この記事のポイント
- 「障がい者に適当な仕事」は障がいの内容を知らずに決められない
- 採用のために障がい者ひとり一人の特性、スキル、意欲など個別に把握することが重要
- 障がい種別だけでなく、その内容、程度などは個人でさまざまであり、一括りに考えない
厚生労働省「障害者雇用実態調査」によれば、雇用側の課題として「会社内に適当な仕事がない」という回答は、身体障がいで77.1%、知的障がいで83.5%、精神障がいで78.9%と非常に大きな割合を占めています(平成20年度)。
障がい者の方が企業で従事する業務やポストを開発する際には、雇用者の障がいの特性や状況を知る必要があります。今回は、雇用側が当然知っていなければならない、障がい者の種別について紹介したいと思います。
障がいによって向いている仕事や向いていない仕事はない
障がい者の方に行なって頂く業務内容について独立行政法人高齢者・障害・求職者雇用支援機構から発行されている「はじめからわかる障害者雇用 事業主のためのQ&A集」の前段部分を抜粋して紹介します。
Q.障がい者をどのような職務に従事させたらよいでしょうか
A.一人ひとりの状況に応じて職務を決めます。
まず、「障がい者に向いている仕事」「向いていない仕事」というものはないと考えたほうがよいでしょう。各障がいの特性により不向きな仕事もありますが、障がいの種類や程度だけで決めるのではなく、一人ひとりの障がい状況に加えスキルの習得状況、本人の希望・意欲などから総合して決めていくことがよいでしょう。
(出典:独立行政法人高齢者・障害・求職者雇用支援機構から発行されている「はじめからわかる障害者雇用 事業主のためのQ&A集」)
実際、障がい者といっても大きく身体障がい、知的障がい、精神障がいの3種類に分類され、そして、これらの障がいも非常に細かく分類されます。以下に一例としてまとめます。
障がいの種別のおもな分類
視覚障がい | 全盲、弱視、視野狭窄など |
---|---|
聴覚言語障がい | 聴覚、平行機能、音声又は言語など |
肢体不自由 | 上肢、下肢、体幹障害、脳病変による運動機能障害(脳性まひ)など |
内部障がい | 心臓機能、腎臓機能、呼吸器機能、膀胱または直腸の機能、小腸機能、免疫機能など |
気分障がい | 鬱病、気分変調障がい、双極性障がい |
---|---|
統合失調症 | – |
不安障がい | 適応障がい、強迫性障がい、社会不安障がい、パニック障がい |
その他 | 解離性障がい、PTSD、睡眠障がい、認知症、摂食障がい、薬物依存症、性同一性障がい、てんかん、パーソナリティ障がい |
発達障がい | 自閉症、広汎性発達障がい、学習障がい(LD)、注意欠陥多動性障がい(ADHD)など |
さらに各障がいは、障がいの程度により身体障がいであればもっとも重度から軽度まで、それぞれ1級~7級、知的障がいであればA(重度)、B1(中度)、B2(軽度)、精神障がいであれば1級~3級と分類されます。
このように障がい者と一言で表現しても実に多様な意味を含んでいるのです(知的障がいの等級に関しては自治体によって分類が異なります)。
そこで、「障がい者の方が行う業務」とひとことに言っても、その障がい者は身体障がいを指すのか、知的障がいを指すのか、精神障がいを指すのか、さらに身体障がい、精神障がいのどの障がいに該当するのか、また各障がいの程度はどのくらいなのか、これらの状況によりその業務内容も大きく異なるのです。近年では職場環境の改善や支援機器の導入、適切な教育訓練により、障がい特性上、不向きだと言われていた職種に従事しながらも活躍する障がい者も数多くいます。
まとめると、障がい者の方の業務を社内で創出する場合、障がい者という言葉の中に非常に多くの障がいが含まれているので、最初にどんな業務が出来るのかを想像するのは困難です。それぞれの障がい特性を考慮することは重要ですが、障がい特性は一人ひとり異なります。よってまずは障がい者の方に行って頂く業務を考えるのではなく、社内にどんな業務があるのかを考え、そこから求職者のマッチングに備えることが必要です。
次回はこの続編として、障がい者の職域開拓について紹介します。
【参考】独立行政法人高齢者・障害・求職者雇用支援機構
「はじめからわかる障害者雇用~事業主のためのQ&A集~」
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。