障害者雇用において、業務切り出しは重要なプロセスです。
適切な業務を切り出すことで、障害者が自らの能力を活かし、企業全体の生産性を向上させることができます。
突然ですが、このような悩みはありませんか?
・障害者に担ってもらう業務がない
・業務切り出しノウハウがない
・他社はどのように業務切り出しをしているの?
など
これらの解決策や業務切り出しの具体的な事例を紹介します。
障害者雇用の参考にご覧ください。

障害者雇用の業務切り出しとは?

障害者雇用の業務切り出しは重要な役割を果たします。
企業内の業務を細分化し、特定の業務を従業員に割り当てるプロセスなのですが、
障害者が自分の能力を活かしやすい業務を担当することで、企業全体の生産性が向上し、障害者自身も働きがいを感じることができます。
業務切り出しを成功させる5つの手順
業務切り出しを成功させるには、以下の手順を踏むことが推奨されます。

1.業務の洗い出し
まず、企業内の全ての業務をリストアップし、それぞれの業務内容を詳細に把握します。
2.業務の分類
次に、リストアップした業務を、一般的に障害者が取り組みやすいとされる業務とそうでない業務に分類します。
この際、業務の特性や必要なスキルを考慮し、一般的に取り組みづらいと思われる業務であっても、社内の障害者にマッチしそうな業務があれば、合わせて振り分けをしておきます。どのような基準で業務を分類するかについては、後述します。
3.業務のマニュアル化
「2.業務の分類」でピックアップした業務については、詳細なマニュアルを作成し、業務の手順を明確にします。
4.業務の割り振り
マニュアル化した業務を、障害者に割り振ります。この際、障害者の特性やスキルを考慮し、適切な業務を選定します。
5.フィードバックと改善
業務を実施する中で、定期的にフィードバックを行い、必要に応じて業務内容や手順の改善、業務の追加を行います。
また、業務切り出しを成功させる手順の中では、最初の「1.業務の洗い出し」が重要です。
各部門(部署)の業務内容を把握し、どの業務が障害者に適しているかを検討していくのですが、そこで躓いてしまうと次のステップへ進めないためです。
そのため、部門(部署)責任者へのヒアリングや社内啓発活動などを通じて、障害者に担ってもらいたい具体的な業務を細かく洗い出すことが重要となります。

業務切り出しの注意事項3選
業務切り出しの手順を理解したうえで、いくつかの重要な注意事項があります。

1.業務の適切な選定
障害者の特性や能力に合った業務の選定は、障害者が長く安心して働くために重要です。
各部門(部署)から洗い出された業務をそのまま障害者に担ってもらうことは避け、業務を分類してみましょう。
例えば、初めて業務切り出しをする企業の場合、次のような分類があげられます:
- 高度な判断を必要としない業務
- 納期が比較的緩やかで、一時的ではなく一定量の発生が見込まれる業務
- 専門知識を必要としない業務で、他部署やクライアントとの調整が少ない業務
- マニュアル化が可能で、一度覚えれば繰り返し作業が行える業務
もし選定に迷ったら、まずは高度な判断や意思決定を必要としない、シンプルで定常的に発生する業務から始めると良いでしょう。
障害者のスキルアップやモチベーション維持も大切ですが、まずは無理なく業務を遂行できる環境を整えることを意識すべきです。
例えば、データ入力や書類整理、簡単な軽作業などが適しています。
2.業務の見える化とマニュアル化
業務プロセスを見える化し、詳細なマニュアルを作成することで、障害者が迷わず業務を進められるようにします。
これにより、業務の標準化と効率化も図れ、組織全体の生産性向上にも寄与します。
業務手順を図解や写真を用いて分かりやすく説明し、必要なツールやリソースを明示しましょう。
大切なのは、誰が読んでも同じ作業になるようなマニュアル化を意識することです。
3.サポート体制の整備
業務を切り出した後も、障害者が業務を円滑に遂行できるようにサポート体制を整えることが重要です。業務の集約窓口を一本化し、相談しやすい環境を作ることで、障害者が安心して働ける職場になります。
例えば、定期的なフィードバックやメンタリング制度を導入し、障害者が困ったときにすぐに相談できる体制を整えることも良いでしょう。
これらの業務切り出しの注意事項を押さえることで、よりインクルーシブな職場環境を実現できますし、障害者の多様な視点やスキルを活かすことで、組織全体の創造性や問題解決力向上にもつながります。
障害者雇用の業務切り出し事例
【部門(部署)別】
障害者雇用における部門(部署)別での業務切り出し事例をご紹介します。

