障がい者を雇用するにあたって、環境を整える企業全体としての取り組みも重要ですが、実際に現場で共に仕事をすることになる同僚や上司、先輩の役割は、さらに重要なものとなります。現場で共に働く人たちは、どのようなことを心がけるべきなのでしょうか。
一歩間違えれば差別・虐待に!?
働きはじめた障がい者が受けやすい差別・虐待について例示してみます。
- 「能率がわるい」「仕事が遅い」といわれ給与を減らされる(心理的・経済的虐待)
- 雇用者には理解されていても、従業員からのいじめがあった(心理的・肉体的虐待)
- 仕事の質が低いことから、単純作業を大量に割り当てられる
- 聴覚障がい者の社員が、上司から仕事を評価されたことに対して、健常者の同僚が「聞こえないくせに生意気だ」と悪態をついた
これらは、一見極端な例に見えるかもしれません。しかし、精神状態や経営状態に余裕がなくなってくると、知らず知らずのうちに、これらの差別に近いことが起こります。とくに、発達障害など、怠惰により能力が低いのか、障がいによるものなのかの判断が難しい場合ので、注意が必要です。
上司や経営者ができること
あるエンジニアの男性はプログラミングの能力は高く、プロジェクトリーダーに任命されました。しかし、リーダーとしての仕事をするには多くの問題を抱えていました。本人は、好きなプログラミングができればよいと考えていましたが、リーダーには顧客への対応や、メンバーの仕事の管理など「人と接し、人と仕事をうまく調整する能力」が求められます。しかし、この男性には障がいの特性上その能力が欠如していました。
この男性は、自分の意見を曲げられない、相手の要望を取り入れられないといったことが目立ち、クレームも殺到しました。一方で得意なプログラミングに関しては、非常に細かく突き詰め、他人に対するミスの指摘も必要以上だったようです。結局、部長から「柔軟な対応をするように」との指導を受けていたにも関わらず、顧客との関係は壊れてしまい、本人も次第に仕事を休みがちになってしまいました。
この事例での問題点は、上司が「曖昧」な指導しかしていなかったことでしょう。先述したように、発達障害やパーソナリティ障害といった、目には見えない障がい者に対しては、事態が決定的になるまで、問題のある状態が続いてしまう可能性もあります。指導する立場にある上司や経営者側は、働き始めた時期以外にも、他の従業員とのすれ違いや、業務上の違和感に敏感でなくてはなりません。特に注意したいのは、障がいの影響で上手くできないことに対して、それを厳しく糾弾してしまうことです。健常者である従業員と同様、基本的には自立した判断を求めつつも、その能力を見極める必要があります。
同僚や先輩ができること
一方で、同僚や、職場の先輩としてできることはなにがあるでしょうか。同僚や先輩が、障がい者を援助するうえで、上司や経営者と違うのは、より近くで本人を観察できる点です。そのため、「結果」だけを目にすることの多い上司に、その「過程」がどのようなものであったかを報告できるかもしれません。
- 与えられた指示やアドバイスにどう反応したか
- 最近同僚の間で、本人がどのような評判を受けているか
- 表には出ていない問題ではあるが、実はフォローが必要なときがある
など、肌で感じやすい事柄に敏感でいれば、周りとの違いに気づきやすいかもしれません。また、障がい者として一応は受け入れられているものの、同じ職場の全員が、その能力や、フォローの仕方に納得しているとは限りません。くすぶっている問題を、あえてはっきりさせて、どう取り組み、改善していくかが大切です。そうすることによって、職場での差別や、知らぬ間に差別と同じような扱いをしてしまう、などいった事態を防ぐことができます。
ただ単に、障がい者を雇用しているというだけでは、障がい者を受け入れている職場だとはいえません。障がい者本人はもちろん、周りの従業員も含めて、すべての人間が快く働ける環境が整って始めて、障がい者を受け入れている職場といえるのです。そのためには、発達障害や、パーソナリティ障害を持っている従業員には、具体的な指示を出す必要があります。本人が混乱しないよう、箇条書きに書いて渡すなどの方法もよいでしょう。障がいと一言にまとめても、その事例はさまざまです。それぞれの能力を見極め、適切な指示、仕事を与えながら、教育していくことが大切です。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。