目次
はじめに
新型コロナウイルスの影響、DXを始めとした働き方改革、ダイバーシティ取り組みに対する関心の高まりにより、在宅雇用が近年一気に注目され、導入が進み始めました。その一方で、障害者の在宅雇用には、慎重になっている企業も多いのも事実です。
・なぜ「障害者×在宅雇用」が必要なのか?
・「障害者×在宅雇用」の課題とは?
・その課題の解決策とは?(事例紹介)
以上の3点を本コラムではお伝えします。
1.「障害者×在宅雇用」は必須の時代に?
「障害者×在宅雇用」は必須の時代になってきました。
その主な要素は以下の4つです。
要素① 法定雇用率引き上げ
現在 | 引き上げ時(2.5%) | |
法定雇用率 | 2.3% | 2.5% |
必要雇用数 | 617,940人 | 671,675人 |
雇用実績 | 578,292人 | 578,292人 |
不足数 | 39,648人 | 93,383人 |
【参考】令和2年障害者雇用状況の集計結果(令和3年1月15日厚生労働省発行)より計算予測
表にある通り、民間企業の障害者雇用数としては、現状の法定雇用率2.3%で約4万人が不足している状態。
仮に法定雇用率2.5%に引き上げられた場合、約9.3万人の雇用数が不足することになります。
要素② 障害者新規求職申込者
【参考】令和2年障害者雇用状況の集計結果(令和3年1月15日厚生労働省発行)
グラフの通り、障害者の新規求職申込者は、
・身体障害者:減少傾向
・知的障害者:ほぼ横ばい
・精神障害者(発達障害者含む):急増、全体の約52%
となっており、精神障害者(発達障害者含む)が新規採用のメインターゲットとなります。
要素③ 就労移行支援利用者数
その就職を目指している多くの精神障害者(発達障害者含む)が利用している就労移行支援で就職準備(就労訓練)をしている人は33,485人です。
【参考】就労移行支援・就労定着支援に係る報酬・基準について(令和2年9月24日厚生労働省発行)
要素④:都市部と地方の就職率
都市部の就職率は地方と比べて約1/2程度となっております。
例えば東京では、10件の求人票に対して3~4名が就職していますが、鳥取では、10件の求人票に対して6~7名が就職しています。
【参考】令和元年度障害者職業紹介状況等(令和2年6月22日厚生労働省発行)
4大要素のまとめ
① 今後の法定雇用率引き上げにより、障害者雇用人数は約4万~9万人不足
② 新規障害者採用のメインターゲットが精神障害者(発達障害者含む)
③ 精神障害者(発達障害者含む)で就労訓練を受けている人は約3万人
④ 都市部の就職率は地方と比べて約1/2程度
以上、4つの要素より、 就労準備の整った精神障害者(発達障害者含む)を各社間で採り合うなど新規障害者採用競争は激化する一方で、現状はまだ採用が進んでいない地方採用(≒在宅雇用)がその市場に対応するための「有効な手段」であると言えます。
つまり「障害者×在宅雇用」は必須の時代になっていると言えます。
2.「障害者×在宅雇用」の課題
では「障害者×在宅雇用」を実施する際にどんな課題があるでしょうか?
主な課題は以下の3つと考えられます。
①業務創出、フロー構築
どの部署のどんな業務内容を、どんな業務管理体制やフローを構築し、どうやってセキュリティ面の安全性を確保して業務遂行するのか?
②採用
在宅で働ける障害者をどこでどうやって募集して、どのような選考フローや判断基準で見極めるのか?
③定着
在宅雇用によるコミュニケーション方法や、体調管理を含めたマネジメント方法はどのように実施するのか?
以上の3つが「障害者×在宅雇用」における主な課題です。
3.「障害者×在宅雇用」の成功事例
そこで、先に挙げた課題に対して、さまざまな施策を試行錯誤し、成功した事例を4つご紹介します。
① 業務創出
【T社の業務切り出し-成功事例】
≪直面した課題≫
全社を巻き込んで業務切り出しする予定が、全社的な在宅勤務対応の影響で後回しになり、進まなくなっていた。
≪解決方法≫
全社的な在宅勤務の影響で滞っていた業務(=経理の証憑業務)に着目し、業務代行を打診することで、新たな業務切り出しに成功。
≪成功のポイント≫
全社的な在宅勤務移行の影響で生まれた業務、滞っていた業務に着目した点。
※参照:Start Next!
逆転の発想で実現! 東京計器がコロナ禍で挑んだ業務切り出しと体制づくり
http://startnext.start-line.jp/archives/3836
【M社の業務切り出し&フロー構築-成功事例】
≪直面した課題≫
機密文書である契約書のデータ化という業務で、当然社外持ち出し不可。 在宅勤務での業務は遂行不可能という状況。
≪解決方法≫
社内で以下のフローを確立
1)契約書を1枚ずつめくる動画をスマートフォンで撮影
2)セキュリティ万全のクラウドサービスに動画データを保存
3)自宅に動画再生用と入力用のデュアルモニターを用意
≪成功のポイント≫
・画像ではなく動画ファイルを活用した点(画像ではデータが数百個になり管理困難)
・動画ファイルのため入力者の好みのスピードで再生可能
・デュアルモニターによる効率性向上
※参照:Start Next!
試行錯誤の末に実現!三菱地所プロパティマネジメントが挑んだテレワーク業務切り出しの軌跡
http://startnext.start-line.jp/archives/3805
② オンライン採用
【K社のオンライン採用-成功事例】
≪直面した課題≫
リアルイベントや対面選考でのみ、母集団形成や選考実施していた。
≪解決方法≫
・幅広い集客(募集)媒体を活用 ・採用基準(質問内容)の見直しと選考官への周知徹底
・オンライン適性検査(実技実習)のフロー確立と実施
・オンライン座談会、オンラインオフィスツアーの実施
≪成功のポイント≫
・徹底したオンライン活用により、量/質ともに改善
・面接用会議室確保問題の解決や選考スピード短縮化など副次的メリットも生まれた
※参照:Start Next!
ここまでやるからうまくいく!アクセンチュアが実践するオンライン採用手法
http://startnext.start-line.jp/archives/3798
③定着
【I社の定着(メンタルケア)-成功事例】
≪直面した課題≫
・在宅勤務や“まだら出社”による環境変化により体調面が不安定になる社員が発生
≪解決方法≫
・勤怠メール(始業、終業、休憩など)による状況把握
・個別チャットラインの開設・運用による相談窓口拡充
・独自のオンライン体調管理ツールの活用
・模擬業務による不調前後の課題発見と解決
≪成功のポイント≫
・オンラインツール活用によるコミュニケーション量確保と相互理解
・業務量や働き方(時間/日数など)の個別柔軟な対応
※参照:Start Next!
これからの障害者雇用のカタチ!IMAGICA GROUPが挑んだリモート支援の軌跡
http://startnext.start-line.jp/archives/3792
4.まとめ:「障害者×在宅雇用」は必須の時代へ!
本記事でも説明した通り、社会全体や障害者雇用独自のさまざまな要素が影響し、「障害者×在宅雇用」は必須の時代になりました。
まだ様々な課題はあるものの、先んじて取り組んでいる企業は試行錯誤を繰り返し、模索しながら、企業、障害がある社員、双方にとってベストな環境、フローを確立しています。
障害者雇用支援に特化して事業を行ってきたスタートラインでは、「障害者×在宅雇用」の他社事例のご紹介から、社内理解促進のために必要な資料のご案内、パッケージサービスだけではない『企業と障害者、双方にとってより良い障害者雇用の方法』をご提案しております。
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