事務部門
事務部門での業務切り出しは、データ入力や書類整理などの繰り返し作業があり、具体的には、以下の業務が考えられます:
- 書類の整理やファイリング
- 電話対応やメール対応
- 日常的なデータ入力
これらは、特に集中力の高い方やルーチンワークが得意な障害者に適しています。例えば、ある企業では、障害者が書類の整理やファイリングを担当することで、業務切り出し元の部門がメイン業務に注力でき、業務の効率化に貢献しています。
また、電話対応やメール対応は、マニュアルを作成すれば対応できることも多いです。
結果、企業全体の業務がスムーズに進行し、顧客対応の質の向上も期待できます。
IT関連部門
IT関連部門の業務は、障害者雇用で増えている分野です。
リモートで行える業務が多く、身体障害や心身的に通勤が困難な方でも参加しやすい環境を提供します。
例としては、次のような業務があります:
- ITサポート:従業員のPCやソフトウェアのセットアップサポートなど
- システム開発:システム設計開発や運用・保守のためのデータ管理など
- ソフトウェア開発:システム開発やウェブデザインなど
身体障害や心身の理由で通勤が困難な方でも、豊富なITスキルを持っていれば、主要な業務の役割を担うことが可能です。
例えば、あるIT企業では、システム管理やデータ整理を担当する障害者が、業務の効率化と品質向上に貢献しています。さらに、ソフトウェアの開発やウェブデザインにおいても、障害者がクリエイティブな才能を発揮し、企業の競争力を高める役割を果たしています。
人事採用部門
人事採用部門では、データ入力や書類整理などの作業があり、定期的な業務量が見込めます。例としては、次のような業務があります:
- 求人受付業務:応募者のデータ入力、面接日程の調整
- 入退社手続き:書類の受付、チェック、ファイリング、システム登録
- 健康診断関連:書類送付、日程調整、予約の再確認
事務部門同様、特に集中力の高い方やルーチンワークが得意な障害者に適しています。
一方で、履歴書など個人情報を多く扱う部署でもあるので注意が必要ですので、業務マニュアルを作成して、取り組むことが大切です。
また、業務マニュアルを作成することで、企業全体の業務がスムーズに進行し、求職者対応の質も向上します。
マーケティング部門
マーケティング部門では、一定のマーケティング知識が必要となりますが、障害者の活躍が見込めます。
例としては、次のような業務があります:
・市場調査(データ分析):顧客のニーズを調査し、データを分析する業務。
・SNS:SNSの企画・実施やウェブサイトの運営。
・コンテンツ制作:ブログ記事、ニュースレター、動画などのコンテンツを作成。
クリエイティブな発想や細かいデータ分析が得意な方に適しています。
在宅ワークでも取り組むことが可能なので、孤独になりやすく、定例ミーティングを設けるなど、適切なコミュニケーションと定期的なメンタルケアが必要です。
特に近年、SNS運用は、利用者の増加に伴って益々注目を集めています。個人だけではなく企業としてもSNSを活用してブランドの認知度を高め、営業利益に大きく貢献している企業もあります。
【業種別】
業種別でも業務切り出しに抱える悩みは様々です。

