【最新情報まとめ】法定雇用率引き上げが及ぼす「影響」と「やるべきこと」

今、障害者雇用は大きく変わりつつあります。

◆障害者総合支援法、障害者雇用促進法の改正
◆精神障害者、発達障害者の雇用増加

など
そんな中、2023年2月、大きな変化が協議、決定されようとしています。

『法定雇用率引き上げ』

その変化は企業へ大きな『影響』を及ぼします。

では、具体的にはどんな『影響』があり、何を『やるべき』なのでしょうか?
わかりやすくお伝えしますので、是非最後までお読みください。



【1】障害者の法定雇用率とは

障害者の法定雇用率とは、障害者雇用促進法にて、民間企業や国/地方公共団体などに対し、常時雇用者の一定割合に相当する人数以上、障害者の雇用を義務付けている基準値のことです。

その基準値は、2023年1月現在、民間企業は2.3%。

常用雇用者数1,000名の企業は23名以上『障害者を雇用する義務がある』ということです。

【2】半数以上の企業が“障害者雇用義務違反中”という現実

「2.3%」と小さな数値に感じますが、この法定雇用率を達成している企業はわずか「48.3%」。

つまり『半数以上の企業が障害者雇用義務違反している状態』となっています。

厚生労働省『令和4年 障害者雇用状況の集計結果』(2022年12月23日)

【3】法定雇用率の段階的引き上げの方針発表!

そんな「半数以上の企業が障害者雇用義務違反している状態」にもかかわらず、
以下の通り「段階的に法定雇用率が2.7%まで引き上げられる方針」で進んでいます。

≪法定雇用率の段階的引き上げ(民間企業)≫
・2024年4月~ 2.5%
・2026年7月~ 2.7%
※引き上げ時期は変更の可能性あり

では、法定雇用率が2.5%、2.7%と引き上げられた場合、どのような状況になるのでしょうか?

【4】約12.2万人の障害者雇用純増が必要!?

2024年4月、法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられた場合、現在の算定基礎となる労働者数から推計すると『約7万人の障害者雇用純増が必要』です。

さらに2026年7月、2.7%に引き上げられた場合、現在の算定基礎となる労働者数から推計すると『約12.2万人の障害者雇用純増が必要』です。

【5】直近5年「2倍のペース」で障害者雇用純増が必要

法定雇用率の引き上げにより、今から約3年で12万人以上の雇用純増が必要な状況が推計されますが、直近5年の障害者雇用の純増雇用数は「平均約2万人/年」です。

厚生労働省『令和4年 障害者雇用状況の集計結果』(2022年12月23日)より算出

つまり直近5年の「2倍のペースで障害者雇用を増やす必要がある」ということになります。

【6】就職件数は身体障害者「減」精神障害者「増」

そんな「2倍のペースで障害者雇用を増やす必要がある」状況の中、主たる採用対象はどんな障害者なのか、直近10年間の障害別就職件数は以下の通りです。

出典:厚生労働省『令和3年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめ』(2022年6月24日)

◆身体障害者は減少傾向
◆知的障害者はほぼ横ばい
◆精神障害者(発達障害者含む)だけ10年間で約2.5倍(※就職者全体の半数以上)

【7】精神障害者の半数以上が1年間で退職!?

採用の主たる対象である精神障害者ですが、公的な調査研究によると、以下の通り1年後の定着率は49.3%。「精神障害者の半数以上が1年間で退職している」ことになります。

数値出展:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『障害者の就業状況等に関する調査研究』2017年4月

【8】引き上げによる『影響』は雇用純増だけではない!?

法定雇用率が2.3%➡2.7%と引き上げられても、1,000名の大企業で4名の雇用純増と、大きな影響は無いように感じます。

ところが、現実的には以下のようなことが想定されます。

◆既存障害者社員の退職(年齢、障害、転職など)
◆新規採用した社員のミスマッチ(退職)
など

障害者採用市場の変化による間接的な影響が大きく、現時点での法定雇用率達成/未達成にかかわらず、対策を講じる必要があると考えらます。

【9】法改正によって『雇用の質』を問われる時代へ

法定雇用率の引き上げに先だって、2022年12月には障害者総合支援法などが改正されました。
その中で、雇用した障害がある社員の『職業能力の開発と向上に関する措置』を「事業主の責務」とする文言が追記されました。

つまり、雇用した社員の今と未来に「企業として真摯に向き合うこと」が求められています。

【10】『やるべきこと』は今後を見据えた雇用計画

このような状況下で企業がやるべきことは『今後を見据えた雇用計画』です。
その詳細内容は、例えば以下となります。

≪業務≫
難易度、量、志向/キャリアに合わせた柔軟性など「採用ターゲットに合った業務」の検討

≪採用≫
体調/精神面、志向/キャリア、他社優位性などを加味して「ミスマッチのない採用ノウハウ」の蓄積

≪定着≫
障害の理解、能力開発と向上、コミュニケーションの柔軟性など「多様な人材をマネジメント/育成できる体制」の構築

【11】まとめ~『共生社会実現のために真摯に向き合うこと』~

◆法定雇用率引き上げとその影響により、倍のペースでの採用が必要
◆障害者採用市場の変化
◆「雇用の質」への対応

昨今の障害者雇用に関わる変化は『共生社会実現のためのポジティブな変化』であるととらえられますが、一方で、その実現には「様々な課題がある」と考えられます。

1社1社、一人ひとりの課題に真摯に向き合い、『誰もが自分らしく生きる社会を創造する』
スタートラインはその想いで今後もサポートしてまいります。
今後とも引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

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この記事を書いた人

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株式会社スタートライン 吉田

企業の障害者雇用支援や障害者の就職・転職支援、特例子会社人事、障害者雇用の業務開発・マネジメント・農福連携などを経験。現在はスタートラインにて、障害者雇用のコンテンツ制作やセミナー講師などに従事。これまで300社、3000名以上の障害者雇用に携わる。