目次



はじめに

障害者雇用促進法には「合理的配慮の提供義務」が定められていますが、障害者の特性によって求められる配慮が違います。
今回は、企業が行うべき合理的配慮について、精神障害者のケースを取り上げて解説していきたいと思います。

合理的配慮の背景

2016年の4月に「障害者雇用促進法」が改正施行され、合理的配慮が義務化されました。
その背景には、これまでは、「障害」というと、目が見えない、耳が聞こえない、精神的に不安定など、心や身体の機能の欠陥で、個人の訓練やリハビリで乗り越えていかなければならないものだという考え方が主流でしたが、1990年前後に、世界全体の「障害」に対する考え方が下記のように変化しました。

この社会には、多様な人々が存在しており、その多様な人々に社会の側が対応できていない。

これは社会の側が抱える不備であり、この不備こそが「障害」なのだという考え方が主流になってきました。
つまり障害とは、個人の側にある心や身体の欠陥ではなく、社会の側にあるものなので、障害をなくすというのは、社会の側にある不備をなくしていくということです。

こういった考え方の変化が、後の法律の改正につながり、合理的配慮が生まれました。

合理的配慮とは

合理的配慮とは、「障害者差別解消法」と「障害者雇用促進法」に定められている、合理的配慮の提供義務に基づき、障害者が健常者と平等に社会に参加することを阻んでいるものをなくすために必要な補助や設備、ルールの変更など、社会側が行う配慮のことを言います。

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厚生労働省の掲げる合理的配慮指針

合理的配慮指針、この指針は、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき作られた指針です。

具体的には、

障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、
労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならず、
また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、
その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、
援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない

というものです。

ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りではありません。
厚生労働省の掲げる指針は以下となっております。

1.合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること。

2.合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと。

3.過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置を講ずることは差し支えないこと。また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、事業主は、当該障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること。

4.合理的配慮の提供が円滑になされるようにするという観点を踏まえ、障害者も共に働く一人の労働者であるとの認識の下、事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること。

合理的配慮の具体的事例「精神障害者」

では、実際に企業では、具体的な配慮について、どのような配慮が行われているのでしょうか。
企業が行っている配慮と、そのポイントやメリットを説明していきたいと思います。

1…短時間勤務等勤務時間についての配慮
2…通院・服薬等雇用管理上の配慮
3…休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等の配慮
4…配置転換等人事管理面についての配慮
5…能力が発揮できる仕事への配置
6…職場内における健康管理等の相談支援体制の確保
7…業務実施方法についてのわかりやすい指示
8…工程単純化等職務内容についての配慮
9…関係機関等、外部機関との連携支援体制の確保
10…業務遂行を援助する者の配置

1…短時間勤務等勤務時間についての配慮
短時間勤務を認めている企業が多いようです。障害特性によっては、過剰に集中してしまい、通常よりも何倍も疲れてしまう方がいたり、8時間勤務を毎日続けることが困難な方もいらっしゃいます。
特に、就職したばかりの方は、慣れない環境で負担も大きくなってしまうため、安定するまでは短時間勤務を行い、徐々に勤務時間を延ばしていくといったケースも多くみられます。

2…通院・服薬等雇用管理上の配慮
毎週通院が必要な方や、必要なタイミングでの服薬などが必要な方に対する配慮です。
休憩時間を固定してしまうと、思うように服薬できず体調が悪化してしまうケースもある為、こちらも事前に確認し、必要なタイミングで服薬が行えるような休憩の取り方を設定したり、通院に関しても、必要な回数分休暇を増やす等の配慮を行う必要があります。

3…休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等の配慮
精神状態や体調が安定していない中、無理に業務を行うことにより、状態が悪化し、休職に繋がってしまうことがあります。
そのため、健康状態に合わせ、休暇を取得しやすくするような配慮も必要とされます。

4…配置転換等人事管理面についての配慮
体調面や適性の問題で、入社時の配属先とマッチしていなかった場合などを想定し、適切な部署への配置転換を融通することなども求められます。
特に、精神障害者は、コミュニケーションにおいてセンシティブな方も多いため、人間関係のトラブルの際などに柔軟に対応できるようにしておく必要があります。

5…能力が発揮できる仕事への配置
上記と同様に、業務面で適性ではない場合も想定されます。
その際に、適性のある業務に配置転換することで、成果を発揮することが可能となるケースもあります。

6…職場内における健康管理等の相談支援体制の確保
相談体制の確保は非常に重要な項目です。
定期面談の実施や、相談員の固定化など、様々な配慮がありますが、より相談しやすい環境整備や関係性を構築することで、メンタル不調のリスクを大幅に減らすことができます。

7…業務実施方法についてのわかりやすい指示
障害特性によっては、曖昧な指示が伝わらないことがあります。
指示書の作成による明文化や、業務についての細かい指示が必要なケースもあります。
上記を行うことにより、非常に的確な業務遂行で成果を上げたという例もあります。

8…工程単純化等職務内容についての配慮
障害特性によっては複雑な工程のある業務より、単純な業務に適性があることも多くあります。

9…関係機関等、外部機関との連携支援体制の確保
支援機関や医療機関と連携し、体調面や精神面を把握することが、適切な対応をとるようにする必要なポイントです。
適切な情報共有を行うことにより、早めの対応が可能になります。

10…業務遂行を援助する者の配置
固定化された業務の管理者や援助者を配置することにより、細かなコミュニケーションをとることが可能となり、業務遂行がスムーズになります。
また、障害者チームを編成しチームに知識のある援助者及び管理者を付けるケースなどが多くあります。

上記の他にも様々な配慮事項はあります。工数がかかってしまいますが、法律で定められた義務ですので、企業側は対応する必要があります。

しかし、過重な負担を企業に及ぼす場合はその限りではありません。

厚生労働省の定める過重な負担について

厚生労働省では、以下のような場合を過重な負担としています。

1.事業活動への影響の程度当該措置を講ずることによる事業所における生産活動やサービス提供への影響その他の事業活動への影響の程度をいう。

2.実現困難度事業所の立地状況や施設の所有形態等による当該措置を講ずるための機器や人材の確保、設備の整備等の困難度をいう。

3.費用・負担の程度当該措置を講ずることによる費用・負担の程度をいう。ただし、複数の障害者から合理的配慮に関する要望があった場合、それらの複数の障害者に係る措置に要する費用・負担も勘案して判断することとなること。

4.企業の規模当該企業の規模に応じた負担の程度をいう。

5.企業の財務状況当該企業の財務状況に応じた負担の程度をいう。

6.公的支援の有無当該措置に係る公的支援を利用できる場合は、その利用を前提とした上で判断することとなること。

また、上記に従い過重な負担と判断した場合は、実施できない旨を当事者に伝えるとともに、当事者の求めに応じて説明し、話し合いの下、過重な負担にならない範囲で合理的な配慮を行う必要があります。

まとめ

合理的配慮は、確かに企業側には負担になる場合もあります。しかし、障害となる要素を取り除くことで、業務効率化やマニュアル化、業務フローの明確化などが進み、成果が出ている企業も増えております。
企業としての義務としてとらえるのではなく、より良い障害者雇用を推進する上でのポイントとしてとらえてみてはいかがでしょうか。

精神障害者の配慮については、明確にすることが難しい場合も多くありますので、しっかりと相談していくことがキーポイントになります。
そのため、採用の際に丁寧に必要な配慮についてヒアリングを実施し、自社にて対応可能かどうか検討すること、それがミスマッチを防ぐためにも非常に重要です。

合理的配慮については、企業によって様々な取り組みがあり、自社と雇用する障害者に合った適切な取り組みが求められます。

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