平成28年4月1日より、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。別名「障害者差別解消法」と呼ばれている通り、障がいがあるからといって、社会の中で一人の人間として差別されることがないようにすることが目的の法律です。主に、政府機関や民間企業に対して、合理的な配慮が求められていますが、具体的に企業としては、どのような取り組み方をするべきなのでしょうか?
障がい者雇用の実態
障がい者の雇用については、2014年の障がい者雇用率が1.82%で、とりわけ従業員数が1000名を超える、いわゆる大企業においては、2.05%の障がい者雇用率に達しており、概算としては法定雇用率を満たしていると言えます。
ただし、従業員数50〜300人の中小企業に目を向けてみると、法定雇用率は1.48%と課題を残している状態です。さらに障がい種別で見ると、「身体障がい」が67.0%、「知的障がい」が13.0%、「精神障がい」が10.1%というデータがでています(2013年度に無作為に抽出した1800社の中小企業のうち、回答があった574サンプルからのデータ)。
障がいを抱えながら正規雇用として働いている人の7割を身体障がい者が占めていますが、知的障がいを抱えていると、13.0%にとどまってしまっているなど、障がい者雇用の難しい現実が浮き彫りになっています。
障がい者差別禁止の問題点
障がい者雇用においては、何が差別に当たり、なにが差別に当たらないのかが大きな課題となっています。
厚生労働省の資料の中に記載されている「差別」の具体例には、
- 単に障がい者だからという理由で、障がい者を募集の対象としないこと
- 労働能力等に基づくことなく、単に障がい者だからという理由で、特定の仕事を割り当てること
- 労働能力等に基づくことなく、単に障がい者だからという理由で、障がい者を昇進の対象としないこと
などがあります。
障がい者であっても、適切な環境を提供した場合の労働力を適正に評価した上で、本人と企業双方にとって必要な処置をとっている場合、他の健常者と異なる労働条件であっても、差別には当たりません。
ただし、職場における業務・仕事とは、求められる結果に対して正当な賃金が支払われるものであり、障がいによるハンデが、仕事を完遂する過程において悪影響を及ぼす可能性は多々あると言わざるを得ません。
障害者雇用促進法では、「障害者に対して、健常者と均等な機会を与えなければならない」とされています。しかし、機会さえ与えれば差別ではないと言い切れるのでしょうか。それとも、均等な機会を与えた上で、業務達成能力とその結果に差がでてしまう現実まで配慮が必要なのでしょうか。これらは、障がい者雇用と差別解消というテーマの中で、課題として残っていると言えます。
今後の企業はどのように取り組んでいくべきか
なるべく面倒ごとを抱えたくないという経営心理から、人とは違う配慮が必要な障がい者を、今まで避けてきた企業も数多くあるでしょう。
これからの企業は、今回施行された法律を経営の重荷ととらえるのではなく、障がい者の能力を生かすチャンスとして取り組む姿勢が必要だと言えます。キーワードは「合理的配慮」という点で、これは障がい者を特別扱いするわけではなく、十分な能力を発揮できる環境におき、企業にとっても本人にとっても、利益になる処置を施すという視点で捉えるべきです。
障がい者でない人が、企業にとって採用か不採用になるかは、企業が求めている条件を満たしているかどうかです。この点では、障がい者の採用基準も、同じ理念の上で判断されるべきであり、障がい者であることやないことが、採用や業務能力の評価に影響を及ぼさないことが、差別解消の理想形であると言えます。
障がい者として生きていく上で、またあらゆる職種の中で、どのような不利益が起こりうるかは決まっているわけではありません。その不確定要素こそが、障がい者雇用の最も難しいポイントでもあります。
ただし、「差」を無くすということは、ハンデがあれば必要な分だけを埋める配慮をし、ある程度の業務能力に差が見られるとしても、本人の姿勢や努力を正当に評価していくことが必要でしょう。企業としてだけでなく、職場にいる一人一人の意識付けが不可欠なテーマと言えるでしょう。
参照文献:
平成26 年 障害者雇用状況の集計結果
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11704000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-shougaishakoyoutaisakuka/0000066519.pdf
障害者就労実態調査報告書
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/jittaichosa.files/jittaichosa_gaiyo.pdf
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。