スタートラインは人への”想い”と科学的根拠に基づいた理論によって支援しています

スタートラインは人への”想い”と
科学的根拠に基づいた理論によって支援しています

なぜ科学的根拠に基づいた理論が必要なのか

2009年に創業したスタートラインは、都心まで通勤困難な障害者が自宅から近い場所で働く、サテライトオフィスサービス(現:INCLU)から事業をスタートしました。当初は、身体障害者の採用が中心であり、ハード面の環境を整えることで安定就労を実現できていました。しかし、創業から4年目である2013年に入ると、精神障害者の採用が増加したことで、支援者の想いや経験に頼った属人的な支援では対応できず、支援者である当社の社員は疲弊していきました。

当時、精神障害者の支援を体系的に学べる外部機関はなかったため、職業リハビリテーションを系統的に理解・実践している人材を招き入れました。科学的根拠に基づいた職業リハビリテーションに関する理論・ツール・技法を用いた支援を全社的に導入することを決定し、2014年に障害者雇用研究室(現:CBSヒューマンサポート研究所)を設立しました。

それから現在に至るまで、当社独自の障害者支援ノウハウや、障害者をサポートする社員の研修体制、新たな支援技術を研究・開発し続けています。CBSヒューマンサポート研究所は、障害者雇用における社会課題の解決を通じて、持続可能な社会を実現するため、研究人材の育成、研究プロセスの確立、社外ネットワーク活用を進め、研究の質の向上を図っていきます。

Our Policy私たちが大切にしていること

01“人”へのこだわり

私たちは、障害者雇用の現場を支える社員を一番の強みと位置づけています。
根拠のある支援技術を身に着け、ホスピタリティ精神を持って支援することで、多様な人の活躍につながると考えます。

専門研修を通過した
毎年50名近くの支援社員を育成
有資格者も多数

充実した研修制度
国家資格への資格取得制度あり
階層別研修でより高い専門知識が身につく

支援技術をブラッシュアップ

日々の障害者へのサポートで
支援技術をブラッシュアップ

02科学的根拠に基づいた”専門技術”×”ICT”

行動が変容する応用行動分析学(ABA)、認知機能が向上する関係フレーム理論(RFT)、心理的柔軟性が向上する第三世代の認知行動療法(ACT)など、科学的根拠に基づいた支援技術をベースに、様々なツールを開発し、データベースにノウハウを蓄積することで、支援レベルの向上を図っています。

enable360の説明図

03実践⇔研究⇔連携の“サイクル”

250社・1,460名以上の障害者雇用現場、支援技術の研究開発・教育などを行う研究所、大学/研究機関/学会/など国内外の専門機関との連携によって、支援技術は磨き続けられ、誰もが自分らしく生きる社会を創造します。

支援サイクル

「Theory」「Technique」「Technology」を活用し、
支援技術を磨き続けています

Human Support Laboratory支援技術を支える研究所とは

2014年に、研究開発機関として障害者雇用支援研究室(現CBSヒューマンサポート研究所)を開設しました。

研究所は、大学や研究機関、国内外の学会などと連携することで科学的根拠に基づいた学問を取り入れ、サービスを運営する現場社員への教育・研修を行い、支援の現場で得られた知見をデータベースに蓄積することでさらに支援技術をブラッシュアップし、新たな支援技術の開発が行われるサイクルを大事にしています。

人の行動に着目し、文脈的行動科学(CBS)※の領域における研究・開発を行い、デジタル技術を活用をして、より広いフィールドで、人のQOLの向上、平和な社会の実現を目指します。

※Contextual Behavioral Science(CBS)の略。文脈という視点で様々な出来事を理解しようとする行動的な科学の在り方。心理的柔軟性を機能的に理解し、ACT(Acceptance&Commitment Therapy)を支援するための基本となる考え方。

研究開発領域

応用行動分析学
人の行動の原因を、周囲環境との関係の中に見出す手法。望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすようにすることが可能で、教育・スポーツ・リハビリテーション・企業コンサルティングなどの分野で幅広く取り入れられている。具体的には、ある行動の前後にあった環境を分析することで、その行動の目的を明らかにし、前後の環境を操作して問題行動を解消する。
Applied Behavior Analysis(ABA)の略。
ACT
ネバダ大学リノ校のS.C.ヘイズ(Steven C. Hayes)を中心に開発された、文脈的行動科学に基づく第三世代の認知行動療法と称される心理療法の1つであり、人の心の問題に向き合い、心との付き合い方を身に付ける技術。つまり、不快な思考や感情に上手く対応し、自身の価値に向かう行動を増やし、豊かで充実した有意義な生活を送れるようになること、ストレスへの効果的な対処法を学ぶことを目的としている。
Acceptance&Commitment Therapy(ACT)の略。
関係フレーム理論
人が環境とのやり取りから言語を獲得する方法に関する理論であり、人の言語行動の基礎となる考え方。
Relational Frame Theory(RFT)の略。
プロソーシャル
文脈的行動科学、進化科学、持続的コミュニティの経済学の3つを統合的に根拠にした、米国発の社会的行動変容のための最新の方法論。働く人それぞれが大切にする価値、利益と企業としての社会的価値、利益を統合し、ウィンウィンの協働関係を構築しながら、個と企業を持続的に発展、進化させるための方法。