製造業
機械操作やライン作業が中心となるため、障害者が安全に作業できる環境を整えることが課題となります。知的障害者が清掃作業や郵便物の取扱いを担当する事例があり、業務指導や相談に関して担当者を定め、マンツーマンでの指導を行うことで、円滑な業務遂行を実現しています。
サービス業
顧客対応が重要な業務となるため、コミュニケーション能力が求められる場面が多く、障害者の中には苦手な方もいらっしゃるでしょう。これらの悩みを解決するためには、業務の特性と障害者の特性をしっかりと把握し、適切な業務を割り振ることが重要です。
情報通信業
データ入力や簡単なプログラミング、システムの監視など、IT関連の業務を障害者が担当する事例があります。これにより、業務の効率化と障害者のスキル向上を図っています。専門的な知識やスキルが求められるため、障害者が適応できるように段階的なスキルアップ機会の提供が重要です。
医療・福祉業
医療機関や福祉施設での清掃や物品管理、簡単な事務作業を障害者が担当する事例があります。これにより、施設の運営効率を高めるとともに、D&Iを促進しています。医療・福祉業では、患者や利用者との接触が多いため、障害者が安心して働けるようにサポート体制を整えることが重要です。
小売業
商品の陳列や在庫管理、レジ打ちなどの業務を障害者が担当する事例があります。例えば、商品のバーコードスキャンや在庫チェックを行うことで、店舗運営の効率化を図っています。
小売業では、顧客対応が求められる場面も多いため、障害者が適切に対応できるようにトレーニングを行うことが重要です。
金融業
銀行や保険会社などでのデータ入力や書類整理、簡単な顧客対応を障害者が担当する事例があります。例えば、データ入力や書類のスキャンを行うことで、業務の効率化を図っています。金融業では、正確性が求められるため、障害者がミスなく業務を遂行できるようにマニュアル化の徹底とサポート体制を整えることが重要です。
【就労場所別】
在宅(リモート)
在宅(リモート)での障害者雇用は、通勤が困難な方や柔軟な働き方を求める方にとって有効な手段です。その反面、対面でのコミュニケーションが難しく、言葉のニュアンスや表情の把握が難しくなるため、誤解が生じやすく業務が進まずメンタル不調を起こすなど、マネジメントのハードルが高くなります。
そこで最低限4つのポイントを意識しましょう。
1.コミュニケーションの確保
在宅勤務では、対面でのコミュニケーションが難しいため、チャットツールやビデオ会議を活用して定期的なコミュニケーションを確保することが重要です。特に、業務の進捗確認やフィードバックをこまめに行うことで、孤立感を防ぎます。
2.業務環境の整備
自宅での作業環境を整えることが必要です。
安定したインターネット接続や適切な作業スペースを確保し、必要な機材(PC、ヘッドセットなど)を提供することで、業務の効率化を図ります。
3.自己管理能力やタイムマネジメントサポート
在宅勤務では自己管理が求められるため、タイムマネジメントや業務の優先順位付けに関するサポートを提供することが重要です。
例えば、タスク管理ツールを導入し、業務の進捗を可視化することで、効率的な業務遂行を支援するなどです。
4.メンタルヘルスケア
在宅勤務は孤独感やストレスを感じやすいため、メンタルヘルスケアが重要です。
定期的なオンラインカウンセリングやメンタルヘルスに関する研修を実施し、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。

具体的な業務事例を紹介します。
マーケティング業務:SNSの投稿や簡単なデザイン作業、データ収集などのマーケティング関連業務を在宅で行う事例があります。例えば、在宅でSNS運用を担当し、投稿内容の作成やスケジュール管理を行っています。
カスタマーサポート:電話やチャットを通じた顧客対応を在宅で行う事例があります。
例えば、リモートでカスタマーサポートを担当し、顧客からの問い合わせに対応することで、企業のサービス向上に貢献しています。
サテライトオフィス
サテライトオフィスとは、企業の本社とは別に設けられた、小規模なオフィスのことです。
障害者雇用支援サービスサポート付きサテライトオフィス INCLU(以下、INCLU)の利用事例をご紹介します。
まとめ
障害者雇用の業務切り出しは、障害者の仕事のやりがいを高め、組織の生産性向上に寄与し、企業の社会的責任を果たす上で極めて重要です。
業務切り出しを通じて、障害者にとって働きやすい環境を整えることで、企業のイメージアップにもつながりますし、障害者が自信を持って業務に取り組むことで、企業全体の生産性向上も期待できます。
しかしながら、これらの課題を解決するためには、まだ以下のようなお悩みがあるかもしれません。
・他社事例の詳細をもっと知りたい
・業務過多でなかなか取り組めていない
・業務切り出しに限界を感じている
300社以上、1850名以上の障害者雇用支援実績のあるスタートラインまでお気軽にお問い合わせください。
