こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。
先月は、精神障がいを持つ人に限ったお話ではありませんでしたが、入社時の処遇を決める際にポイントとなることについて、お話ししました。(前回記事:精神障がいを持つ人の雇用【3】~処遇を決める~ )
今日は、精神障がいを持った人を雇用した際の入社後の定着支援として、人事ができる施策について、お話をしていきましょう。
精神障がいを持つ人たちは、社会人になってから仕事や周りの人とのコミュニケーションがうまくいかない、あるいは過重労働などが誘因となって精神疾患を発症するなど、身体障がいや知的障がいを持つ人に比べると、過去に障がいを認識せずに働いた経験を持っている人が圧倒的に多いのが実態です。
こうした人たちの中には、過去の就労経験の中で、「会社の期待に応えよう」、あるいは「周りに負けたくない」という気持ちが強く、自分の限界を認識せず、知らず知らずのうちにコンディションを崩してしまった人が少なくありません。いわゆる自分に対する期待値が高く、その期待値に自分を近づけようとするあまり、頑張りすぎる傾向が強い人たちです。
人事としては、このような傾向を持つ人に対しては、会社が期待する姿を明確に伝え、本人が目指そうとする姿とのギャップを埋める【期待値調整】を行うことが肝要です。
具体的にお話ししていきましょう。
精神障がいを持つ人を雇用したら、少なくとも入社後1~2カ月は人事が定期面談を行うことをお勧めしています。
そして、その面談の中で会社と本人との間の【期待値調整】をしていきます。
会社が期待することとしてまず本人に伝えることは、
生活のリズムを整えて、
毎日決まった時間に出社し、決まった時間に退社すること
です。
得てして、早く仕事で成果を出そう、という気持ちが先行するものですが、会社がまず最初に求めるのは、就業の安定化だということをお話しします。
就業が安定すれば、安心して仕事を任せることができるようになり、徐々に仕事の幅や質が上がっていくものだということを併せて伝えて、本人の理解を促しましょう。
その上で、定期面談の度に、日々の生活パターン(起床時間、食事の時間や回数・内容、服薬、布団に入った時間、眠りについた時間等)に関して、具体的にヒアリングします。
もし、日によって生活パターンが大きく乱れているようなら、それを是正するように促していくことは言うまでもありません。
人によっては、プライベートな生活面にまで口を出されることに、抵抗感を示す人もいるかもしれませんが、私の人事としての経験上、人事担当者は、その社員の「母」になったつもりで見守る気持ちで、適切なおせっかいをやくのが良いように思います。
このように入社当初に会社が期待していることを伝え、【期待値調整】を行った次には、本人には自身の身体的・精神的なコンディションを定点観測することを促します。
具体的には、「自分にとってコンディションが良い状態を“100”とした場合、今日は身体的には“○”、精神的には“○”」という形で、日々振り返り記録するという方法をお勧めします。
これも定期面談の中でヒアリングしていくわけですが、特にコンディションが下がった時には、その要因として考えられることは何か?も併せてヒアリングします。
例えば、
- 職場の人間関係で気になることがあった
- 仕事でミスをしてしまった
などが要因として思い当たるのであれば、さらにその要因を探っていくことで、自身のコンディションに影響を与える傾向を掴むことに繋がります。
こうした自己分析のプロセスを通じて、自身のコンディションをコントロールするきっかけにできれば、これも安定的な就労への一助になります。
以上、精神障がいを持つ人を雇用した際に人事ができる施策についてご紹介しました。
いずれも、人事が実施する定期面談の場を使った施策ですが、この面談では、
- 何をヒアリングするのか?
- ヒアリングした内容から本人が何に気づき
- 何を今後に活かすのか?
ということを意識して、これを面談の「型」として、毎回この「型」に沿って面談を進めていくことをお勧めします。
次号も引き続き、精神障がいを持つ人の雇用に役立てていただける情報をお届けします。
梶原 温美(かじはら はるみ) オフィス温度28℃代表。 専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。 「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 問い合わせ先 Start Next!運営事務局 startnext@start-line.jp |
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。