平成28年4月に、「改正障害者雇用促進法」が施行され、雇用率の達成や、合理的配慮の提供義務などが、各企業に課せられています。「雇用」といえば、文字通り雇うことですが、障がい者をただ雇うことを、障がい者雇用のゴールと考えてよいのでしょうか?
中途退職者の多い障がい者の現実
人間は、自らの経験と知識を参考にして、コミュニケーションを円滑にしようとします。しかし同じ経験をしたことがなかったり、片方が当たり前と思っていることでも、片方にとってみると当たり前でなかったりする場合があります。
お互いに悪気はないのに、意志疎通がうまくいかったりすることもあり、障がいを持っていない人のほうが、多い職場において、なかなか自分のしてほしい対応を求めることもできず、相談もできないまま自信をなくし、退職してしまうといった事例も珍しくはないようです。
たとえ、合理的配慮のうえで、必要な設備や、身体的な援助をしてもらっていたとしても、職場の一員として、仲間として、長く働き続けるには、それ以上のことが求められるケースも少なくありません。
「合理的配慮」を積極的に追及する必要性
「合理的配慮」とは、単純に言えば、持っている障がいを、できるかぎり帳消しにできる措置を講じ、健常者と同じスタートラインにたって、業務に専念できる状態にすることです。障がいにより、その配慮の仕方はさまざまですが、事業主にはその配慮義務が、法律で課せられています。
ただし、合理的配慮において、もっとも大切なのは、そのプロセスです。障がい者「本人の意思」を尊重し、話し合い、意志疎通し、なにが必要で、なにが必要でないのかの情報を、職場で共有することに努めなければなりません。
もちろん、状況がずっと変わらないとも限りません。経営状態や、運営方針などにより、職場の人間関係も変われば、業務内容に変更が求められるかもしれません。なにより、障がい者本人の身体や精神に、変化があるかもしれません。
ただ単に、「点字機能を用意した」「スロープを設置した」というだけでなく、移り行く現状を、定期的に確認し、いま必要なことを、積極的に追及していく必要があります。
障がい者自身が選択できる社会
雇用された障がい者が、長く働けるよう、積極的な合理的配慮を追求し、相談窓口などを設けたり、各種助成金を利用し、必要な設備を用意したりするなど、会社側にはできることがたくさんあります。
もちろん、ビジネスに絶対が無いのと同じように、それらの配慮や取り組みが、必ずしも良い結果になるとは限りません。それでも、障がい者にとって、どのように働くかを選ぶ機会を提供し、意思を伝えることができるというのは、障がい者の人生において、非常に大きな意味を持つことなのです。
障がい者雇用のゴールは、単に雇用することや、とりあえず設備を用意することではありません。合理的配慮のもと、障がい者本人の意思も踏まえて、継続的に業務に専念できる環境を提供し、ひとりの労働力として力を発揮しながら、最後まで仕事をまっとうしてもらうことが、本当のゴールといえるのではないでしょうか。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。