精神障がい者を雇用する!事例で学ぶ職場での接し方とコミュニケーション

2019年4月より「働き方改革関連法」が施行されてから1年が過ぎました。企業の人事担当者やダイバーシティ担当者には今も、多くの対応が求められています。障がい者雇用はまさにその筆頭と言えるのではないでしょうか。

障がい者雇用を行うにあたり、フェーズは大きく3つに分けられます。

1:受け入れ部署や業務の検討
2:人材の採用
3:安定して長期的に活躍してもらう

現在の障がい者新規求職者のうち、精神障がい者は約78,000名というデータがあります。これは10年前と比べると約10倍に増えており、企業が障がい者雇用を進めていくにあたり、精神障がい者を受け入れるということが当たり前になっています。

しかし採用してみたものの

  • 勤務を始めたら面接時とイメージが異なる
  • 職場での接し方やコミュニケーションがうまくいかない

などのお悩みがあるのではないでしょうか?
また、新たに障がい者採用を行うにあたり、どのようなポイントに注目していこうか悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、

  • 精神障がい者を雇用する際にどのようなポイントに注目するべきか
  • 職場での接し方やコミュニケーションをどのようにすればいいか

について、事例を用いてご紹介していきます。

目次


注意するとすぐに休んでしまうAさん、あなたならどうしますか?

ここからは実際にご自身がこの方を雇用していたら、と考えながらぜひ読み進めていただければと思います。

・あなたが勤めているA社は、福祉関連のシステムを作っているIT企業です
・従業員数は500名、新卒を毎年30名程度採用しています
・今までA社は、身体障がい者を中心に雇用していました
・2019年8月に、はじめてハローワーク経由で精神障がい者を採用しました
 ∟Sさん(仮)(34才/統合失調症)
・Sさんは総務部で庶務として週5日のフルタイムで勤務しています

《A社の総務部のお悩み》
Sさんがミスをしたとき、注意をするとすぐに落ち込んでしまいます。そして翌日必ず欠勤してしまいます。人間なのでミスをすることはあります。しかし注意しただけで休まれてしまうと、勤務の上で困ります。今は簡単なお仕事しかお願いしていないのですが…。
どうすればいいのでしょうか?

注意するとすぐに休んでしまうので、簡単なお仕事だけしかお願いすることが出来なくなっています。

では同時に、Sさんはどのようなお悩みを持っているのでしょうか。

《Sさんのお悩み》
注意されると自分はだめな人間なんだ、と思っていまい、気分がとても落ち込んでしまいます。また、ミスを繰り返していたせいで、今は任せてもらえる仕事がほとんどなく、勤務中手持無沙汰です。皆が忙しくしているのに自分だけ仕事がないとさらに落ち込みますし、仕事に対してもモチベーションが下がっています。

Sさんはこのように悩んでいるようですね。

皆様がA社の総務部の方だったら、もしくはSさんを採用した障がい者雇用担当者だったら、Sさんとどのように接していくのがよいと思いますか?

採用時に5つのポイントを確認していますか?

総務部とSさんのお悩みを解決するためには、採用のところから振り返ってみましょう。

Sさんを採用する際、皆様だったらどんなポイントを見て採用をしますか?年齢、職歴、資格の有無等々…様々ありますが、障がい者雇用を行う上で確認する5つのポイントがあります。

1:病気の発症経緯
統合失調症のSさんは一体どのような状況で病気を発症したのでしょうか。
2:通院の有無
現在通院は行っているのでしょうか。
3:服薬の状況
薬を服薬しているのであれば、きちんと服薬出来ているでしょうか。
4:安定期の状況
症状が安定しているときはどのような状態でいるのでしょうか。反対に、体調を崩す前兆やきっかけはあるのでしょうか。
5:ソーシャルサポート
気分が落ち込んだ時や体調を崩したとき、どのような方に相談出来るでしょうか。

また、障がい者枠での採用ですので、本人の能力などももちろんですが、上記の『障がいについてのこと』もしっかり面接や入社時にアセスメントを行うことが大変重要です。

例えば病気の発症経緯が、上司に強い叱責を受けたことでの発症だったら、それが落ち込んでしまう理由ということもあるでしょう。もしくは毎日飲んでいた薬を、症状が安定しているから飲んだり飲まなかったりして、不安定になりやすくなってしまうことなども考えられます。

事前にきちんと情報を得ておくこと、これは大きなポイントです。

簡単なお仕事。それは誰にとって『簡単』ですか?

A社の総務部は簡単なお仕事しかお願いしていないということですが、その『簡単』というのは誰にとって簡単なのでしょうか?

総務経験が1年ほどあれば出来る簡単なお仕事でしょうか?もしくはタイピングが早い人であれば簡単なお仕事でしょうか?

A社は福祉関連のシステムを作っているITの会社です。IT業界では簡単なことでも、異業種から転職してきた人には全くわからないでしょう。

ましてや総務部ではじめて働くのであれば、Sさんにとっては簡単なことではないかもしれません。さらに、Sさんにとっては簡単な仕事だと思っているけれども、業務指示が曖昧なため簡単だと思えなくなっていることもあるかもしれません。

そのため、きちんと双方で同様の理解が出来ているのか、指示をどのように伝えると齟齬がないか確認していくことが大切です。

これは障がい者だけに言えることではありません。企業で働くからには、伝え方や確認方法は障がいの有無に関わらずしっかりと確認しましょう。

注意されると休んでしまう。Sさんはそれで問題が解決出来ているのでしょうか?

Sさんは注意されると気分が落ち込んで、休んでしまいます。

仕事をする→ミスをする→注意される→気分が落ち込む→休んでしまう

もしかしたらこんな思考のルーティンが出来ているのかもしれません。ではミスをしないために行っていることはあるのでしょうか。

例えば行った業務に対して確認をしていないことで、ミスとなり注意されているのだとしたら、業務を行ったらきちんと確認する、ということを徹底したらどうでしょうか。

仕事をする→確認作業を必ずする→ミスをしなくなる→注意されなくなる→落ち込むことなく仕事を続けられる

大変単純ですが、上記のようになるでしょう。

一つ行動を変えると結果が変わります。こうなれば総務部もSさんも、双方の悩みが解決できるのではないでしょうか。

まとめ

障がい者との接し方やコミュニケーションに悩む理由として「障がいのことをどこまで聞いていいのだろうか」と優しい気遣いがあるからこそ、悩まれているのではないかと感じます。

自由奔放に何でもかんでも聞くのではなく「お互いがよりよく働いていくために必要な情報を教えてほしい」という姿勢を持ちましょう。そのことを真摯に伝え、互いに一歩踏み込み向き合って話をすることが必要なのではないでしょうか。

アセスメントをしっかりと行うことは採用時、そして安定して働いてもらう上で非常に重要です。障がい者雇用のゴールは、採用をして終わりではありません。採用をした障がい者に活躍してもらい、企業の生産性を上げていくことがゴールです。そのゴールに向かうことが出来るように、少しでもこの記事が何かのヒントになれば幸いです。

スタートラインでは日々、企業数175社/約1,000名(2020年7月)の障がい者雇用支援の実績から、貴社の障がい者雇用に寄りそう支援を実施しています。

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この記事を書いた人

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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。