障がい者に残業はさせてもいいのか?法律と配慮

「障害者雇用促進法」における、合理的配慮について考える際、障がい者への残業をどう扱っていいのか、迷ってしまうという方は少なくないはずです。しかし、障がい者への残業が、配慮の欠けた指示になるのかどうか、どのような視点で考えるべきなのでしょうか?

労働基準法における36協定

残業にもルールがあり、それはすべて従業員に適用されるルールです。基本的には、労働基準法において、1日8時間、週40時間を超えて労働させることは禁止されています。この法定労働時間を超えて、社員を働かせた場合、労働基準法第119条に基づき、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

ただし、時間外労働や休日労働には、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれる、労働基準法第36条に規定されている内容を、労使で締結し、労働基準監督署に届け出ることで、残業が可能になります。

この協定により、1日、3ヶ月以内の期間、1年間それぞれで、残業時間の決まりがあります。1日内で上限はありませんが、1ヶ月で45時間、なおかつ1年で360時間を超えない範囲で定めることになっており、36協定で決められた、これらの残業時間を超えると、違法となります。

合理的配慮の義務と残業

障がいを持つ従業員であっても、残業をさせてはならないといった決まりはありません。しかし、残業に関するルールをしっかり守ること、これが大前提です。とはいえ、36協定の目的が、経営者側にとって、時間の融通をきかせるものだという認識は避けてください。

たとえば、脳・心臓疾患の場合は、「時間外労働が1ヶ月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心疾患発祥の関連性が徐々に強まり、発症前1ヶ月に約100時間、または発症前2~6ヶ月にわたって、1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症の関連性が強いと評価できる」との判断が出されています。(参照:http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

障がいと残業時間に関しては、直接的な関係はないかもしれませんが、障がいと精神的・肉体的な健康面には関係がある場合も多く、それらの健康面と労働時間に関しては、十分に配慮する必要があるといえます。とくに、精神障がいの場合は、本人が心の状態を常に一定に保てるとは限りません。残業をすることが、治療や継続勤務に悪影響を与えないかどうかは、本人との話し合いを基本とし、注意深く判断する必要があるといえるでしょう。

障がい者雇用は残業対策になる!?

残業をする必要がある、という状態にも焦点を当ててみましょう。それぞれの職場の事情や、顧客とのスケジュールを考えると、時期によって必要になる業務時間が変わってくる場合もありますが、残業の原因が、業務の効率にある場合もあります。

とある企業では、アスペルガー症候群の従業員を採用するにあたり、曖昧な指示を避け、やるべきことを効率的に指示するよう取り組んだところ、社内全体にその意識が浸透し、結果業務を効率的に行えるようになり残業が減ったというケースもあります。

また、コミュニケーションは苦手でも、特定のスキルにおいて非常に優秀であったり、単純作業のスピードが高かったりする障がい者の方も多いので、各々の能力を見極め、上手に役割分担ができれば、業務全体の効率を上げ、従業員全体の残業を減らすことがきるかもしれません

障がい者に残業をさせてはいけない、という決まりはありませんが、すべての従業員の残業は、配慮を含めるべきことであるといえます。残業となればその分経費がかさむのも事実ですから、それぞれが持つ能力を把握し、かつ業務全体の効率を上げるような人事を行い、できるだけ残業のない職場を作ることが理想的といえるでしょう。



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この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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