エリクソン・ジャパン株式会社(以下、エリクソン)は、1985年に駐在員事務所を開設し、本年で設立40周年を迎えます。北欧スウェーデン発の世界有数プロバイダーとして、移動および固定通信業者へ通信機器・サービスを提供し、グローバルで培った実績とノウハウを元に、高品質な製品やソリューションを日本市場に提供し続けています。
屋内農園型障害者雇用支援サービス IBUKI(以下、IBUKI)活用事例を伺いました。(取材日:2024月12月)
▼インタビューを受けてくださった方
人事本部@横浜 小林智宏 氏
サービスデリバリー部門@横浜 パリセック幸恵 氏(コミッティーメンバー)
ITエンジニア@仙台 東誠太 氏
従業員数 | 業種 |
---|---|
約1100名(2024年12月時点) | 通信・情報サービス |
スウェーデンの企業ならではの障害者雇用への取り組み
―――IBUKI導入前(2022年9月)の障害者雇用のご状況を教えてください。

ITエンジニア職への障がい者の採用は、非常に困難でした。そんな中、メディアを通じて厚生労働省や農林水産省による農福連携(農業と福祉の連携)を知り、IBUKIに問い合わせました。
2022年の立ち上げの際、Hoppas Farm(ホッパスファーム)という名称をつけました。Hoppasとはスウェーデン語で「希望(Hope)」を意味します。いまではこの名称も社員の間で浸透してきました。
エリクソン・ジャパン、障がいのある人の活躍を支援する屋内ハーブ園「Hoppas Farm」を開設 – Ericsson
初めはファームで栽培したハーブから作ったティーバッグをオフィスのコーヒーエリアで提供していましたが、昨年からはスウェーデンらしさを打ち出し、スウェーデン料理に欠かせないディルを社内で配布するなど、活動の幅を広げています。ディルの配布時には、Hoppas Farmで働く障がい者の皆さんを横浜オフィスに招待し、社員に手渡ししてもらう機会を設けました。
配布後のFIKA※では多くの社員が集まり、皆さん喜んでいました。


バターとあわせてディルバターを社員が作りました。
―――ディルを社内配布した反響はいかがですか?

日本ではマイナーなハーブですが、社内には熱烈なディル好き社員が多く、とても好評です。Hoppas Farmで栽培するディルは新鮮なので、従業員の皆さんの家庭で「とても美味しい」と楽しんでもらえているようです。
社内チャットにディルを使用した料理の写真を投稿してくれる従業員もいて、ハーブを通して徐々に障がい者雇用への理解が広がっていると実感できました。


ディルの本場であるスウェーデン人の従業員からも「新鮮でとても美味しい。スウェーデン料理にはHoppas Farmのディルが欠かせない」と好評だったのは嬉しかったですね。
エリクソンの日本オフィスでは30か国以上の国や地域出身の社員が働いていますが、ディルが他のヨーロッパやアジアの国々の料理にも一般的に使われていることを知り、ハーブを通じて国際的な交流を深められれば良いなと思いました。
エンジニア職のイメージを活かして採用促進へ向けたブランディングに繋げたい
―――他にも、エリクソンならではの取り組みを教えてもらえますか?

Hoppas Farmをもっと知ってもらうために、オフィスで働く社員にファームに来てもらう見学会を定期的に開催しています。
エリクソンには優秀なエンジニアが多くいますので、見学の予約をシステム的に管理する「見学予約システム(Farm Visit Booking System)」を開発しようと、社内エンジニアにメールで呼びかけてみました。すると、先輩社員からの推薦をうけた若手エンジニアの東さんが協力してくれることになりました。
―――相談を受けた際、どのようなお気持ちでしたか?

「東さんは絶対好きそう」と指名してもらい嬉しかったですし、障がい者雇用の役に立てるならと前向きな気持ちでした。
―――前向きだったんですね。「見学予約システム」開発に取り組んでみていかがでしたか?

通常業務では特に正確性が重要視されますが、この依頼は自由度が高く、楽しく取り組めました。
エンジニアとして学んできた知見が障がい者雇用の取り組みに活かせて、光栄でした。
また、様々な方と連携して取り組んだので、普段やりとりの少ない方とも話すことができて、社内コミュニケーションの幅が広がりました。
―――社内コミュニケーションの活性化にも繋がったのですね。社内の反響はありましたか?

