障がいを持つ人にこそキャリアデザインを

こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。

最近、様々な業種業態の企業からのご要望で、「キャリアデザイン」に関する講座を担当させていただくことが増えてきました。
リンダ・グラットン氏が著書「LIFE SHIFT」の中で、人生100年時代の人生戦略を描くことを推奨していることは、超長寿の日本人としてはインパクトが大きかったですし、国も企業も、会社任せにせずに、個人個人が自分らしく働き、仕事を通じて自己肯定感が高まるように、自分自身で今後のキャリアを考えていくことを訴え始めています。

社員一人一人が自身のキャリアデザインを考えることを推奨するという動きは、会社の規模や事業の成熟度、そして人事に対する考え方により、各企業に当然違いがあります。しかし、AI・ロボット技術の進化や労働生産人口の減少などによって、事業環境や労働環境が変容いくことを見据えて、これからは、会社がお膳立てをした流れに身を任せるのではなく、自身でこれからのキャリアについて具体的なイメージを持ち、キャリアの現在地を定点観測することを社員に促すことは、日本企業の人事にとって、大変重要な仕事ではないかとも考えています。

さて、このキャリアデザイン。
障がいを持つ人にとって、これからのキャリアを自身がデザインするということは、自分には無縁だと考える人もいらっしゃるかもしれません。まずは、就職し、そして日々安定したコンディションで勤務することが目前の目標である人にとっては、数年後のキャリアについて考えてみましょう、といきなり投げかけても、どうしていいか、わからないかもしれませんね。
また、障がいを持つ人を雇用する企業の人事部側にとっても、同じ状況であっても不思議はありません。
しかし、障がいを持つ人にこそ、これからのキャリアデザインを描くことは有用だと私は考えます。

キャリアをデザインする時には、いくつかの要素に分けて考えることが肝要です。
一つ目は、「今できていること」の洗い出し。
  L朝決まった時間に起き、1日3食きちんと食事を取り、夜決まった時間に布団に入ることができている。
  L朝遅れずに出社することができている。
  L出社時と退社時には、部署のメンバーに挨拶をすることができている。
  L決められた業務をミスせずに行うことができている。
  L困ったことがあったときに、溜め込まずに、関係者へ相談することができている。
など、今できていることを洗い出してみましょう。

そして次に、「将来なりたい姿」を描きます。単将来といっても漠然としてしまうので、まずは2〜3年後の姿をイメージすると良いでしょう。
  L現在のチームでリーダーの立場になる。
  L今の業務で信頼を得て、希望する部署へ異動できるようになる。
  L英語を使った仕事ができるようになる。
などが例として挙げられます。

三番目は、現在、自分が会社から「求められていること」について整理します。果たすべき役割は何か?と自問してみると良いでしょう。
  L事務用品の欠品や過剰在庫が出ないように、個数の管理や発注を行う。
  L顧客データを1日あたり、●●件入力し、ミスがないかのチェックを行う。
  L社員の残業時間の計算が合っているかどうかの確認作業を行う。
  L全社員が健康診断を受診するよう、未受診者への案内や受診状況の確認を行う。
  L契約期間終了が迫っている顧客に電話し、契約更新の手続きをもれなく行う。
このように現在の業務において会社から求められている自分の役割について、整理してみましょう。

最後は、「将来できるようになること」について、です。これは、「将来なりたい姿」を実現するためにこれから身につけるスキルや経験、能力について書き出します。
  Lチームで業務の改善提案ができるようになる。
  L後輩に業務を教えることができるようになる。
  L誰にでもわかる業務マニュアルを作成することができるようになる。
  L半年に一つずつ新しい業務ができるようになる。
  LTOEICで750点を取れるようになる。

以上の様に、キャリアデザインとは、現在の自分の姿を客観的にみつめることから始めます。それは実務に関することに限らず、まずは日々の生活に関することでも構いません。そして、自分が叶えたい夢と会社から求められる役割を整理し、そこに向かう道筋として、これからできるようになることを洗い出します。
これらすべてが一つの道となって繋がっていて、現在の自分が確かに将来なりたい姿に向かっていると実感できることで、自己肯定感が高まり、さらには将来の自分に希望が持てるのではないでしょうか。

そして、大切なことがもう一つ。キャリアデザインは、一度やったら終わり、ではなく、定期的にバージョンアップを図っていくものです。体調や働く環境、そして人生観などの変化と共に、1年に1回などの頻度で見直しをしていくことが必要です。時には、体調などが理由で“目指す山”が変わることもあるでしょう。仮に目指す山の高さを低くせざるをえなくなっても、それは“後退”ではなく、次の登山に向けての基礎体力(=土台)作りの期間というだけです。
足腰を鍛えて、再度、高い山に登るチャンスをうかがう。

こうして考えると、キャリアデザインとは、“目指す山”に向けて、どういうトレーニングをして、どういうトレーニングは(今は)やらないのか、を見極めるための手立てでもあることも見えてきます。
障がいがあるからという理由で、目標を立てないでいると、結果的に小さな山を登る体力がつきません。一方で、あれもこれも、と欲張ると小さな山すら登れません。
今、目指す山に向けて、必要なことを見極めて、毎日を積み重ねて行くこと。まずはここからスタートしてみてはいかがでしょうか。

 

<プロフィール> オフィス温度28℃代表。専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 梶原 温美(かじはら はるみ)
オフィス温度28℃代表。
専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。
「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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