障がい者の離職を防ぐために重要な3つのこと。

若者はなぜ3年で辞めるのか?という本が出版されたのは約10年前。最近では人工知能を使った転職サイトを運営するキャリアトレックさんが「とりあえず3年の3年が過ぎました」というキャッチコピーで広告を打っているのを見かけますが「離職=3年以内に辞める」というのはなんとなくの常識観として刷り込まれているように感じます。

一緒に仕事をしている縁もあって、「早期離職白書」を発行するなど、早期離職者を研究、調査している株式会社カイラボの代表井上さんと話す機会が多いのですが、企業として早期離職を防ぐには、存在承認・成長実感・成長予感の3点が重要だと論じています。井上さんの場合、新卒入社3年間の早期離職を調査対象としていますが、この3点は障がい者雇用においても同様のことがいえるのではないでしょうか。

せっかく雇用したのにも関わらず、すぐに辞められてしまうのは企業の障がい者採用活動にとって大きな痛手です。早期離職を防ぐためには、企業側の存在承認・成長実感・成長予感を通じたアプローチが重要です。

存在承認

株式会社ゼネラルパートナーズの障がい者雇用に関する調査機関「障がい者総合研究所」の「転職・退職理由に関するアンケート調査」では、「転職・退職を決断する前にどのようなフォローや対応があれば、前職に残っていたと思いますか?」という設問への回答のうち、障がいへの理解・配慮という回答が最も多いという結果が出ています。

障がい者雇用は、当たり前の話ですが、求職者の中から障がい者の求職者を選択して雇用するものです。障がい者社員が働きやすいようにハード面(オフィス環境や使うツールなど)の準備、配慮を行うと同時に、ソフト面(職場内での人間関係)の準備、配慮が重要です。この配慮と準備を行っている状態が「存在承認」です。すなわち、これから共に働く同僚が障がい者社員であることを認知し、準備できていることです。働く環境におけるハード、ソフト両面からの準備が重要です。

成長実感

障がい者雇用には「法定雇用率の遵守」という文言が付きまといます。企業としては戦力として障がい者社員を雇用するというよりも、まずは数を揃えるために雇用するという意識のほうが、自覚的・無自覚的どちらにしても存在しています。これは雇用される障がい者社員の多くも認識していることです。

その前提のもとで働いていれば、目の前の仕事を淡々とこなす障がい者社員と波風立てずに仕事していてくれればいいからという企業との間で高め合うような関係性を築くことはできません。できることが増えた、成果が上がったという自覚から生まれる、やりがいや働きがいが生まれなければ、この会社で働き続けたいという意欲が湧くことは少ないでしょう。

障がい者社員は「法定雇用率の遵守」のために、多くの企業が障がい者社員を求めて採用活動していることも知っています。転職・離職を防ぐためにも、成長している実感を与えられる職場環境を作ることが重要です。

成長予感

障がい者雇用の実態としては、契約社員での雇用、つまり正社員として雇用していないという一面があります。これは障がいの種類や程度によって、本当に自社で働くことができるのか確認したいという企業側の意図もあれば、健常者社員と同じ水準で見た際に正社員登用は難しいという判断が生まれることが背景の場合もあります。

法定雇用率2%という数字は、100人の従業員のうち2人しか障がい者社員がいないことを意味し、それらの多くが契約社員の雇用形態であれば、人事考課にかかる評価制度や教育体制等が整備されてないこと、あるいは整備する必要性を大きく感じられていないことは仕方のないことでしょう。しかし、その結果、障がい者社員がどうすれば出世できるのか、給与が上がるのかといったことを認識できていないという事実も横たわります。

昇給の基準が分からない、昇格の基準が分からない。そんな環境で仕事をしろ、成果を出せと言っても、モチベーションや意欲が上がらないことは明白です。この会社でどうすれば成長できるのか、より高いポジションで仕事ができるのか、そのメッセージを伝えること(=成長予感)は非常に重要です。

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早期離職という観点から見つけられた、存在承認・成長実感・成長予感という3つの切り口ですが、これらは障がい者雇用の現実と課題にも直結するものだと考えられます。せっかく障がい者を雇用するのであれば、定着させ、育成し、戦力化するほうが理に適っています。ぜひこの3つの切り口から、現状を確認してみてください。

 


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この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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