活動実績

共同研究

  • 「精神障害者が働きやすい執務スペースのあり方」に関する共同研究
  • 「関係フレーム理論」に基づいた訓練ソフト「MMST」を活用した共同訓練-放課後デイサービスLino
  • 大学生を対象としたセルフコンパッションの講義内容とその効果-明星大学
  • 就労移行支援事業所利用開始から一般就労定着支援までのACTを活用した実践発表-社会福祉法人釧路のぞみ協会 自立センター
「精神障害者が働きやすい執務スペースのあり方」に関する共同研究における作業中と作業後の副交感神経活動量
※30代男性(自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動性障害)
個室空間の方が作業後、ストレスからの回復が早い傾向が見られた

学会発表

日本行動分析学会
  • 第39回年次大会
    「関係フレーム理論の応用的実践 -個人の心理的課題から世界の社会問題へ-」
  • 第36回年次大会
    「言語関係の機能的拡張に向けた等価性アセスメントとトレーニング」
  • 第35回年次大会
    「就労移行期の精神障がい者におけるセルフマネジメントスキル向上への介入について」
    「発達障害者の就労上の課題と脱フュージョンの効果 RGBの介入とIRAPを用いた効果に関する事例報告」など
日本職業リハビリテーション学会
  • 第48回愛知大会
    「職業リハビリテーションの分野におけるアクセプタンス&コミットメントセラピーの活用」
    〜多様な働き方を支える支援技法の充実に向けて〜
ACBS World Conference
  • ACBS World Conference 2022- Hilton San Francisco Union Square
    『Prosocial and Ideology』
  • ACBS VIRTUAL World Conference 19
    『成人のための日本語版関係フレームスキルアセスメントの関係と試行、及びPCA得点との相関の検証』『PEAKをもとにしたMMSTとPCA日本語版を用いた非定形発達児におけるRFSのトレーニングと評価』『AIM日本語版の作成と職業訓練中の成人に対するAIMの実践』など
  • ACBS World Conference13、15~17
ACT Japan
  • 2022年度 年次ミーティング
    大会企画シンポジウム 『データと語ろうCBSの実践と研究:現場での実践研究の最前線』(話題提供)
    職リハにおけるPBTをベースとした支援事例『EEMMグリッドを活用したこころの整理』
    PBTをベースとした支援事例『EEMMグリットを活用した多面的なこころの整理』
    知的・発達障害児における認知能力と適応行動の変化 ー関係フレーム理論に基づいたPC訓練による介入―
  • 2020年度 年次ミーティング
    『発達及び知的に困難を抱える児童を対象としたPEAK日本語版を用いた関係フレームスキルの評価及び訓練』
    『雇用可能性の向上を目的とした集団研修のオンライン実践における効果検証』
    『「強化子ストア」を用いた個人の行動変容と組織行動マネジメントに関する研究』など
  • ACBS VIRTUAL World Conference 19
    『成人のための日本語版関係フレームスキルアセスメントの開発と試行、及びPCA得点との相関の検証』『PEAKをもとにしたMMSTとPCA日本語版を用いた非定形発達児におけるRFSのトレーニングと評価』『AIM日本語版の作成と職業訓練中の成人に対するAIMの実践』など
  • ACT Japan 2015~2018年次ミーティング
サンフランシスコで開催されたACBS World Conference 2022でのポスター発表の様子
2022年度はリアルとオンラインのハイブリッド型で開催され、世界各国から参加者が集まった

研修・講演実績

  • 川口市就労シンポジウムでの講演実施-埼玉県川口市自立支援協議会

  • 障害者とともに考えるSDGsと共生社会-横浜国立大学

  • 多様な農福連携に貢献できる人材育成プログラムの提供-国立大学法人 千葉大学 環境健康フィールド科学センター

  • 看護職員を対象としたACTおよびセルフ・コンパッション研修-横須賀共済病院

書籍出版

  • 成功する精神障害者雇用 ~受入準備・採用面接・定着支援~ 第一法規

  • ACTマトリックス・カード(日本語版) 星和書店

  • こころがふわっと軽くなるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) -ガチガチな心を柔らかくするトレーニング 星和書店

その他活動

  • samhall(サムハル)社(スウェーデン)と 障害者雇用に関するセッション
  • Zayed Higher Organization(アブダビ首長国)と障害者支援の情報交換と現地視察
  • 明星大学心理学部 竹内康二教授と共同で、CBSに関する研究領域の拡大、共同研究者の開拓を目的としたCBS研究会を定期的に開催
    ※CBS研究会へのお問い合わせはこちら
samhall(サムハル)社(スウェーデン)と 障害者雇用に関するセッション
Zayed Higher Organization(アブダビ首長国)と障害者支援の情報交換と現地視察

