障がい者雇用はこれまで「法律だから」という採用理由で進められてきました。私自身、障がい者雇用の業界で人材紹介や定着支援(離職防止支援)などを10年以上行ってきましたが、以前の営業現場では人事担当の方に「なぜ障がい者を雇用しなくてはならないのですか?」と聞かれたとしても、「法律だからやらなきゃいけないんです」としか答えられませんでした。
考えてみてください。同じ賃金を払うのであれば、効率や作業スピードの劣る障がい者ではなく、健常者を間違いなく採用します。それは市場が競争原理である以上、仕方がないことです。
以前、twitterで「障がい者雇用義務とかマジでクソだと思った今日。管理側の手間が増えるだけで作業効率良いわけでもねえし、デメリットしかねえじゃねえか。」というつぶやきを見かけましたが、まさにその通りだなと思います。企業は慈善事業ではありません。営利活動です。そのために法律ができたのです。
企業論理を無視して、正義のヒーローのように「障がい者は何がなんでも雇用しなければならない!」と企業に対して法律を盾にして言うことは、今の私にはできません。企業、障がい者の双方にとって、障がい者雇用がメリットにならない限り、精神、発達障がい者の雇用を進めていこうというような未来図を描いている障がい者雇用はこれ以上進まないと思います。
では、なぜ企業は障がい者雇用をしなくてはならないのか。
これまで10年近く障がい者雇用を研究、触れてきて法律以外の理由が見つかりました。しかもそれは、障がい者の働き方だけではなく、日本で働くすべての人の働き方の問題が解決できると考えています。
障がい者を雇用しなくてはならない理由、それは、誰もが働き続けられ、活躍できる組織を作るためです。何かしらの制限がある障がい者を雇用し、働きがいを持たせ、活躍させることができる組織は、社員のモチベーションが高く、成果を残すことができます。
会社は労働者を同じ賃金で、できるだけ長く働かせることが、会社に利益につながります。同じ20万円という月収で8時間働いてもらうのと、16時間働いてもらうのであれば、多少生産性は落ちるでしょうが、16時間働いてもらうほうが企業にとってはいいはずです。給料が同じにも関わらず、成果物は多く生まれるわけですから。しかし、この前提に立ち続ける限り、過重労働はなくなりません。日本企業の多くがブラック企業と言われてしまうのは、これが原因です。
前述のように、障がい者には何かしらの制限があります。だからこそ、彼らが働き続けられる組織というのは、過重労働ありきの組織ではないということです。同じ賃金でできるだけ長くたくさん働かせるのではなく、労働者に無理のない組織運営ができているということです。また、これは、妊娠中の方や、一時的に骨折した方、家族の介護が必要な方などといった、何かしらの制約がある人も無理なく働ける組織とも言えます。
障がい者にとって利用しやすい施設が高齢者や子どもにとっても利用しやすいことと似ていますが、企業のマネジメント、組織論にもユニバーサルデザインの考え方が当てはまると言えるかもしれません。
障がい者が活躍できる組織は、誰もが活躍できる。
私が事ある度に伝えるメッセージですが、少子高齢化が進み、働く人が少なくなってくる社会において、障がい者を雇用するという戦略は企業経営を続けていくための選択肢の1つになるはずです。誰もが働き続けられ、成果を出せる組織にするために、障がい者を雇用するのです。
障がい者を雇用し続け、活躍させられるかどうか。それが永続する企業の1つの指針になるでしょう。そして、障がい者を雇用し活躍させられる企業が増えることが、障がい者だけではなく、労働者全般の働きがいや働きやすさにつながっていくのではないかと考えています。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。