安定就労の鍵は自立に向けた具体的施策!アイスタイルのニューノーマルな組織作りとメンタルケア

2020年11月以降、新型コロナウイルスの「第3波」の影響が全国的に広がっています。

新型コロナウイルスは、従業員の働き方にも影響をもたらしました。
企業の人事担当者は、オンラインやテレワークなどの対応に取り組んでいることでしょう。

一方、障がい者雇用に関しては、ロクイチ(6/1)報告や法定雇用率2.3%に引き上げ(民間企業)予定の影響もあり、前向きに取り組んでいるもののオンライン採用やメンタルケアなどの難しさを感じているのではないでしょうか。

そんな中、株式会社スタートライン(以下、スタートライン)は、障がい者雇用に課題を感じている企業様を対象にウェビナーEXPO2020~障がい者雇用withコロナ~を開催しました。

ウェビナーEXPO2020~障がい者雇用withコロナ~とは?

ウェビナーEXPOは、全6日間、各日1テーマの全6テーマで構成されています。
障がい者雇用に関するテーマ毎に、スタートラインの提供する「障がい者向けサテライトオフィスサービス(以下、サテライトオフィス)」を利用している企業の障がい者雇用担当者をお迎えし、各社の取り組み事例を紹介しています。

障がい者向けサテライトオフィスサービスとは?

第1回目は、主に美容系総合ポータルサイト@cosme(アットコスメ)の企画・運営や関連広告サービスの提供を行っている株式会社アイスタイル ヒューマンリソース本部D&I推進部 部長、伊豆高彰氏ご登壇のもと『安定就労の鍵は自立に向けた具体的施策!アイスタイルのニューノーマルな組織作りとメンタルケア』テーマでお話がありました。

株式会社アイスタイル ヒューマンリソース本部D&I推進部 部長、伊豆高彰氏

※D&I:ダイバーシティ&インクルージョン

障がい者雇用を取り組む企業の人事担当者の中には

  • 障がい者を雇用してもすぐ辞めてしまい安定就労にいたっていない
  • 組織作りの考え方がわからない
  • 障がい者へのメンタルケアのやり方がわからない

などの悩みをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

障がい者雇用を取り組むうえで、ぜひ参考にしてください。

目次


アイスタイルの障がい者雇用の状況

■障がい者雇用のご状況を教えてください

障がい者雇用の人数は、今年の6月1日時点ですが、14名で雇用率が2.26%です。
今現在(2020年11月)は、雇用人数は15名となりました。管理者は4名です。

勤務場所は、スタートラインさんのみなとみらいのサテライトオフィスです。

主な業務内容としては、アイスタイルのグループ各社の60から70種類の業務を常時15名で振り分けて担当して取り組んでいます。

安定就労のための具体的施策

【1】目標設定とフィードバックによるモチベーション維持

■目標設定はどのようにされていますか?

目標設定に関しては、全社的に半年に1回、自分自身の目標を「成長」軸と「成果」軸の2つに大きく分けています。
そこの達成に向けて各自が取り組んでいるような形で行っています。

■目標設定を運用する上で気をつけていたことはありますか?

そもそも会社に貢献するというところで、売上を作る部署ではなく、コスト部門となります。そこで会社に必要とされる部門になるために、部門や個人としての成長・成果が必要になってきます。

自分たちはどこを目標として、どのように成長・成果を描いていけばいいかを、自分で考えられないと目指しどころがありません。

まずは、自分自身が仕事を通じてどのように成長していきたいかを白紙の状態から考えてもらっています。

目標を設定することに苦戦するメンバーもいますが、そこは自分ごととして捉えてほしいですし、それに対して評価されるので、納得感も得られます。

■目標設定に苦戦するメンバーのフォローはどうしていますか?

苦戦するメンバーに対しては、まず自分ができているところを、この先どこまで目指そうかと一緒に考えます。

しかし、答えは出さないようにしています。
答えを出してしまうと、人に決められた目標になってしまうので納得感が得られにくくなってしまうからです。

ヒントを出してそこから先は自分で考えてもらうようにしていますね。

■フィードバック方法はどれくらいの頻度でどのような内容でされていますか?

半年に1回の目標に対して、2回フィードバックしています。
上期が終わったタイミングで、まずは自己評価をします。

その後、評価者と面談をします。自身の成長・成果をアピールしてもらい、他己評価をして、それを会社に提出し、会社からのフィードバックがきたら、それをメンバー個人に伝えるというような流れでおこなっています。

そのため、メンバーには、自己評価の段階で自分を最大限アピールしてほしいということを伝えています。
目標を作ることも大切ですが、半年間の集大成を精一杯アピールしてほしいですし、それができなければ評価されないということや、目標設定、自己評価は仕事のうちの一つだと常日頃伝えています。

■自己評価やアピールを難しく感じる方もいらっしゃると思いますが、皆様うまく自己アピールされているのですか?

うまく自己アピールできないメンバーもいますが、こちらから「何をどう頑張ったのか」や「設定した目標に対してどういうプロセスを踏んできたのか」を聞くようにしています。

結果は大切ですが、ゴールに辿り着くために、自分がどんな取り組みや努力をしたのかも伝えて欲しいので、そこも含めて評価することを常々伝えています。

■目標設定とフィードバックによってどのような効果がありましたか?

