こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。
先月は、精神障がいを持った人を雇用した際の入社後の当面の定着支援として、人事ができる施策について、お話ししました。
(前回記事:精神障がいを持つ人の雇用【4】~安定的な就労を目指すために人事ができること~)
今日は、その延長として、「人事評価」についてお話をしていきます。今回のお話もまた、精神障がいを持つ人に限ったお話ではありませんが、特に精神障がいを持った人にとっては、有効ではないか、と考えている施策の一つです。
平成30年4月よりスタートした「無期(雇用)転換ルール」化に伴って、最近、「障がいを持つ社員の人事評価」に関するお問い合わせが増えてきました。
こうしたお問い合わせは、現在いる有期雇用社員が5年を超えて契約更新をすることを控え、無期雇用化への判断基準が必要になったというのが背景にあるケースが多いのですが、評価という仕組みを取り入れることは、企業にとっても、そして社員にとっても、良い流れではないか、と思います。
「評価」というと、その人の能力や行動を査定することが主目的のツールという捉え方が強いようですが、障がいを持つ社員にとっての「評価」は、
「会社が求める姿を指し示し、それに向けて本人が成長しようとすることを助ける支援ツール」
である、と捉えることが最も重要だと私は考えています。
つまり、会社はあなたに、
- こんな行動ができる社員になってほしい
- こんな仕事ができる社員になってほしい
と考えています、ということを明示し、それを目指すことを促すツールとして、「評価」を活用していただきたいのです。
精神障がいを持つ人の中には、過去に障がいを認識しないで、あるいは障がいを持たないで就業した経験を持っている人が少なくありません。こういう人たちの中には、仕事で成果を出すことに意識が向きすぎて、日々の行動面や周りとの人間関係に対する意識が薄くなる人がいるように思います。
そこで、「評価」というツールを使って、長く安定的に働くために会社が求めていることを明示するのです。
例えば、行動面であれば、
- 出勤時・退勤時には自らすすんで挨拶ができる
- 報連相ができる
などの基本的なものに加えて、「社員に求める行動指針」を掲げている会社であればそれも評価項目に反映します。
話は変わりますが、
障がいを持つ社員に対する評価制度がない企業の中で、いきなり評価制度を作るというのが難しい、あるいは、対象となる障がい者社員が少ないので、制度として作るのは現実的ではない、という企業もあるかと思います。こうした企業では、まずは定期面談を行う際に、「面談シート」の中で、会社が求める行動や仕事を明示する、というところから始めてみてはいかがでしょうか。
「評価制度が今すぐ必要だ」と言って、一般的な評価項目を並べて拙速に制度を作るくらいであれば、制度という形ではなくても、自社らしさを反映した社員が向かう先を明示することの方がはるかに大切だと思います。
もちろん、その場合であっても、
「会社が求める姿を指し示し、それに向けて本人が成長しようとすることを助ける支援ツール」
であることに変わりはありません。
前号で、入社後少なくとも1~2カ月は人事が定期面談を行うことをお勧めしましたが、評価という要素を取り込むのであれば、入社後1~2カ月だけではなく、継続的に定期面談をすることが賢明です。
また、同じく前号で定期面談時の【期待値調整】と心身のコンディションの定点観測の内容を具体的にお伝えしましたが、定期面談時に「評価」という要素を加えていくのは、入社後、会社にも、職場にも慣れてきた段階からにする、というのも一案です。
最後にもう一つ。
「評価」というと、人事査定のためのツールという認識を持っている人はたくさんいますので、人事部は社員に向けて、
「評価はあなたが長く安定的に働くことを支援するツールである」ということを繰り返し伝えていくこともとても重要です。
成長していく会社には成長していく社員が必要です。社員という経営資源を預かる人事部は、障がいを持っている社員に対しても、その人に合った成長を後押しする仕組みを作り、支援をしていきたいものです。
次号も引き続き、精神障がいを持つ人の雇用に役立てていただける情報をお届けします。
梶原 温美(かじはら はるみ) オフィス温度28℃代表。 専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。 「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 問い合わせ先 Start Next!運営事務局 startnext@start-line.jp |
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。