2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、以前では想像さえできませんでしたが、最近では電車の広告やTVCMでも障がい者アスリートが活用されており、少しずつ露出が増えてきております。
そのような機運もあいまってか、大手企業を中心に障がい者雇用の手段のひとつとして「障がい者アスリート雇用」を行う企業が増えてきています。
企業にとって障がい者アスリートを雇用することは、法定雇用率の向上だけではなく、企業イメージの向上にもつながると言われています。大人数を一度に雇用するための手段としては難しいですが、社内での業務創出や配属先との調整などの課題があり、少人数の採用を検討する場合の解決方法の1つと捉えることもできます。
なぜ弊社が障がい者アスリート?
創業7年目の2015年夏。
弊社の社員数が50名を突破したこともあり、はじめて自社で障がい者を雇用する場面に直面をしました。
StartNEXT!読者の皆さまの中にはご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、弊社は、障がい者雇用支援コンサルティング会社として、首都圏を中心にサテライトオフィスを7拠店運営しており、身体障がい、精神障がい、知的障がいなど約280名の障がい者の雇用支援を行っております。
多種多様な障がいをお持ちの方々のサポートを日々行っているため、特にどの障がい種別は受入が難しいなど、そのような物理的・心理的ハードルはほとんどありませんでした。そんな中、障がい者アスリート雇用の運気の高まりもあり、弊社も障がい者アスリート雇用について手段のひとつとして検討を始めました。当時の経営会議でも喧々諤々と議論をたくさんしました。
・障がい者雇用支援を行っている弊社だからこそ、障がい者アスリートの雇用は企業イメージの向上に他社以上に結びつきやすいのではないか
・障がい者アスリートを雇用することで、弊社でサポートしている障がい者の方にとっても、活力を感じていただくきっかけとなり、モチベ-ションが高まるのではないか
・サテライトオフィスを運営している弊社だからこそ、既存業務の中で障がい者を雇用し戦力化すべきではないか
様々な意見が出ましたが、「弊社でも障がい者スポーツの普及活動をしており、より障がい者スポーツの実態を知るためにはアスリートを雇用するのが一番である」、「アスリートがトップを目指すのと同様に、弊社も障がい者雇用支援業界で日本一になりたい」などと、最終的には全員がコンセンサスで障がい者アスリートを、弊社の障がい者雇用の第1歩としました。(現在では、障がい者アスリート以外に、精神障がい者手帳をお持ちの方を1名雇用しております。)
障がい者アスリートを雇用することで、弊社が重視したことが2つあります。
①2020年のみを見据えるのではなく、万が一引退した後も活躍できるように、
通常業務においてもしっかりと教育し、アスリート以外のキャリアもきちんと用意する。
②採用するアスリートは、競技力よりも人間性を重視し、社員に愛される人選を行う。
上記2点を弊社が重視したのは理由があります。
アスリートだからこそ引退後のキャリアも大事
障がい者アスリートは、競技で良いパフォーマンスを発揮することが重要なミッションです。一方で、引退などで、アスリートとしてのキャリアを終了させなければいけない時が必ずやってきます。
今雇用している障がい者アスリートが引退した時にどうするのか?障がい者アスリートを雇用している企業にとっていつかは向き合わなければいけない問題です。
一方で、障がい者アスリート自身も引退した後のキャリアについて不安に感じています。中には競技生活を終えた後に、指導者としてスポーツにおけるキャリアを更に積める方もいるかと思いますが、全てがそのような方々ではありません。
そのため、弊社で雇用する場合は、月に4日は弊社オフィスに出勤し、彼女にも業務のミッションを与えています。弊社で雇用しているアスリートは、初めての社会人経験のため、ほぼ新卒社員と同様に先輩社員がOJTに付きながら、出勤日ごとに「できること」を着実に増やしていくようにしています。現在では月4回ではありますが、弊社の事業にとってなくてはならない戦力に着実になってきています。
社員に愛されるキャラクター
障がい者アスリートを雇用する目的のひとつとして、「社内の一体感の醸成」があります。しかし、障がい者アスリートは、月に何回かオフィスで一緒に仕事をするとはいえ、社員とコミュニケーションを取れる機会はそう多くはありません。
そのような状態が長く続いた場合、「なぜアスリートだけが優遇されるのか」など、本来の目的と真逆な反応が生じる恐れがあります。たとえ競技力が優れていたとしても、他の社員に「応援したい!」と思ってもらえない限り、「社内の一体感」は醸成されません。
そのため弊社では、アスリートが「社員に可愛がられる」「自然と応援したい」と思われるように人間性を重視し、採用面接を行いました。
また入社した後も、忘年会等の全社員が集まる行事には必ず参加させ、また社内部活の部長を任せて社内を巻き込ませたり、社内SNSで大会情報等を発信することで、彼女自身が主体的に他社員とコミュニケーションを取れるようにサポートをしました。
その結果、現在では彼女が参加する大会に応援に駆け付ける社員も少しずつ増えてきており、一定の成果が得られてきたと感じています。
障がい者アスリート雇用は、法定雇用率を達成するためのいち手段としてのみ捉えるのではなく、より広義の意味で企業に新たな可能性を提供してくれます。
これから障がい者アスリート雇用を検討される企業様は、自分達なりに大切にすることを整理してみると、よりワクワクした障がい者雇用を実現できるかもしれませんね。
障がい者雇用のことならなんでも相談ください
株式会社スタートラインは、様々な障がい者雇用支援サービスを提供しております。
興味をお持ちいただけた方は、まずお気軽にご相談ください。
StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。