身体障がいのなかでも、手や腕などに障がいがあることを、上肢障がいと言います。通常できる手順ではできなかったり、特別な道具が必要になったりしますが、一工夫あれば、生産性を大きく向上させることができるそう。一体どのような器具や、配慮が必要なのでしょう。
上肢障がいの種類と等級
上肢障がいには、障害等級が定められています。
・上肢障害6級…片手の人差し指を含めて2指が使えない、片手の親指の著しい障害
・上肢障害5級…両手の親指がかなり不自由、片手の手首から先の機能がかなり不自由
・上肢障害4級…両手の親指の欠損または全廃、片手の手首から先の機能の全廃
・上肢障害3級…両手の人差し指と親指の欠損または全廃、片腕の著しい障害、片腕の全指の機能全廃、片腕の全ての指の欠損
・上肢障害2級…両腕の著しい障害、両手の全指を欠損、片腕を上腕2分の1以上で欠損、片腕の機能全廃
・上肢障害1級…両腕を前腕部分で欠損、両腕を手首部分で欠損、両腕を欠損、両腕が全廃、片腕は前腕で欠損しもう一方は手首で欠損、片腕は肩で欠損しもう一方は前腕で欠損、片腕は肩で欠損しもう一方は上腕で欠損
※「全廃」とは、これらすべての機能が失われた状態でありを言います。
※「著しい障害」では箸程度のものは持てるが、金槌(かなづち)を握って作業をすることはできない、とされています。
配慮が必要と想定されるポイントとは
上肢障がいがある場合、通勤などで配慮が必要かもしれません。つり革を持つ、手すりを掴むなどして、体を支えることが難しい場合、ラッシュ時の通勤を避ける必要があるからです。
業務における作業では、パソコンの入力支援ソフトや、支援機器が必要になる場合もあります。そのほか、事務作業でも、重いものを持つことができなかったり、会議中に素早くメモを取るのが難しかったりするため、ボイスレーコーダーなどの活用もひとつの配慮と言えるでしょう。
なにができて、なにができないか。移動の際や作業の際にどのような器具が必要になるか、事前にしっかり話し合い、周りの従業員の協力を得るよう配慮していきましょう。
補助器具の活用により、生産性を上げる
産業用機械で使われる製品を製造している、ある特例子会社では、上肢障がいを持つ従業員が35名在籍しています。製品の組み立てや、パソコンを使ったデータ管理に従事しているそうです。
光電センサー組立ラインで、ハンダ付けを担当した従業員の男性は、筋ジストロフィー症を患っており、進行により握力の低下が進行していました。業務においては、日に20回ほどある作業要領書の差し替えにおいて、ファイルを持つことが困難だったそうです。そこで、作業要領書をすべて電子化。画像を多用して、注意点をわかりやすく工夫するよう努めました。
また、個々の作業指図書にはバーコードを記載し、それを読み込むことにより、使用する部品や収納トレイが自動で棚から出てくるシステムを、1年かけて作ったそうです。作業時間短縮、負担軽減、注意喚起の徹底にも効果があったため、その後この方式は、他のラインにも適用されました。
このほか、セットしてからレバーを下げるだけで、正確な位置でラベルがはり合わせる器具を開発したり、金属枠の4辺の余白にパッキンを張る作業を、スイッチひとつで張れるような器具を開発したりと、上肢障がいに合わせた環境改善に、積極的に取り組んでいます。
必要な器具があることにより、手のふるえや、力を入れることが困難な従業員でも、正確な作業が、効率的に行えるようになったそうです。
上肢障がいによってできないことと、作業内容との噛み合わせにより、どのような補助器具が必要かは変わってきます。障がいがあるから効率が悪いのは仕方無いとあきらめず、さまざまな工夫で、生産性を向上できないか考えていってください。障がい者雇用の経験豊富な職場を見学してみるのもひとつの手段ですよ。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。