障がいを持っているがゆえに、それが一般的なマナーだと知りえないケースは多々あります。もちろん障がい者本人に悪気はありませんが、多くの場合、受け取る側の印象が、そのままその人の印象になってしまうことも少なくありません。とくに耳が聞こえない、聞こえにくいといった、聴覚障がいの場合、ビジネスマナーという点で問題が発生するケースがあります。
意外と気付かない聴覚障がい者の問題
聴覚障がいと一言に言っても、その症状はさまざまです。生まれつき全く耳が聞こえない場合もあれば、事故で音を失ってしまったり、補聴器があればわずかには聞こえる、片耳だけが聞こえないなどがあります。
そういった聴覚障がい者が、職場で起きやすい問題には、以下のようなものがあります。
- 聞いて学ぶ機会が乏しいため、敬語の使い方がわからない
- 電話の呼び出しや、廊下を移動中に声をかけても応えられない。
- ちょっとしたニュアンスが伝わりにくく、仕事上のミスとされてしまう。
- 会議に出ても、資料だけでは理解することができない。
- 口の動きを見たいため、相手にじろじろ見ていると思われる。マスクをしているとわからない。
ビジネスにおいては、ひとつ、ひとつの細かな部分で、敬語やへりくだった態度、表現といったマナーも大切です。しかし、耳からの情報が取得できないゆえに、聴覚障がい者にとっては、このマナーというものが、大変難しい問題となってしまいます。
聴覚障がい者にとって必要なこと
たとえば、ノックひとつにしても、耳が聞こえないなら、誰かが訪ねてきても、それだけではわかりませんし、コミュニケーションをとるときでも、聴覚障がい者は向き合って口や表情から、情報を読み取る必要があります。一般的にはじっと見つめたり、横に並んで話すとき、横目でみたりは失礼にあたるかもしれませんが、聴覚障がい者にとっては必要なことなのです。
そのため、聴覚障がいを持つ従業員とコミュニケーションをとる場合は、必ず顔が視界に入るよう心掛けたり、何かの合図を送るときは、動きと一緒に伝えたりする必要があります。また、しっかり伝わっているかどうか、しっかり確認することや、明確な指示を書いたメモを残してあげたりすることも、円滑な業務を進めるために必要なことだと言えるでしょう。
聴覚障がい者の、ビジネスマナーに関する取り組み
一方で、マナーに関してはどう取り組む必要があるでしょうか。聴覚障がい者でないなら、マナーがなっていないと、単純に指導することができるかもしれませんが、耳が聞こえない場合は、聞こえないなりのマナーを、一緒に考えて教えていく必要があります。
まず取り組めるのは、メールなどの文章上のマナー。「これが間違っている」という教え方ではなく、正しい例文を見せたうえで、表現をひとつずつ丁寧に教えていきましょう。文章を通して指摘していくことで、言葉使いなども一緒に学ぶことができます。
また、聴覚障がいを持っている側の人が、しっかりと口や表情を見る必要があることを、相手に伝えることも、すぐにできるマナーのひとつです。相手にとっても、必要なことであるとわかるなら、不快に感じる可能性が低くなります。
聴覚障がい者にとって、一番起こりやすいのが、職場での孤立。ただそれは、聴覚障がい者だから、というわけではなく、周りの人間が、ふさわしいコミュニケーションをとれていないのが原因です。正面で向き合って話すこと、確認すること、メモを残すことなど、耳が聞こえていれば、つい簡略化してしまいやすいことを、疎かにしない心がけが大切です。しっかりとコミュニケーションが取れるようになれば、ビジネスマナーも少しずつ覚えていくことができるはずですよ。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。