こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。
障がいを持つ人を雇用している企業を数多く見ていると、安定的に長く働く人が多い企業と、そうでない企業が比較的はっきりと分かれる様な印象を受けます。
今回は、企業側もご本人も大きな決断をして雇用・入社したのに、お互いに満足できず、早々に退職してしまう、という悲劇をできるだけ減らすために、企業の人事部が入社前後でできることをお話ししたいと思います。
【入社直後の働き方】
例えば、はじめての就職、あるいは前職からのブランクが空いている(2ヶ月以上が目安)方の場合、時短勤務からスタートすることをお勧めします。
特に電車通勤の場合、入社直後は新しい職場環境に慣れるのと同時に朝夕の通勤ラッシュに慣れることも重要な要素となります。そこで、時短勤務を適用し、まずは朝の通勤に慣れるところからスタートするのです。ポイントは、始業時間は他の社員と同じで、終業時間を繰り上げるということなのですが、これには、次の3つの理由があります。
1)朝は多くの社員が会社に出社して顔を揃えますから、そこに顔を出していることは組織のメンバーとして必要なことです。
2)始業時にその日の仕事の予定や段取りを打ち合わせるミーティングを持つことが多いものです。
3)毎朝決まった時間に起床し身支度を整えて出社できる、というのは心身の調子を測る上で重要な要素です。
ただし、障がいの特性上、始業時間からの就業が難しい方の場合は、上記の2点目を補完するような手立て(別の時間帯に本人に同様の申し送りをするなど)を別途講じた方が良いでしょう。
短縮する時間は、入社当初は就業規則で規定されている所定時間(通常7〜8時間)よりも2時間程度が望ましいかと思います。
2時間時短からスタートし、本人のコンディションを見ながら、徐々に1〜1ヶ月半程度を目標に、通常の所定時間勤務にしていくくらいが、無理がなく、かといって緩すぎない加減かな、という感覚を私は持っています。
【入社が決定したら】
あくまでも、ご本人への提案レベルではありますが、入社日までの間に何回か、実際に通勤する時間帯に電車に乗り会社まで来てみる、という通勤訓練をお勧めすることも一案です。実際の電車の混雑具合や乗り換えに掛かる時間(人によっては駅のトイレに寄るための時間も必要です)を事前に体験しておくのと、そうでないのとでは、入社直後の精神的な負担の度合いも変わってくるでしょう。
【入社直後】
入社後1〜2週間は、その日の仕事が終わった後、毎日10分程度の人事担当者との面談を行いましょう。
面談で聞くポイントは、
1)その日のコンディション(起床時間・睡眠時間・途中覚醒の有無、食事、服薬など)
2)仕事の様子(何を誰とどんな方法でどのくらいやったのか?など具体的に)
3)気になっていることや困っていること(入社直後は遠慮して、周りに聞きたくても聞けないことがあるものです)
1)や2)をヒアリングする際には、わかりやすく数値化して答えてもらうのがお勧めです。
「今日のコンディションは80です。昨日は50でしたが、昨晩は夜一度も目が覚めることなく熟睡できたので、今朝はそれほど苦労なくすっきり起きることができました。また、食事もいつもの時間に3回摂ることができました。だから今日のコンディションは80でした。」
〜このような形で報告をしてもらうと、日々の変化を知ることができますし、その人にとってなにがコンディションを変化させる要素なのか、を把握することもできます。加えて、短時間で必要な情報を得ることにも繋がります。複数の社員の面談を日々行う人事担当にとっては、よりメリットを感じられるのではないでしょうか。
そして2)については、毎日とまではいかなくても、職場にもヒアリングをすることが必要です。本人が言っていることを別の立場から確認することで、本人には見えていない改善点が見つかることがあります。また、上長から「△△の仕事について、マニュアルをしっかりと読み込み、ミスなく確実にやってもらえるので安心しているし、助かっている。」という話があればご本人に伝えます。会社という組織では、とかく良い面を伝えることを忘れがちですが、入社当初であればその後の仕事への向き合い方や意欲にも繋がるため、なおさら意識したいところです。
以上、障がいを持つ方の入社前から直後における人事の対応についてお話しして来ました。これらはどれも、私が経験上有効だと感じたことばかりです。どれもすぐに実践できることですので、ぜひ、お試しください。
梶原 温美(かじはら はるみ) オフィス温度28℃代表。 専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。 「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 問い合わせ先 Start Next!運営事務局 startnext@start-line.jp |
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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。