こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。
先日、ある100名超規模のIT系企業へお邪魔し、障がい者採用の悩みについてご相談を受けました。
現時点では法定雇用率を満たしておらず、管轄のハローワーク雇用指導官からは、当然、採用活動を強化するように指導されているものの、
「当社のような知名度の低い企業には、応募なんて来ませんよ。採用したくてもどうやって採用したらいいのか、策が見つかりません。」
とのこと。
確かに、2018年4月からの法定雇用率の引き上げ(民間企業では現行2.0%から2.2%へ)を前に、各社が採用活動を積極化する中、求職者は、大企業やB to Cの事業をしていて社会的な認知度の高い企業へ集中する傾向は高いように実感しています。
実際、定期的に行われる都内のハローワークが主催する大規模な「合同面接会」では、知名度の高い企業のブース前は、面接会スタートのアナウンスと共に、長蛇の列となり、面接のために配られる整理券が飛ぶようになくなっていきます。
一方、社会的な認知度が高くはない企業のブースでは、面接担当者が、応募者が来るのを待ちながら、手持ち無沙汰な様子…。
私も企業の人事担当者だったときに同様の経験があり、“お話しする機会さえもらえれば、会社のことをよく知ってもらい、応募してもらえる自信はあるのに・・・”と悔しく思ったものでした。
こんな実態の中で、採用、そして雇用を増やしていくにはどうしたらよいのでしょうか?
すでに、多くの人事ご担当者がご存知のことではありますが、求人を依頼する先には、公的機関と人材紹介会社などの民間企業の両方があり、前者は採用にかかる費用は無料、そして後者は有料というのが一般的です。
公的機関としては、ハローワーク、各種支援機関(就労移行支援事業所・障害者職業センター・国立リハビリテーションセンターなど)があります。また、人材紹介会社や求人ポータルサイトを運営している企業もここ数年で非常に増えてきました。
求人を依頼する先がどういう種類の組織や企業であるにせよ、採用を成功させるポイントは、まず第一に、相手先の担当者に、
「会社のファンになってもらう」
ことだと、私は思います。
とくに、採用費用が掛からない各種支援機関には、多くの企業の求人票が集まります。その中で、担当者は、障がいを持つ人の人柄や適性、そして障がい特性に応じて、就職先としての企業を紹介します。過去に採用実績がある企業ではなく、初めて支援機関から障がい者を採用しようとするなら、まずは、支援機関の担当者に会社のことを知ってもらうことからスタートするわけですが、自社に合った人財の採用を叶えるなら、直接支援機関へ出向き、会社の事業内容や規模、就業場所や就労条件といった求人票に書かれている情報に加えて、企業理念やビジョン、ミッションに込められた思いや、どんな人にどんな活躍の場があるか、について、言葉を尽くして、直接お話しすることが重要だと考えます。
加えて、過去にどんな障がいを持った人が入社し、どんな仕事をしているか?どんな配慮をしているか?など、事実に基づいた情報をご提供するなど、先方の担当者に、より具体的に障がい者が働く姿をイメージしてもらえる様に心がけて話をします。
またその際には、障がい者雇用で成功した事例だけではなく、うまく行かなかった例もお話ししましょう。どこの企業でも、失敗事例はあるものですし、その失敗を次に活かして長期雇用のために、新しい取り組みをするなどの工夫をしていることが伝われば、うまく行かなかった過去の事例は、むしろ安心材料にとって変わります。
こうした様々な思いや情報をご提供することで、担当者に「真摯に障がい者雇用に向き合う企業だ」ということを理解していただけることが、ミスマッチの少ない人財のご紹介や、入社後の後方支援を受けることにも繋がるのではないでしょうか。
そして、採用を成功させる2つ目のポイントは、
「事業に貢献する人財の採用をする」
ということです。
労働力人口が減っていく日本において、今や、障がい者は、法定雇用率達成のために社会的義務として採用するという対象ではなく、事業に資する働き方を促進していくべき対象なのは明らかです。
また、最近、企業における障がい者雇用率が高まる中で、障がいを持つ人自身が、「働きがいを持って働くこと」や、「誰かの役に立ちたい」という思いを持って求職している傾向も高くなっていると実感します。
そして、こういう意欲を持った人が活き活きと働く職場では、周囲の人たちの生産性も向上し、業績へのプラスの貢献がある、という調査結果も出ています。
業績への貢献には、一足飛びにはたどり着くことは難しいかもしれませんが、企業側が、事業に貢献する人財の採用を目指していることを、自社の「求める人財像」の一つとし、担当者へご自身の言葉で熱く伝えることも、今、そしてこれからの時代に合った採用活動の一つではないでしょうか。
法定雇用率を達成するために、「数」を追い、入社に至っても定着せず、すぐに辞めてしまうといった、“ざるに水を溜めようとする”採用ではなく、長く安定的な雇用を目指して、様々な採用ルートを開拓し、言葉を尽くして自社のことを知ってもらうこと。これは一見遠回りに見えるかもしれませんが、良い人財の獲得に奇策や秘策はありません。
採用活動は、「愚直に、誠実に、丁寧に」。これに尽きるのではないでしょうか。
梶原 温美(かじはら はるみ) オフィス温度28℃代表。 専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。 「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 問い合わせ先 Start Next!運営事務局 startnext@start-line.jp |
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。