平成28年4月に施行された、改正障害者雇用促進法。しかし、本当の意味で障がい者が差別なく働ける環境を作るためには、法で禁止されている事柄を遵守する以外にも、現場の人間や、企業全体として、さまざまな課題に取り組む必要があります。人事担当者もその全体の取り組みの中において、重要な役割を担っています。そして、人事担当者は、改正障害者雇用促進法についてよく知り、かつ、実際的な工夫と配慮を行う必要があります。
障害者雇用促進法について
改正障害者雇用促進法とは、簡単に言うと障がい者が働きやすい環境作りをするための法律です。
仕事をすると一言にいっても、普通の人でも得意なことや苦手なこと、何年もかけて習得する技能、人間関係の構築など、乗り越えるべきハードルがたくさんあります。なんの対策もなく障がい者が働くということは、普通の人にもあるそのハードルが、さらに何倍も高くなってしまうということになります。
改正障害者雇用促進法は、そのようなハードルがあるからといって採用対象から排除する、不当な条件で働かせる、解雇することを禁じています。同時に、障がい者が適切な環境で働けるよう、「合理的配慮」を提供することを事業主の義務としています。
障がい者の働きやすい企業
具体的に改正障害者雇用促進法において、企業や職場はどのような取り組みをしているのでしょうか。
例えば、市役所で働く、ある40代の視覚障がい者の男性は、元々は健常者でしたが、夏祭り中の事故により頭部を負傷。視覚をほとんど失ってしまいました。
その後、彼のデスクには、「拡大読書器」という、背景と文字の色を変えて見やすくする機械が用意され、黒字に白文字で資料名が記載されているファイルが並びました。
これは、男性が相談窓口担当の方と協議し、少しでも働きやすい環境にしようと本人と勤務先で協力して取り組んだ結果です。この環境が整う以前は、携帯アプリを使って1文字ずつ読み取るしか方法はなく、とても普通の人と比べられるような作業スピードではありませんでした。
もちろんデスク環境を整えるだけでなく、窓口を訪れる市民の方に対応するための資料を見えやすいように工夫したり、目で見て判断したりしないと難しいケースがあれば、周りの職員がこの男性に声をかけてフォローをしています。
この事例からわかることは、障がい者が働きやすい環境というものに決まったパターンがあるわけではないということです。一人一人症状が異なり、できること・できないことが異なります。
この視覚障がいを持つ男性が働くことができているのは、職場でもっと働きやすい環境を本人が求めたことと、雇用主側が積極的に環境改善に取り組んだこと。加えて、周りの職員が男性の症状を理解し、フォローをしているという「職場全体として」の取り組みが功を奏しているためです。
将来的な展望
先に紹介したような取り組みが、あらゆる企業で実現しているか、またその取り組みが実際的な助けになっているかというと、そういった事例は一部に限られているのが現状のようです。
主な原因は、改正障害者促進法において「合理的配慮」を提供しなければならないと記載されていても、「合理的配慮」がどのようなものなのかを、身近な障がいを持つ従業員にあてはめて考えることが難しいからだと予想されます。
具体例も提示されてはいても、先に述べたように障がいの症状や程度もさまざまであり、必要なサポートの形式も多種多様であり、障がい者一人一人と向き合う余裕が今の企業にはなかなかないのかもしれません。
これから障がい者雇用の問題に取り組むには、企業だけが解決すべき問題と捉えるのではなく、身近に障がい者がいる人、障がいを知る人も含め、社会全体との問題として取り組む必要があるでしょう。
例えば、経営者ではなくても、家族や友人に障がい者がおり、職場の違う部署に同じような障がい者がいることを知った場合、必要なサポートを提案できるかもしれません。その他、福祉の専門家がサポートスタッフとして寄り添い、他の職員が自分の業務に専念できるようになり、業績をあげた企業もあるようです。
少子高齢化が進む中、思わぬ障がいを抱えてしまうといったケースは増えてくるかもしれません。障がいがあっても、必要な技能をもっており、職場に欲しい人材だというケースもあるでしょう。
障がいをもっているからといって、「不利だ」「負担だ」と決め付けず、合理的で、必要なサポートを整えれば、業績アップに繋がるという、前向きな意識で取り組むことが、これからの企業に求められていることでしょう。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。