ハンデを持っている障がい者が、周りの人と同じように働き、同じように評価を受けることができるのは大切なことです。それと同時に、ミスをした場合や、トラブルを起きた場合に、しっかりと指導をして、成長していくことができるのも大切なこと。しかし、障がいがあることに躊躇して、どのように指導したらよいのか、難しく思っている上司や教育担当者も多いようです。
差別や虐待にならない? 障がい者の業務ミスの対応は?
ミスをしたり、トラブルがおきたときには、例外なく「原因」があります。コンピューターのエラーなどではないかぎり、多くは、確認不足や連絡の行き違い、勘違いなど、人員的なミスが多いものです。そのため、普通の一般従業員には、「どうして確認しないのか」、「しっかり覚えなさい」というような叱咤激励の言葉で指導するでしょう。
ところが、障がい者の場合は、普段から「合理的配慮」が必要であり、なにが差別にあたり、なにが差別に当たらないのかが曖昧で、果たして他の従業員と同じ言葉で指導をしてよいのかどうか、迷ってしまう上司や教育担当者が多いようです。
とくに、発達障がいや精神障がいの場合、「どのような部分が障がいなのか」が見えにくく、学習スピードが遅い、応用ができない、融通が利かない、勝手な解釈をして、同僚とのコミュニケーションがうまくとれないなどがあります。しっかりと業務をこなしてもらうには、改善させる必要があるとはいえ、「障害者虐待防止法」で禁じられているような、心理的虐待などに抵触しないよう注意しなければなりません。
「障害者虐待防止法」から考える、間違った指導方法とは
精神障がいであろうと、身体障がいであろうと、生まれつき持っている障がいや、治療に時間のかかる障がいは、自力ではどうすることもできません。そのため、「障がい害を持っているからミスをするんだ」というような言葉は、「障害者虐待防止法」における、「障がい者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応、または不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動」と定められている、「心理的虐待」に抵触する可能性が高いと言えるでしょう。
確かに、健常者と同じようにできないのは、障がいが原因かもしれません。それでも、ミスをしたり、トラブルになった直接的な要因は、「確認をしなかった」、「応用ができなかった」、「うまく連絡ができていなかった」など、普通の人がしてしまうミスの場合と同じです。
障がいを持っているからミスをするのではなく、障がいを持ったうえで、必要な作業ができていなかったためにミスが起きます。大切なのは、その必要な作業について指導することです。
そのため、障がい者自身が、障がいを持っていることに劣等感を持ってしまう、ショックを受けてしまわないよう、冷静に言葉を選ぶ必要があるでしょう。また、当然の事ながら、軽度であっても、身体的な暴力や、拘束、必要な道具の使用を制限するなどといった行為も、「障害者虐待防止法」に抵触します。
選択肢を広くし、一緒に考える
たとえば、発達障がいの場合、曖昧な言い方だと、上手く伝わらないことが多々あります。「午後にいるから、これ、なるべく早くおねがい」と言うと、普通であれば午後の業務開始時間までには仕上げる必要があると判断し、優先的に作業を始めるかもしれません。ところが、障がいであると、「お昼にやればいいのかな?」と、勝手な解釈をしてしまうケースもあります。
このような場合、「これこれを○個、○時までに」というような、具体的な指示が必要です。また、作業を始める前に、具体的な内容を把握できているか、指示の確認をとるようにさせる、などの対策もしておくといいでしょう。
これは、発達障がいの一例ですが、「発達障がいにより、勝手な解釈をしてしまうこと」を責めるのではなく、ハンデがあるからこその対策を取り、それを守らせるという指導方法は、他の障がいにも適応することができます。
大切なのは、しっかりと仕事がこなせるように、いろいろな方向からアプローチをすることです。「障がい者本人にここを改善させなければならない」と、硬い思考をなるべくせずに、柔軟に考える必要があるでしょう。
職場で本人の話をよく聞いて、周りの従業員も含めて、情報を共有しましょう。「○○は確認した?」というような、たった一言の声かけだけでも、大きく改善する可能性があります。
効率よく仕事をするためには、できるだけ簡略化したいと思うかもしれません。そして、周りの従業員が普通にできていれば、できない障がい者が余計に目立ってしまうでしょう。それでも、根気よく、丁寧に指導する必要があります。
障がい者全員に通用する、指導方法の方程式があるとは思わないようにしましょう。ひとりひとりの状態をよく把握し、本人の話をよく聞いて、柔軟かつ丁寧な対応をしていけば、どのような障がいをもっていても、スムーズに仕事ができるようになっていくはずです。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。