データから考える、20代〜30代の軽度身体障がい者の採用

この記事のポイント

  • 若手の軽度身体障がい者からの応募が少ないのは本当か?
  • 身体障がい者は高齢化が進んでいる
  • 若年層の雇用を考えるのであれば、障がい種別を広げる必要がある

求職者数からみた、応募者数への影響

比較的、企業側での多くの配慮を必要としない軽度の身体障がい者で、かつ20代から30代までを求人したいのに、なかなかそのような方からの応募が来ない、といった声が企業採用担当者からはよく聞かれます。

今回は、なぜ、ターゲットとする方から応募が来ないのか、データから考えてみたいと思います。

まず、東京都内のハローワークにおける障がい者の有効求職者数が以下となります。

表:平成24年3月末有効求職者数
身体障がい者 7,634名
知的障がい者 3,562名
精神障がい者 5,867名

このデータから考えると、身体障がい者数が最も多く、一見、採用しやすいと考えることができます。

では、次に身体障がい者の年齢構成別の人数を見てみます。

表:身体障がい者の年齢構成
年齢 身体障がい者数
〜19 49名
20〜29 630名
30〜39 1,196名
40〜49 1,784名
50〜59 1,991名
60〜 1,984名
合計 7,634名

このように年齢構成別にみると特徴として、身体障がい者は、50代から60代以上が最も多いということが挙げられます。

なお知的障がい者及び精神障がい者の年齢構成別の人数が以下となります。知的障がい者の場合は20代が最も多く、精神障がい者は30代から40代が多数を占めていることがわかります。

表:知的障害者と精神障害者の年齢構成
年齢 知的障がい者数 精神障がい者数
〜19 727名 36名
20〜29 1,277名 870名
30~39 701名 2,121名
40~49 520名 1,953名
50~59 240名 754名
60~ 97名 133名
合計 3,562名 5,867名

このように、身体障がい者は一見すると他の障がいと比較して人数が多いように見えますが、20代から30代の全体の占める割合は23.9%と低く、高齢化の傾向にあることがわかります。

有効求職数から見た、応募者数への影響

記事の最初に上記に紹介した、身体障がい者の有効求職数のうち、軽度及び重度の内訳が以下となります。

表:平成24年3月末 身体障がい者の有効求職者数の内訳
軽度身体障がい者 4,062名
重度身体障がい者 3,572名

このデータを元に、軽度身体障がい者数ので20代から30代がどの程度占めているのか推測するするために、仮に、先ほどの23.9%という数字を当てはめます。

4,062名×23.9%=970.8

軽度身体障がい者の20代から30代の人数は、970名だと推測できます。じつは、多くの企業が採用を希望するターゲットは、実際には、かなり少ないことがわかります。

参考までに、求人とのバランスも計算してみましょう。

東京都内における法定雇用人数を求められている企業が平成25年6月1日時点で17,626社あり、そのうち雇用率を満たしていない企業が12,618社あります。もし、そのすべての企業が雇用を積極的に進めるためにターゲットを20代から30代の軽度の身体障がい者とした場合、12,618社が970名を取り合うかたちとなってしまいます。もちろん、1社で1人の求人とも限りませんが、単純に「有効求人倍率」に表しても13倍にもなるのです。

さらに平成30年に予測されている雇用率の引き上げに伴い、従来から過熱傾向にあった軽度身体障がい者の採用は、今後、さらに過熱感を増していくでしょう。

雇用条件の視野を広げる時期に来ている

このように、単に希望する年齢層・障がい等級の求人をするだけでは、いっこうに雇用の促進の解決策になりません。

そこで、東京都心で今後の障がい者雇用を進める場合の解決策としては、採用ターゲットの拡充があげられます。

たとえば、障がい種別を身体障がい者に絞るのであれば、50代以上の身体障がい者や重度の身体障がい者へとターゲットを広げるのがひとつの手段となります。

また雇用者の年齢を20代から40代に絞るのであれば、知的障がい者や精神障害者へと障がい種別を広げることが有効です。

ひとくちにターゲットを広げるといっても、それぞれの障がいに適した企業側の配慮が必要とされます。知的障がい者、精神障がい者の場合は仕事の指導方法の工夫、人的な受け入れ環境のソフト面の整備が必要ですし、高齢や重度身体障害者の場合には設備などのハード面の配慮が必要となります。

逆に言えば、社内の変化や配慮の必要とされない採用ではなく、ある程度のアクションと改革努力をともなう採用が、今後は当然となってきています。

なお、特に採用が困難になっている東京都心では、都心本社オフィスで採用をするのではなく、全国に事業所がある場合は、その事業所にて採用を進めるというのも打開策のひとつとして注目されています。

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この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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