自分で考えることや自己発信がどうしても苦手なメンバーはいます。
自分なりに頑張って考えたけれど、うまく目標が立てられなかったときにショックを受けていました。

しかし、もっと自己発信して良いことや、自分で考えることが大切だということを繰り返し伝えることで、自分で考えて目標を立てられるようになりました。

自分が考えていることを伝えてもらって、それを否定するのではなく『もっとこうなるとよいのではないか』とフィードバックを繰り返したことで少しずつ成長につながったのではないでしょうか。

【2】部会開催によるオフィスミッションの浸透

■部会・オフィスミッションとはどのような活動でしょうか?

部全員が集まる会議を週1回開催するようにしています。
全社の共有事項やオフィスの連絡事項などを伝える会ですね。

また、個人の目標の上には、部の目標(オフィスミッション)があるので部の目標も必ず伝えるようにしています。
部はこういうことを目指す、その上で個人個人の成長が必要なのだということは、しつこいくらいに伝え続けています。

他にはメンバー同士の理解を深めるために、各自が担当している業務を他のメンバーに発表することや、改めて自己紹介をすることなども行ってきました。

■オフィスミッション浸透によってどのような効果がありましたか?

会社に何をしてもらうかではなく、会社に対して何ができるかを考えていきたいというメンバーがいたときには、オフィスミッションが浸透しているなと感じました。
さらに、メンバーが自身の課題を明確にできるようになってきています

課題を明確にできるようになっただけでなく、それを他者に説明できるようにもなっているので、このあたりはオフィスミッションの浸透が個人の成長を促しているのではないかと思います。

【3】チーム編成

■チーム編成のポイントはありますか?

4〜5名ごとのチームに分かれていて、管理者が1人つく編成になっています。

本社との業務のやり取りも、管理者を挟まずにメンバーが直接やり取りをしていたり、誰かが早退したときには他のメンバーが協力して業務をカバーしたりする動きがあります。チームとしての理想の形になってきていると思いますね。

■チーム編成にこだわりはありますか?

こだわりはまったくないですね。
もちろんメンバーそれぞれの個性や特性で感じるものはありますが、基本は業務ベースでチームを編成しています。
メンバーによってできる業務とできない業務があるので、それを振り分けていますね。

とはいえ、一人が特定の業務を担当することの無いようにしています。
一人が特定の業務を担当してしまうと、そのメンバーが休んだり辞めてしまったりすると、業務が止まってしまうからです。
チーム全員がチーム内では同じことができるように取り組んでいます。

■相性が問題でトラブルになったときにはどのように対処されていますか?

双方の意見を聞きますが、仕事なので好き嫌いでやるものではないということを大前提に、対応しています。
どうしようもないようであれば、チーム編成を変えることも選択肢としてはあります。

今の形が100%良いとは思っていないですし、相乗効果が生まれなければチームの意味がないので、状況に応じて柔軟に対応しようという姿勢です。

■メンバー間のトラブル時に障がいの診断名や特性は加味されていますか?

しないです。この障がいだからということは気にしていません。
そこを考えてもしょうがないですし、今起きている状況を良くするにはどうすればいいかだけを考えています。チーム編成でうまく行かないのであれば組み替えれば良いですし、話し合いで解決できるならお互いが理解すれば良いだけのことだと思います。

障がい者雇用ではありますが、仕事をする上で障がい者や健常者は関係ありません。みんな仕事をしています。そこで障がいだからと言ってしまうとうまくいかない気がしています。

障がい者雇用は法定雇用率を達成することも大切ですが、障がい者雇用をボランティアでやっているわけではありません。一組織として成長・成果を上げていくことはやらなければいけないことです。

障がいがあっても、どのような成長・成果を上げていくかを考えて、そこに向かっていくだけだと思っています。私個人の意見ではありますが、障がいを加味することはありません。もちろん、合理的配慮についてはしっかり行ったうえでの話です。

【4】定期面談によるメンタルケア

■定期面談によるメンタルケアはどのように取り組まれていますか?

形式がいくつかあるのですが、1ヶ月の中では大きく分けて2つの面談があります。管理者とメンバーで目標の進捗確認をする面談が月に1回と、毎週、スタートラインさんとメンバーで面談もおこなっています。

管理者とメンバーの面談では、メンバーが主体となり自分のやっていることをアウトプットしていく形式です。

メンバーの勤怠の安定が重要なので、定期的に面談することによって、メンバーの体調の変化を敏感に察知するようにしています。早めのアラートのキャッチが大切だと考えています。

ただし、アイスタイルとスタートライン双方が別々のアラートをキャッチしてしまい、共有ができていないと相乗効果が生まれないので、週に1回両社で情報交換の場を設けて、メンバーに異変や情報の齟齬がないかを確認しています。

まとめ:4つの施策実行による変化

業務においては属人化することなく、どんな状況でも進められる体制はつくられていると思います。
また、積極的に発信して欲しいということは常々言っていて、部会や定期面談で自己発信をしてくれるメンバーが増えていますね。

組織として当たり前の事を実行していく大切さを忘れてはいけません。

障がい者雇用になった途端に、この当たり前ができなくなっては、障がい者雇用に取り組む意味がないと思います。この本質は忘れないようにしていくことがウィズコロナでも重要だと考えています。


この記事を書いた人

Avatar photo

Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。