重要な人事施策は障がいを特別視しないで考えてみる

こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。

私は、企業の人事部の皆さんが、障がい者雇用を取り巻く“お困りごと”を解決したいときに、社外の立場からそれをお手伝いすることを生業としていますが、その“お困りごと”の中身が、ここ1~2年で変わってきていることを実感しています。

以前は、「採用」や「業務切り出し」のご相談が多かったのですが、最近はそれらに加えて、

「障がい者社員の皆さんがより長く安定的に働けるためにはどんな施策が必要か?」
「雇用した障がい者社員を対象にした評価制度を作りたいがどのように作ったらいいか?」

といった内容が加わってきています。

背景には、官公庁の障がい者雇用数の不適切計上問題に端を発した4000人規模の採用によって人材獲得競争が激化したことや、今後の法定雇用率のアップ(*)を見据えた雇用人数の拡大といった、企業を取り巻く外部環境の変化があります。

(*)民間企業の法定雇用率は2021年4月までに現行の2.2%から2.3%に引き上げられる

現在、一部の人気企業を除き、多くの企業の人事部の皆さんは、今まで経験したことがないような障がい者採用の難しさを実感されているのではないでしょうか。

そんな中、苦労して採用した社員の皆さんに長く安定的に働いてもらうためにはどうしたらいいのでしょうか?

この問いに対する答の一つは、
【障がいという特性に対して特別な配慮をする】
ための具体的な施策を講じることです。

改正障害者雇用促進法で義務化されている「合理的配慮」を踏まえた上で自社でできる施策を実行することです。
通院のために月1回の特別休暇を設けるなどが例として挙げられるでしょう。

そして、もう一つの答えは、
【障がいという特性に特化しない】
領域に目を向けることだと私は考えています。

代表的なものとして、給与や雇用形態、評価、教育研修、キャリアデザインといったものが挙げられます。

例えば、中途入社者であれば前職でのスキルや経験を踏まえた初任給、業務上の成果を一定の基準を設けて評価すること、評価を反映した昇給幅や雇用形態の変更、スキルアップを目指した教育研修、将来のキャリアを考えるためのキャリアプランニングのサポートなどが挙げられます。

これらは健常者社員に対しては、どの企業でも人事の根幹にあたる施策として注力する分野ですが、障がい者社員に対しては、社員自身から、直接的に声が上がることが少ないということも手伝って、重要度に見合った打ち手が打たれていないように感じています。

しかし、先ほどお話した様に、採用を取り巻く企業の外部環境が変化している中では、障がい者の皆さんにとっては、今以上に自己実現を図れる場所を探すための「転職」という選択をするハードルは低くなっています。優秀な方であればあるほど、現職よりも良い環境を見つけることは容易になっています。

今、まさしくこうした人事の主要な領域を振り返ることが大切です。
自社内で出来ていることと出来ていないことを区別し、改善の余地があるものについては、優先順位をつけて改善に着手する時期ではないでしょうか。

そして改善をする際の起点、いや軸とも言えることは、
【障がいという特性に特化しない】
で考えることです。

給与や雇用形態、評価、教育研修、キャリアデザインを考えるにあたっては、企画の初期段階から「障がい者だから・・・」という前提をまずは横に置くことが重要だと思います。

「もっと快適な生活を送りたい」
「もっと成長したい」
「もっと誰かの役に立ちたい」
「もっと認められたい」
 などなど・・・

このような欲求は、誰もが持つものであって、人によって差はあっても、障がいの有無で差が出るものではありません。

人事の皆さんには、
「自分だったらどんな制度があればいいと思うか?」

という視点で、これらの施策作りに取り掛かっていただくことが大切だと実感しています。


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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。