研究所メンバー紹介

小倉 玄

研究所長

博士(医学)、公認心理師。
1994年東京都立大学工学部卒業後、アロカ株式会社(現株式会社日立製作所)にて医療機器の開発に携わる。
障害がある長女の出生をきっかけに株式会社スタートラインに入社。現場での支援を経験した後、CBSヒューマンサポート研究所にて、職業リハビリテーションのための新たなツール開発や支援技術の開発業務、社員の専門技術研修、企業向けの研修などに携わる。専門分野は応用行動分析学、ACTを用いた職業リハビリテーション。

刎田 文記

主幹主任研究員

立命館大学 哲学科心理学専攻 学士
明星大学大学院 人文学研究科心理学専攻 博士前期課程修了 修士
元障害者職業カウンセラー、公認心理師

大学院で応用行動分析を学んだ後、障害者への職業リハビリテーション分野における応用行動分析的アプローチの展開を目指し、日本障害者雇用促進協会(現 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)で、障害者職業カウンセラーやNIVR研究員として20年間勤務。NIVRでは高次脳機能障害や精神障害に対する職業リハビリテーション技法の研究開発に従事し、「職場適応促進のためのトータルパッケージ」を開発を行った。現在は、文脈的行動科学に基づく、心理的アプローチであるACTや関係フレームスキルトレーニングの開発、グループの協働と繁栄を促進するProsocalアプローチ等について、先駆的・実践的な研究開発活動に幅広く取り組んでいる。

菊池 ゆう子

主任研究員

行動分析学で「世界平和」と「強化で成り立つ世界」を目指す。INCLUの現場で障害者就労支援の経験を経て、科学的根拠に基づく支援をより現場で使いやすく磨き上げるため研究に従事。現在は社内外向け支援技術研修の講師やコンテンツ開発、ACTや関係フレーム理論のコンテンツ開発・介入効果などの研究を担当。公認心理師。

下山 佳奈

研究員

関西学院大学 教育学部臨床教育学科 学士
神戸女学院大学 人間科学研究科人間科学専攻 博士前期課程修了

年齢や性別、人種や障害の有無にかかわらず、誰もが自分の能力を発揮して生きやすい社会を実現したい。就労移行支援事業所での支援経験を経て、現在はINCLUやIBUKIの現場社員へサポート、社内外の支援技術研修、新しい支援技術の研究及び開発を担当。臨床心理士、公認心理師。

香川 紘子

研究員

帯広畜産大学 畜産学部環境科学学科 学士
東京大学大学院 総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系生命・認知科学コース博士課程修了 博士(学術)

動物のコミュニケーション行動の機能、進化、メカニズムに着目し、行動生態学的、神経行動学的研究に取り組んできた。JSPS、北海道大学、東京大学、JST、帝京大学の研究員を経て、現在は刺激等価性・関係フレームに基づく言語訓練の開発及び実践を担当。

岩村 賢

研究員

明星大学人文学部心理学科 学士
明星大学大学院 人文学研究科心理学専攻 博士前期課程修了

大学院にて応用行動分析を学ぶが、研究や支援の道で身を立てていく自信が持てず、異なる分野で就職したものの、夢をあきらめきれず、現在は応用行動分析や関係フレーム理論に基づいた支援ツールの開発及び試行を担当。公認心理師。

外部パートナー

竹内 康二

明星大学心理学部心理学科・教授

博士(心身障害学)、公認心理師、臨床心理士、明星大学心理相談センター長

専門は応用行動分析学。一般的な対応では改善が難しい行動上の問題に対して、応用行動分析学に基づいた方法で解決を試みている。「すべての行動には意味がある」という観点から、一般的に「なぜそんなことをするのか分からない」と言われる行動を分析することを目指している。特に、社会的マイノリティとされる人たち、例えば障害児者とその家族などが生きやすい「多様性を認める社会」のあり方を探究している。

高谷 さふみ

社会福祉法人 釧路のぞみ協会 理事

北海道保育専門学校を卒業後、幼稚園教諭、障害者入所施設指導員、北海道障害者職業センター(ジョブコーチ)の勤務などを経て2,006年に社会福祉法人 釧路のぞみ協会自立センターに入職。
現在はACT、トータルパッケージ、BWAPPⅡ、ESPIDD等を活用し障害者の就労支援を行っている。
また厚生労働省 障害者の就労を支える人材育成・確保に関するワーキンググループ専門アドバイザー、北海道障害者就労推進委員、釧路短期大学幼児教育科非常勤講師としても活動。
著書(共著):仕事がしたい!発達障害のある人の就労相談(明石書店)他

光定 博生

国家公務員共済組合連合会横須賀共済病院 精神科部長

精神保健指定医、精神科専門医、一般病院連携精神医学専門医(精神科リエゾン専門医)、医師会認定産業医
2004年東京医科歯科大学医学部医学科を卒業後、多摩総合医療センター精神科医員、東京医科歯科大学医学部附属病院精神科助教・病棟医長、東京都立墨東病院神経科医長、東京都保健医療公社荏原病院精神科医長などを経て、2020年4月より現職。精神科の通院および入院患者の診療、リエゾン・コンサルテーション、病院職員のストレスマネジメント教育などにACTを活用している。