用されているのですね。

佐々木氏

そうですね。最初から現場配属となると双方にとって不安が大きい面もあると思うので、INCLUを活用しながら、安心して一緒に働ける組織に向けて慎重に一歩ずつ進んでいきたいと考えています。そのためには、安心して働ける環境であるINCLUの存在は非常に重要ですね。

―――本社での勤務も取り入れることについてINCLUの社員はどんな反応をされていますか?

林氏

最初は環境の変化に戸惑っていた社員もいましたが、今では慣れてきたので他の業務もチャレンジしてみたいと面談で話してくれています。

―――それは嬉しいですね。

林氏

一人ひとりコンディションも適性も違うため、本社勤務への移行、成長するフェーズへと段階的に上げていくには、慎重に本人とコミュニケーションを取りながら進めていきたいと思っています。

――― 一人ひとりの成長を実感できる取り組みでもありますね。

林氏

例えば、対人関係に苦手意識があった社員が、本社勤務の際に知らない部署の知らない人に話しかけて、業務対応していたこともありました。そんな一つ一つの日々の出来事にそれぞれの成長がありますし、障害による得手不得手がある一方で、何でも全部フォローし続ける必要はないということを実感しました。

―――最後に今後について教えてください。

佐々木氏

一人ひとりに向き合い、コミュニケーションを通じて適性や意向を確認しながら活躍の場や機会を広げ、多様な人材が活躍できる組織体制を構築していきたいと思います。

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この記事を書いた人

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株式会社スタートライン 吉田

企業の障害者雇用支援や障害者の就職・転職支援、特例子会社人事、障害者雇用の業務開発・マネジメント・農福連携などを経験。現在はスタートラインにて、障害者雇用のコンテンツ制作やセミナー講師などに従事。これまで300社、3000名以上の障害者雇用に携わる。