障害者基本計画から今後の障がい者雇用を予測してみる

国(政府)は、障害者基本法に基づき、障がい者施策の総合的かつ計画的な推進をはかるため、障害者基本計画を定めています。

今回は、その中の雇用の分野に関する内容をご紹介させて頂きまして、今後の障がい者雇用について考えてみたいと思います。

障害者基本計画とは

障害者基本計画とは、障害者基本法に基づいて、政府が策定する障がい者施策に関する基本計画です。

従来までは10年毎に策定しておりましたが、制度や経済社会情勢の変化が激しいことから、第3次基本計画より5年(平成25年度~平成29年度)に見直されました。

分野別の施策として以下の10の分野に関して施策を策定しております。

  1. 生活支援
  2. 保険・医療
  3. 教育、文化芸術活動・スポーツ等
  4. 雇用・就業、経済的自立の支援
  5. 生活保護
  6. 情報アクセシビリティ
  7. 安全・安心
  8. 差別の解消及び権利擁護の推進
  9. 行政サービス等における配慮
  10. 国際協力

この中の「4.雇用・就業、経済的自立の支援」においては、障がい者雇用の促進として以下の内容が記載されております。

・平成25年の障害者雇用促進法の改正により、精神障がい者の雇用が義務化(平成30年施行)されたことも踏まえ、精神障がい者の雇用の促進のための取組を充実させ、雇用拡充をはかる

・法定雇用率を達成していない民間企業については、ハローワークによる指導などを通じ、法定雇用率の達成に向けた取組を進める

・特例子会社制度等を活用し、引き続き、障がい者の職域の拡大及び職場環境の整備をはかるとともに、いわゆるダブルカウント制度等によっても、重度障がい者の雇用の拡大をはかる

・一般企業等への就職につなげることを目的として、各府省において知的障がい者等を非常勤職員として雇用し、1年~3年の業務を経験するチャレンジ雇用を実施する

・都道府県労働局においては、障がい者の適切な権利保護のための個別の相談等ともに、関係法令の遵守に向けた指導等を企業側に対して行い、障がい者虐待の防止などをはかる

・「合理的配慮の提供義務(改正障害者雇用促進法)」が新たに規定されたことに対応し、障がい者に対する差別の禁止・職場で障がい者がもつ支障を改善し、障がい者と障がい者でない者との均等な機会および待遇の確保をはかる

以上になります。

大前提としてはやはり雇用率の達成に向けた動きが基本となると考えられます。

雇用障がい者数の平成29年までの目標が46.6万人

今回の障害者基本計画では、具体的な雇用人数に関する成果目標が示されました。50人以上の規模の企業で雇用される障がい者数は、46.6万人(平成29年)という数字が掲げられております。

厚生省発表の平成25年度の雇用人数は40.8万人でしたから、単純に計算して、あと4年間で5.8万人の雇用が必要となるということです。年間あたり1.5万人の増加となりますが、昨年度の増加数が2.5万人であったことを考えると決して高い数字ではないと考えられます。

ちなみにこの46.6万人は、障がい者雇用の算定基礎となる労働者数に対する2.0%になります。ただし、平成25年度の数字をもとにした計算になりますので、今後4年で変化もあるでしょう。着地としては1.94%あたりになると考えられます。

雇用拡大は大前提、30年までに的確な準備を

それ以外にも掲げられている目標があります。公的機関では、「全ての公的機関で雇用率達成」が目標となります。

また、50人以上の規模の企業で雇用される精神障がい者数として3.0万人(平成29年度)と掲げられております。

この、3.0万人という目標、決して高いものではありません。平成25年度の雇用精神障がい者数が2.2万人(前年より0.6万人増加)で、全体の障がい者数40.8万人に対しての占める割合が5.3%です。これに対し、3.0万人目標となる平成29年度の割合が6.4%ですので、今後の精神障がい者雇用義務化にともなう雇用の増加や、精神障がい者数の増加を考慮すると目標としてはかなり低いと考えております。

むしろ、昨年からの伸び率や、行政機関の支援等も考慮すると全雇用者目標の46.6万人のうちの10%、4.6万人あたりが目標としては妥当なところではないでしょうか。

その他に成果目標としては定められていないのですが、障害者基本計画では、

  • 差別禁止や合理的配慮の提供義務
  • 知的障がい者等のチャレンジ雇用からの一般企業への紹介
  • 重度障がい者の雇用の拡大

といった施策が掲げられ、今後の障がい者雇用は、数だけではなく質が求められていくことは明白です。
これからの障がい者雇用は、法定雇用率の達成はもちろん、平成30年度に控える精神障がい者の雇用義務化の準備期間だと考えましょう。

社内環境を整え、障がいの有無に関わらず、いかに活躍できるかということに焦点をあてて障がい者雇用を実現していく必要があります。障がい者雇用をコストではなく、いかに戦力化するに取り組むことが、鍵となるでしょう。

【参考】内閣府 共生社会政策
「障害者基本計画(第3次計画 平成25年度~平成29年度)」

 


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