Start NEXT!読者のみなさま、こんにちは。株式会社セプティメルスポーツの水上航太郎です。
リオパラリンピック閉幕から半年以上が経過し、リオの会場が大会後全く使用されておらず「負のレガシー」と化している、という報道をよく目にするようになりました。開閉会式の会場として大掛かりなショーが行われたマラカナン・スタジアムは廃墟同然。オリンピックで使用されたゴルフコースは草原となり、オリンピックパークもほとんど手付かず。選手村跡地のマンションは1割も売れていない等々、主催者の見通しの甘さや無責任さを批判するものがほとんどです。
これらは事実であり、大会前から指摘されていたことなので至極当然な批判だと思いますが、あくまでも「ハード面のレガシー」に関することであり、これを以て「リオのレガシープランは失敗に終わった」と結論付けることはできません。目に見えにくい「ソフト面のレガシー」はどうなのか、いくつかの事例を紹介したいと思います。
1つ目は、昨年10月にブラジルパラリンピック委員会内の組織であるブラジルパラリンピックアカデミーが主催した国際パラスポーツ会議。リオではなくベロ・オリゾンテという都市での開催でしたが、30か国以上から1100人が集まり、トレーニング手法やクラス分けなど様々なテーマでの講演が行われました。これによりブラジルの専門家・関係者は自国にいながらにして多くのパラスポーツに関する知見を得ることができたわけですが、このタイミングでの開催はやはりリオ大会あってこそのものでしょう。
続いては今年3月にサンパウロで開催されたユース・パラパンアメリカ・ゲームズ。南北アメリカ大陸の19か国が参加したユース世代の大陸選手権です。こちらも舞台はリオではありませんが、パラリンピック開催の経験が大会運営に活かされているのは間違いないでしょう。
最後に紹介するのは、他国NPC(パラリンピック委員会)との連携です。やはり今年3月に、チリ、エクアドル、ペルーとブラジルNPCとのパートナーシップ協定の期間延長が発表されました。以前より、人材の交流や大会運営ノウハウの共有等での協力がなされてきましたが、パラリンピック開催という唯一無二の経験をさらに他国とシェアしていくことになります。ラテンアメリカにおける大国であるブラジルですが、パラスポーツの分野でもリーダーシップを発揮していく意志の現れではないでしょうか。
3例とも「すぐにメリットがある」「レガシーが直接的に国民に還元される」ものではありませんが、パラリンピック開催という財産を中長期的に活用していくという意味では、正にレガシーのそのものと言えるでしょう。また、必ずしも開催地リオにこだわっていない点も注目すべきかもしれません。
約3年後に控えた東京大会に関しても、会場の建設費や大会後の採算などを中心に「負のレガシーが残る」という報道が絶えません。それはそうとして、より重視すべきなのはブラジルの事例のようなソフト面のレガシーではないでしょうか。目に見えず、時間がかかることばかりですが、例えば2030年に「東京で開催した結果がこういう形で現れたのか」と思えるようなレガシーが遺ることを願っています。
株式会社セプティメルスポーツ 水上 航太郎 1981年札幌市生まれ。 1993年のJリーグ発足をきっかけに、スポーツ観戦がライフワークの1つとなる。サッカー好きが高じて大学卒業後にバルセロナに渡り、現地で日本向けのライター職などをしながら3年スペインに滞在。帰国後はIT関係職に就きスポーツを趣味として楽しんでいたが、2013年に株式会社セプティメルスポーツを設立し現在に至る。 趣味は旅行とスポーツ観戦。最近特に好きなスポーツはアメフト、クリケット、ボッチャ。 株式会社セプティメルスポーツ パラタイムズ |
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。