「見学予約システム」開発に関する社内共有会が実施され、参加者からは技術的な面に加えて「このような想いや背景で開発していたのか」と好評でした。
―――素敵ですね。

「見学予約システム」の取り組みは、ウェブ記事にしてエリクソンの新卒採用ページに掲載しています。
『Hoppas Farm見学予約システム構築の舞台裏』 | 理系女子のWEBメディアRIKEJOCAFE
エリクソンの特色を活かした取り組みなので、新卒の皆さまに“あらゆる場面でエンジニアスキルを活かせる会社”と知ってもらうことで採用促進へ向けたブランディングに繋がれば嬉しいです。
また、今回は東さんに開発を担当してもらいましたが、今は第2期となる次の世代の若手エンジニアの方に引継ぎをしていて、システムの改善や新しいツールの開発をお願いしようとしています。このような取り組みが今後もエリクソンの伝統として続いていくといいなと思っています。

コミッティーの立ち上げ、さらなるコミュニケーションの活性化へ
―――社内向けの「Hoppas Farm見学会」について教えてください。

毎月1回、1年以上にわたり継続している見学会では、2名ほどの社員が就業時間中にHoppas Farmを訪れ、ハーブの香りに包まれたブースで、障がい者のかたからハーブづくりについての説明受け、そして作業を教えてもらい、一緒に作業をします。最後には、一緒にハーブティーを楽しみながら会話するFIKA※の時間を設けた全部で2時間ほどのプログラムです。
ファームや障がい者雇用の取り組みを従業員に知ってもらうことが目的でしたが、障がい者の皆さんにとっても、初めて会う人たちとコミュニケーションをとる良い練習になっているようです。
―――見学会に参加してみていかがでしたか?

Hoppas Farmで働く障がい者の皆さんがあたたかく出迎えてくれて嬉しかったですし、何よりハーブの爽快感のある香りが栽培ブースいっぱいにあふれているのが印象的でした。
新鮮で美味しいハーブティーを楽しみながらコミュニケーションも深められて、とても有意義な時間でした。
―――より双方向な社内コミュニケーションになるよう取り組んでいるんですね。

そうですね。物理的に離れた場所にあるHoppas Farmとオフィスで働く社員のお互いの心理的距離をもっと近づけることが、一番の課題だと考えています。しかし、人事部の限られたメンバーだけではアイデアも限られてしまいます。そこで、Hoppas Farmがある程度軌道に乗ってきた今がチャンスと捉え、全社的なコミッティーを立ち上げ、様々な部署から数名の方に参加いただき、ファームにかかわる企画や運営に取り組んでいます。

―――今後のD&I活動の展望を教えてください。

まずは社内の認知向上を目指していきたいと思っています。Hoppas Farmの認知は徐々に広がっているもののまだまだなので、全従業員に知って欲しいと思っています。
また、Hoppas Farmで働く障がい者の皆さんには、オフィスで働く従業員からの感謝の声を積極的に伝えていきたいと考えています。

特に私がいる仙台オフィスは物理的距離がありますが、ハーブティーやディルなどを実際に手にすることで心理的距離が近くなれば良いなと考えています。

今後は、「ものづくり(ハーブを使ったものづくり、例えばハーブソルトやオイルなど」「たのしむ(ハーブやディルを中心としたコミュニケーション活動、例えば見学会やレシピの共有など)」「知る(D&I、社会におけるエリクソンの役割など)」という3つのエリアに分けて、それぞれ継続的に何ができるかを考えて社内外にD&Iを広めていきたいと考えています。
※FIKA(フィーカ)
スウェーデン発祥の、コーヒーとお菓子を楽しむ文化のこと。ここでは、コーヒーの代わりにハーブティーを飲みながら楽しく同僚と会話をすることを指す。
・障害者の表記について
当社では、以下の理由より常用漢字表記を使用しておりますが、エリクソン・ジャパン様のご意向により発言箇所は「障がい者」と表記としております。
≪障害者の表記について≫https://start-line.jp/shougai/