Q:
合理的配慮の提供義務に関して、弊社はテナントビルに入居しており、そのビルはバリアフリー(トイレ・スロープ)に対応していません。実際に単独で改修は困難なのですが、そのような場合に車いすの方からのバリアフリー対応を求められた場合どこまで対応すれば良いでしょうか?
A:
合理的配慮の提供はケースバイケースになります。過重な負担に該当するか判断基準に基づいて判断し、過重な負担に該当しない範囲での対応が良いでしょう
2016年4月1日より雇用促進法が改正され、基本的には本人の求めに応じて合理的配慮が行なわければなりません、しかしながらその実施に伴う負担が過重である場合は除くとされています。
ここで、負担が過重であるか否かを判断するに当たっては、 次に掲げる要素を総合的に勘案しながら、個別に判断することとされています
以下、厚生労働省の合理的配慮指針より過重な負担の考慮要素を抜粋します。
(1) 事業活動への影響の程度
当該措置を講ずることによる事業所における生産活動やサービス提供への影響その他の事業活動への影響の程度をいう。
(2) 実現困難度
事業所の立地状況や施設の所有形態等による当該措置を講ずるための機器や人材の確保、設備の整備等の困難度をいう。
(3) 費用・負担の程度
当該措置を講ずることによる費用・負担の程度をいう。ただし、複数の障害者から合理的配慮に関する要望があった場合、それらの複数の障害者に係る措置に要する費用・負担も勘案して判断することとなること。
(4) 企業の規模
当該企業の規模に応じた負担の程度をいう。
(5) 企業の財務状況
当該企業の財務状況に応じた負担の程度をいう。
(6) 公的支援の有無
当該措置に係る公的支援を利用できる場合は、その利用を前提とした 上で判断することとなること。
以上より、今回のケースを想定すると以下のような流れで判断をすることになります。
判断手順
- バリアフリー対応を実施することによって事業の影響がどの程度あるか
- バリアフリー対応が施設の立地上、物理的に可能であるか。
- 可能である場合、スロープの設置にどのくらいのコストがかかるか。
- そのコストが設置者の財政規模にどのくらいの影響を与えるか。
結論として、今回のケースでは(2)の実現困難度の部分で対応ができるか否かが焦点となりそうです。
合理的配慮の実施としてユニバーサルデザインのトイレやスロープの設置がテナントビルより理解が得られ、テナントビル側が対応してくれる可能性もありますし、そうでない場合もあります。そうでない場合は過重な負担となりますので本人にその旨を説明し、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置の実施が求められます。
なお基本的には、負担が過重であるか否かの判断は、前述した判断要素を基本としてケースごとに判断していきますので、判断のための事例集を参考にしていくのが良いかと考えられます。
こちらの事例集につきましては内閣府にて現在作成しておりますのでご参考にしてください。
内閣府「合理的配慮等具体例データ集」
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。