意欲が高い人に仕事を任せる難しさ

こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。

先日、ハローワークへ行った際、官公庁の障がい者向けの求人票をたくさん見かけました。
同じ官庁でも、時給制のものと月給制のもの、業務内容が異なるもので複数件の求人票がありました。
ハローワークの方の話によると、求職者からの応募は、官公庁に限らず民間企業向けも活発だということでしたが、私が訪問したハローワークでは、民間企業よりも官公庁の求人票の数が多くて目立っていました。
私見ではありますが、官公庁目当ての求職者が二次的に民間企業の求人を見つけて応募する、という流れが出来ているのではないでしょうか。
加えて、「求人票」から求職者が得られるのは雇用期間や処遇、勤務地など、ごく一部の情報であって、この一枚の紙から仕事内容や職場の様子を想像し、そこが自分が求めている環境なのか?を計ることはとても難しいことだとも感じました。ハローワークにおける障がいを持つ人向けの求人情報の提供の仕方は、入社(入職)後のミスマッチを減らすためにも、まだまだ工夫できる余地があるのでは?と感じた次第です。

さて、今日は障がいを持つ社員の方にどのように仕事を任せたらよいか?について、私の実体験を踏まえてお話していきたいと思います。


私が企業の人事担当者だった時に関わった障がい者社員の方で、特に印象に残っている人がいます。
その人は精神障がいを持っており、発病したのは学生時代でしたが健常者として企業での就業経験もあり、真面目で自ら学ぶことが好きで、お任せした未経験の仕事をどんどん吸収して自分のものとし、その結果、他の社員とは一線を画す成果を上げることができる優秀な方でした。

入社当初は、心身のコンディションを考慮し、簡易な仕事を任せるところからスタートしましたが、短期間のうちに簡易な仕事は問題なく仕上げることができるようになり、人事としては所属部署とも相談して、元々想定していた仕事以外に、よりレベルの高い仕事をお任せすることをすることにしました。
所属部署の上長も、
「障がいを全く意識することなく、これからも色んな仕事を任せることができそうだ」
と期待し、業務時間を使って新しい知識を身に着けてもらうべく勉強をしてもらったりもしました。
上長からはご本人へも、期待していることを直接伝え、それを受けて自宅でも自主的に仕事に関する専門知識を身に着けようと、勉強をしていたようです。

その方のコンディションに変化が現れたのは、入社して2~3カ月ほど経った頃だったと記憶しています。風邪やおなかを壊した、等の理由で会社を休むことが少しずつ増えてきたのです。
人事面談の中で様子を詳しく聞いていくと、身体だけでなく精神的にも変調を来していることがわかりました。
主治医やカウンセラーからは「新しいことを学ぶのが楽しいということに加えて、会社からの期待に応えたい、という思いが本人の自覚がないところで精神的な負担になっていた」と考えられるといったお話があったとのことでした。

そこで、服薬の調整と共に、入社当初に想定していたより簡易な仕事に戻し、まずは心身のコンディションを戻すことに注力し、幸いにも大事に至らずに済みました。

しかし、その後もコンディションが安定すれば、ご本人からは「もっとレベルの高い仕事がしたい」との希望が 出てきました。
その度に、上司と人事がそれぞれの立場で、
「ゆっくりと石橋を叩きながらやっていこう。あなたが成長したい、貢献したいという向上心があって、今以上の成果を上げることが出来る人だということはわかっているよ。」
と話をし、本人がアクセルを踏もうとするのとは反対に会社がブレーキを掛けるということをしばらく繰り返していました。

いわゆる“仕事ができる人”には、会社もレベルの高い仕事を任せたいと期待をするものです。
そして本人も「もっと仕事がしたい。成果を上げたい。」という欲求が高くなっていくものでもあります。

ですが、そういう人に対しては、特に慎重に仕事の質や量を見極めることが大切だと実感します。
一概に言うことはできませんが、私の実感値としては、常にその人ができるレベルの80%位に留めておくのが、
「仕事がつまらない。自分はもっとレベルの高い仕事ができるのに・・・」
というご本人の思いと、過度に負担がかかることでコンディションを崩すことなく安定的に働くことができる、ほど良い落としどころの様に感じます。

次号でも、民間企業の人事の経験を踏まえたお話をしていきたいと思います。

梶原 温美(かじはら はるみ)<プロフィール> オフィス温度28℃代表。専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 梶原 温美(かじはら はるみ)
オフィス温度28℃代表。
専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。
「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。
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